No.31 / 2003.07.11

*** global middle east ******** issue No.0031 **********
グ ロ - バ ル  ミ ド ル イ ー ス ト
*** From Erico Inc. Editor/Ken-ichi Matsuoka ***********

みなさん、こんにちは。エルサレム出張中の新谷より最新レポートをお届けします。

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エルサレムにて         by    新谷 恵司=========================================================

久しぶりにパレスチナを再訪している。いや正確には、「占領されたパレスチナ」つまり、イスラエルにいる。三年ぶりにこの国へ来て、改めて強く感じることは、こんな狭いところの、隣人同士の小競り合いによくも世界中を巻き込んでくれたものだ、という思いだ。

エルサレムの旧市街にある聖墳墓教会(キリストの墓がある)の入り口で撮影をするためには、カトリック、ギリシャ正教、アルメニア正教の三つの教会の同意と許可を得なければならない。その交渉を終えて帰る道すがら、チームリーダーがわれわれのテイクアウトの昼食を買うのを、店の前の路上に置かれたテーブルの側で待っていると(注:立っていただけで座ってもいない)、隣の店主がしきりにこっちで買えと誘う。「もう隣で買っているから」と断ると、「その場所はうちの場所だ。隣ならあっちへ行け」、と観光客もまばらな聖都の裏通りでのご託宣であった。この国で起きていることを象徴しているようで心が重かった。「アルアクサー・インティファーダ」という今日のパレスチナの悲劇をもたらした騒擾が続いている直接の原因も、アルアクサー・モスクの地下に掘られているトンネルをシャロン首相が強行訪問するという挑発に、パレスチナ側が乗せられてしまったからである。

イスラエルは四国ほどの面積しかなく、最大の都市エルサレムでもアラブ人の住む東エルサレムを含めても60万人ほどの人口であるという。「田舎」である。もちろん、三大宗教の聖都としての歴史と風格を味わいたい向きには期待を裏切らない街であるが、この国最大の都市でも日本の田舎の地方都市という感覚だ。そんなけしつぶみたいなところの境界線争いが、どうして世界中を巻き込む一大事になってしまったのか…。

フランクフルト空港のテルアビブ行きのチェックインは、手順が逆である。通常はチェックインしてから出国審査、となるが、この便に乗るにはまず出国して、飛行機の泊っているゲートまで行かなければならない。そこで、初めてチェックインとなる。荷物を預けて立ち去ったりする手段や、他からの荷物がまぎれ込むことを予防する策であろう。そしてその特別ゲートでテルアビブ便と同じ扱いを受けていたのがニューヨーク行きであった。

11日付の当地英字紙ポストは、米連邦議会の公聴会でカリフォルニア州選出民主党の下院議員が、イスラエル国民に米国入国査証取得の手続きを複雑にしている新入管法の改正を訴えたと報じている。9月11日事件を受けて、米国の査証取得は、29の国々を対象に厳しく制限されることになったからだ。

ワックスマン議員は同紙に対して次のように述べている。「イスラエルを英国やフランスなどの国々と同じように取り扱うよう法律を変えるべきだと思う。彼ら(イスラエル人)は平等に扱われるべきだ。彼らは我々のテロとの戦いを助けてくれている近しい同盟国だ。彼らはヨーロッパの一部の国々よりも我々に協力的である。」

この下りを読んで、私は飲み下そうとしていたコーヒーを吹き出しそうになった。何という本末顛倒であろう。米国がテロとの戦いなどという戦争をおっ始めなければならなくなったのは、他でもない、米国がイスラエルの国家テロ政策を公然とバックアップしているからだ。米国がその対外援助の三割を四国ほどの小国に注ぎ込むという愚を改め、公平な平和の仲介者となるだけで、国際テロはその動機を失うばかりか、アラブ、イスラム諸国はこぞってテロリスト狩りに血道を上げるというのに。

誠に困った時代が来たものだと思う。

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<編集後記>

また暑いところへ行ってるな、と思われるかも知れませんが、エルサレムはちょっとした軽井沢のような気候です。空気が乾燥しているため、気温ほどに暑さを感じません。

昨日の昼間、旧市街を歩いたときにはさすがに汗だくになりましたが、夕方食事に出たときには、上着を着ていても涼しい程です。石造りの家並み、城壁を眺め、キリストの歩いた石畳の通りを歩いていますと、2000年という、長いけれども考え様によっては一瞬に過ぎない歴史が、この地でどのように過ぎ去ったのだろうと想像を逞しくさせられました。(ジャ)

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