第二次オバマ政権下の中東

このブログのタイトル「global middle east」は、「中東の動きは世界に影響を与え、世界の情勢は中東に影響を与える」という、いわば当たり前の原則をリマインドしている。当たり前ではあるけれども、絶海の孤島に住む日本人が忘れがちな基本原則を繰り返し想起してもらうのに都合がよいのでこう付けた。
そもそも世界情勢とリンクしていない地域情勢などないのだが、中東はよりその度合いが強く、また直接的に現れる点で非常に分かりやすい。1年ぐらい前から、イスラエルとイランの問題はどうなるか、アラブの春はどうなるかと聞かれる度に、私は「今年は選挙の年。選挙結果を皆が待っている。選挙までは動かない」と答えてきた。
その選挙(大統領選)が大方の予想通りに終わったその瞬間から、中東は大きく動き出した。イスラエルがガザ地区への攻撃を始めたのは、ネタニヤフ首相がオバマに祝意を述べてから24時間も経っていない8日のことだった。ブルドーザー等とともに侵入したイスラエル防衛軍兵士が銃を乱射してパレスチナの子ども1人を殺害している(アルジャジーラ報道)。
イスラエルにとって、もっとも嬉しい路線である「武装抵抗」を「飯のタネ」にしている愚かな指導部(ハマス)は、相手の意図を知りながら「思う壷」に落ちることしかできない。その日から対決はエスカレートの一途をたどり、軍事的最高幹部とされる「カッサーム部隊」のジャアバリ副司令官がピンポイント爆殺されるに至って、カッサーム部隊は虎の子のイラン製高性能中距離弾「ファジュル5」をテルアビブめがけて撃ち込んでしまった。これで、ネタニヤフは1月に予定されているクネセット(国会)選挙での優位と、イランの神権政治への更なる国際的締め付けの確保という二鳥を落とした。アラブ諸国や世界中の「市民団体」が如何に「イスラエルの自衛権」の欺瞞を憤慨したところで、この論理に理解を示してイスラエルのガザ侵攻を支持するという欧米の立場は保障されたのである。
それにしても一体、どうやってそんな飛び道具を密輸したというのだろうか!!
パレスチナ(ハマス)側の「武力抵抗には正当性がある」という「大義」の訴えは百も承知だが、大義で飯を食っているのは自分たち一部だけであり、民は飢えながら殺されている。この矛盾に答えを出すことができるのは、おそらくパレスチナ人自身をおいて他に、ない。(蛇足を言えば、ハマスはイランとアサド政権を頼っていたが、今般、アサドに徹底的に嫌われてダマスカスを追放された。)
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fajr 5 とされる資料写真 「初めてテルアビブに届いた!」
ファジュル5がガザ地区に搬入されるためには、シナイ半島からの密輸以外に方法がないが、イランはいったんスーダンに輸出、そこからシナイ半島の武装勢力経由密輸されるルートがあるのではないかという情報がある。いずれにしても、イスラエルの情報網はこのミサイルの存在をかなり前から掴んでいて、それを使わせる機会を狙っていたと思われる。
オバマ政権のこれからの4年間は、極東にも、また中東にも、静かに危機のタネを貯めていく4年間となる。熱い戦争に関与するのではなく、熱い戦争の危機を煽る人と、それをなだめる人が芝居を演じる間に、着実に武器販売と軍備関連の売上を伸ばしていかなくてはならないからだ。それが欧米、露、中というグローバル・プレーヤーの全ての利益に一致している。属国日本も実はそうである。もちろん、熱い戦争が絶対に起きないという保障はないが、起きても拡大する状況にはないと言っていい。
地域のメジャーなプレイヤーの利益にもそれは一致している。この点については、匿名で発表している記事に連載で優先権を与えたいので、きょうは書かない。ご関心のある方は、そちらをお読みいただきたい。とにかくこれからの数年間、シリアの人々の苦難は続き、それはガザ地区もイラクもレバノンも然りである。抗しがたい新たな「冷戦構造」が中東を支配している。(敬称略)

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