犠牲祭

イスラム教徒の皆さん、犠牲祭おめでとうございます。
「犠牲祭(イード アルアドハー)とは何?簡潔に説明してくれないか?」
今年もまた、報道の現場で質問を受けました。言ってみれば奇妙な話です。イードは何も昨日今日始まったわけでなく、1400年もの間繰り返されてきた訳だし、毎年同じ報道をしているのですから、質問者も去年同じ質問をしたか、少なくとも疑問に思ったりしたのではないでしょうか。私も30年近く、毎年同じ質問を受け、飽きずに同じ説明をしています。「羊が降りてきたんです!」
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  野町和嘉さん撮影「メッカの聖モスク」
イブラヒーム(アブラハム)の不思議な経験については皆さんWikiなどで調べて下さい。私が今日提案したいのは、「イード」に適切な和訳を充てよう、ということです。実はこれが信じられないぐらい難しい…というお話です。
イスラムの暦にはイードが2回あります。一番大きいとされるイードが犠牲祭、次にイード アルフィトル(=断食明けの祝日)です。国によってお休みになる日数が違いますが、通常前者が4日間、後者は3日間です。ここまで書くと、イスラムのことを知らない人でも大体分かるでしょう。ああ、盆と正月みたいなものか?と。
その通り。イード(=Feast)は宗教的な理由に基づく大きなお休み、祝祭のことです。「おめでとう」という挨拶を交わし、ご馳走を食べ、きれいな服を着て祝います。子供はお小遣いを貰います。それは本当にお盆や正月に似ています。しかし、正月ではない…。「Feast」です。「Feast」とは何でしょうか?日本語で、何と言えばよいのか、なかなかぴったりとした言葉がないですね。辞書には、(宗教上の)祝祭,祭日,祝日,祭礼…とあります。(もちろん、他に祝宴、ご馳走といった意味もありますが)
私が間違っていたら教えて頂きたいのですが、少なくとも現代語にはFeast(=イード)にぴったりくる日本語がありません。そこで「お祝い」です、とか「祝祭日」です、とか「宗教的なお祭り」です、と説明します。このあたりが、いつまでたっても日本で「犠牲祭」が市民権を得ないひとつの理由と睨んでいます。
「お祝い」と言えば、還暦の祝いもお祝いだし、就職した姪にあげるお金もお祝いです。「祝日」は、みどりの日も祝日ですし、長い休みのことを言いません。その日一日を言います。「祭り」に至っては、御神輿を想像してしまうのは、日本人として仕方のないことでしょう。
marriage の意味は何ですか?と聞かれたら、99%のひとは「結婚」と答えるでしょう。これは、昔、日本には契約概念のマリアージュという考えがなかったため、嫁入りとか祝言という言葉で表すには不便、ということで新しく作られた(明治維新時の造語)と聞いています。逆に今では祝言と聞いても理解できない若い人が増えています。言葉とは、このように必要に応じ、時代に応じ変遷するものです。
そこで私の提案は、イード(=Feast)に日本語を!ということです。新しい言葉を作ります。
祭節 はどうでしょうか。(さいせつ、と読みます)
「正月も、お盆も日本人の大切な祭節です。」どうでしょうか。ようやく、外国人に日本語で日本のことを正確に表せるようになりました。正月や盆がありながら、Feastに当たる言葉がないのは、日本語が閉鎖的な文化のままでいられたからに他ならないのです。

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