追い詰められたネタニヤフ政権

◆休むことなく続く人為的破壊

 元日に発生した能登半島地震で亡くなった方の遺族の慟哭(どうこく 、住む家も働く場所も失った方の失望には、真に同情を禁じ得ない。報道に胸が張り裂けそうになる。一方、開戦から 5カ月目に入ったパレスチナのガザでは、累積死者数が 2万8千人を超えた。平均では一日約225人が死亡しており、それは能登の死者数 とほぼ一致する。つまり、天災である地震は 一度限りだが、それと同じ規模の破壊が人為的に120日間以上も続けられている、ということなのだ。来る日も来る日も、休むことなく。

 天災は防げないが、戦争という人間の行為は人間の意志で止めることができる。だからとにかく停戦を、という世界の願いに反して、イスラエル軍は能登の 120倍以上の人を既に殺し、がれきの山を築き、最南端の町ラファに追いやられた 140万人を超える避難民に対する無差別攻撃を開始した。イスラエルの ネタニヤフ首相は、「今ラファを攻撃しなければイスラエルは負ける」と述べた。そこにはハマスの戦闘員もいるであろうが、大多数は、家を壊され、着の身着のまま逃げてきた、食べ物にも事欠く一般市民である。

◆ラファ攻撃を急いだ背景

 白旗を掲げて避難する老婆を射殺。両親を殺されて車内で助けを求める少女の救援に向かった救急車は爆撃 され 、全 員が死亡。無警告で住宅や病院、学校を砲撃して民間人を大量虐殺… 。ジェノサイド (集団虐殺 の証拠は、既に 70人以上が殉職している勇敢なジャーナリストたち の働きもあって、立証に十分なほど集まっている。報道から伝わってくるイスラエル政権と 兵士の差別意識、自己陶酔、悪意に満ちた民族浄化的犯罪行為には、ジェノサイド以上の懲罰のカテゴリーが無いものかと、憤りの持って行き場がない。

 ネタニヤフ首相がラファ攻撃を急いだのは、このような戦争犯罪が度を過ぎ、国際司法裁判所(ICJ )も直ちにやめるよう暫定措置命令を下したことが背景だろう。 1 月下旬に下された拘束力のあるこの決定に対し、イスラエルは 2週間後には実施状況を報告しなければならない。強制力がないとはいえ、事実上イスラエルの加害行為がジェノサイドと判断される可能性を示唆したこの決定は、米国をはじめ、これまでイスラエルの「防衛権」を拡大解釈してきた数少ない「同盟国」の態度にも微妙な影響を及ぼしている。米国による手放しの庇護 (ひごとメディア操作で、これまでイスラエルは非人道的行為の責任を取らされることがなかったが、どうも、今回ばかりは雲行きが怪しいのだ。

◆流布された イスラエル奇襲関与疑惑

 ICJの決定の反響を抑える目的で、判決の翌日に流されたのが、 国連パレスチナ難民救済事業
機関(UNRWA) の職員が ハマスによる イスラエル 奇襲 に 関与 した 疑惑だった。 UNRWAは、パレスチナ難民を救済するために、あえて現地の人々を優先に雇用している。 その中に、ハマスの攻撃に参加する人がいたとしても、何の不思議もなく、それが事実であっても、UNRWA の存在意義と役割に何の遜色もない。そもそも、イスラエルが違法な占領をやめ、パレスチナ人の差別的な扱いをしなければ、国連が支援する必要すらないのである。ところが、後に何の証拠もないと判明するこのイスラエルの主張が流れるや否や、 米国は資金凍結を発表、日本も文字通り「盲従」した。 ICJ が、「緊急に必要な人道支援の提供を可能にするための即時かつ効果的な措置を講じること」をイスラエルに求めたにも関わらず、その反対の行為を日米は支援した。どこに日本外交の言う「法の支配」の尊重があるのか。

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