◆トランプ大統領、イラン攻撃延期
正月早々、米軍はベネズエラに対する電撃作戦に踏み切り、国家元首の拉致に成功した。トランプ大統領は、「米国史上、最も驚異的で効果的かつ強力なわが国の軍事力の展示となった」と喜んだ。そんな世界最強の軍隊を「弱い」とはどういうことか?といぶかる人は、健忘症の疑いがある。米軍はアフガニスタンに20年駐留してタリバンに敗れ、イラクでもフセイン政権の放逐には成功したが、後押ししていたシーア派の政権によって追い払われ、それぞれ撤退したことは記憶に新しい。その前のベトナム、レバノン、ソマリア他で何が起こり、どう撤退したかを思い出す人もあろう。
ベネズエラに次いで、米国はイランも攻撃するのではないかと世界に緊張が走ったが、ワシントンから漏れ聞こえてきた情報によれば、トランプ大統領は延期を決断したらしい。これも「アメリカ」の弱さの証明だ。イランを攻撃すれば、中東地域に20以上ある米軍基地に対するミサイルによる反撃や、ホルムズ海峡の封鎖などが予想され、ベネズエラのように無傷で終わらせることは不可能だ。中間選挙を前に、米国兵士に犠牲の出る戦争を始めるわけにはいかない、と悟ったのであろう。
◆停戦米国の武力行使全て「アウェー戦」
米国は、第2次世界大戦後も唯一、世界各地での小規模な軍事介入を含めると数百回の武力行使を行っている軍国主義の超大国である。そしてその多くは今回のベネズエラ攻撃同様、国際法違反の疑いの濃いものだ。そしてその多くが前述のように「負け戦」となるのはどうしたことか?その理由は簡単である。武力行使のすべては、国外で行われるいわば「アウェー戦」であり、最後の一兵まで戦わなければ国の存立が危うくなるような自衛戦争ではないからだ。1993年、ソマリアでは殺害された米兵の遺体が引き回しにされる映像が伝わったことで、介入無用論が沸騰し、米軍は撤退した。この時の戦闘(モガディシオの戦い)そのものはソマリア側の死亡者1000人程度に対し、米軍側は18人と、数の上では十分勝っていたのだが、要は戦争のための戦争をしているから、そういう判断になるのだ。
◆態度急変する米国、同盟のリスク
米国は、情勢が変化すると態度が急変し、同盟関係の維持が難しくなるということも大きな特色だ。シリアでは、米国がテロ組織に指定していたアルカイダの系譜に属する武装勢力が親ロシア・イランのアサド政権を追い出すと、一転、テロ指定を解除して支援の立場に変わった。それだけでなく、これまで支援し、「イスラム国(IS)」との戦いの前衛に利用していたクルド人武装組織「シリア民主軍(SDF)」を見捨てたため、暫定政府軍が攻勢となり、SDFが管理していた刑務所からISの戦闘員が大量に逃亡するといった事態となっている。
世界中に軍事基地を有し、最新鋭の兵器を装備した部隊を動かす米国との同盟は、為政者にとって何より心強いものであろう。それが、他に選択肢のない、やむを得ないものであってもだ。しかし、それは同時に常に武力紛争に巻き込まれるおそれのある同盟であり、多くの場合、米軍は頃合いをみて引き揚げる、という事実を忘れてはならない。後に残されるのは荒れ果てた国土と疲弊した人民だ。そして一時羽振りの良かった為政者は、みじめな失脚をする。そんな事例を、ここ2、30年間の間にたくさん見てきた。

