私たちは、アレンビー橋をヨルダンからイスラエルへと渡り、エイラート・タバ国境をエジプト(シナイ半島)へと抜けた。この国がなぜ安全かと言えば、国の政策として、安全をすべてに優先する行動、措置が徹底しているからである。入国に際しては、もちろん厳しいセキュリティ・チェックがある。
バスがイスラエル側のターミナルに横付けとなる。
ピカピカの自動小銃をぶら下げた兵士(20歳台の女性の方が多い)がこちらを向いている。手招きされる。
とびきり美人の兵士「あなたはツアーのリーダーか?」
小生「そうです。」
兵士「中に何人乗っているのか?」
小生「私を含めて8人です。」
兵士「それはあなたの家族か、友人か?」
小生「家族ではありません。友人と言ってよいでしょう。」
兵士「彼らと知り合ったのはいつか?」
小生「それはいろいろですが、古い人は15年以上になります。中にいるのは
3組の夫婦と私の友人です。新しい人でもやっぱり10数年以上の知り合いです。」
兵士「荷物は全部自分たちで詰めたか?」
小生「はい。」
兵士「武器を持っていないか?」
小生「めっそうもございません。」
兵士「知らない誰かから荷物を預かったり、何かを託されたりしていないか。」
小生「そういうことは絶対ありません。」
兵士「どこから来たのか?」
小生「アンマンのホテルから来ました。」
兵士「まっすぐここへ来たか?」
小生「いいえ、ジェラシュの遺跡を観光してから来ました。」
兵士「その間に誰かが荷物にアクセスすることはなかったか?」
小生「そんなことがわかるはずはありません。私たちは遺跡の観光をしていたのです。バスには運転手がずっといました。運転手に聞いて頂けませんか。勝手に開けたりする筈はありませんが。」
女兵士は、ちょっと困ったような表情を浮かべた。私は、このとき女兵士が次にどういう質問や行動に移るのか、正直、不安だった。およそ15年も前、テルアビブ空港の保安検査で、「パレスチナの幹部に会いに来た」と言ったら「何の話をしたか」と聞いた係官がいた。そのときも、若い女性だった。私は「何の話をしたかと聞く権限はあなたにない筈だ。何様のつもりだ。言う必要はない。」と本気で怒ってしまったため、更に小一時間、無駄な時間を過ごさねばならなかった。その記憶が脳裏をかすめたからだ。
しかし、今回の受け応えに粗相はなかったようだ。直後、女兵士は全員荷物を持って建物に進んでよし、という決断を下し、上官のような男に報告をした。
その後、われわれは荷物を開けられることもなく、X線検査を受けることもなく、あっという間に越境した。入管のブースにいたのも、軍服を着た若い女兵士たちだった。彼女たちは「Welcome to Israel!」と微笑み、旅の仲間は好感を持った。
「新谷さん、イスラエルってなかなか感じいいじゃないですか。入管の人がウエルカムなんて、今まで行ったどこの国でも言われたことはありませんよ」
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