「シリア分割統治」の現実を見よ

◆ロシア介入ではっきりした内戦の構造

ロシアの軍事介入で、シリア内戦が「複雑化した」との邦字紙見出しを読んで驚いた。むしろこの戦争の「構造」、つまり、誰が何のために戦っているのか、ということがこれではっきりしたと感じていたからだ。「本気のロシア」という、盤石の後ろ盾を擁するアサド政権への反乱が、如何に無謀な冒険であったかを世界は目の当たりにした、ともいえる。イスラム過激主義者を含む(!)革命勢力は民主主義と自由を求めていた。これを米国がしっかり支え、軍事作戦に乗り出していたら、話は別であったのだが、オバマ米大統領は化学兵器を使用したアサド政権の「攻撃を決定した」と宣言しながらこれを引っ込めた。すると怪物IS(イスラム国)が忽然と現れ、米国はこれを爆撃してアサドを利している。

◆「アサド国」は倒れない

戦況が落ち着きを見せれば、政治解決の気運が芽生えるだろう。米国は、ロシアの軍事行動に懸念を示すと言いながら、もはやアサド抜きの交渉にこだわっていない。一般市民の頭の上から爆薬を詰めた樽を落とすという非道を続けたアサド政権に新生シリアを率いる指導力が残っているとは思わない。しかし、アサドであれ、今後選ばれる別の指導者であれ、ロシアが実質的な「宗主国」となるアラウィー教徒主体の小国家は、現実に存在しているし、今後もラタキア、タルトゥースの地中海沿岸地方から中部ホムスに至る地域に安定的に存在することが間違いない。一方、彼らの攻撃から難を逃れた大量の難民(スンニ派住民)を保護する、トルコに隣接した北部安全地帯の形成も急がれる。この地域では既にトルコリラが流通し、事実上の「トルコ化」が進んでいるようだ。

◆「イスラム国」 全当事国が存続望む皮肉

アサド政権と共闘し、ダマスカスからレバノン東部に至る戦略的拠点を死守したシーア派民兵組織ヒズボラも、「ライオンのシェア」を獲得する。イラン革命ガードの別動隊と言われるヒズボラは、ロシアのお墨付きを得て、テヘラン・バグダッド・ダマスカス・ベイルートを結ぶ長大なシーア派ベルトの形成に汗を流すだろう。この連結に立ち塞がる形でシリア・イラクに跨る地域を支配している「イスラム国」もすぐには消滅しない。それは、皮肉なことにすべての当事国がその存続を望んでいるからだ。ロシアとアサド政権にとっては自らの正統性を主張する理由であり、米軍事産業は大儲けし、イランはイラクのシーア派政権テコ入れの口実を得ている。だから、誰も本気で攻撃しない。残るシリア南部はイスラエルとヨルダンが国境線を修正する。このような「シリア分割統治」は、既に事実上始まっているのだから、来る「ジュネーブ会議」では、これを出来るだけ早く承認し、難民・避難民が安全に住める地域を一刻も早く確保するよう、各国は譲歩しなければならない。