◆客観的事実に対する執拗な糾弾
1年前から、私は当コラムでイスラエル軍によるジェノサイド(集団虐殺)を許してはならないと書き続けているが、遺憾なことにそれは現在も休みなく続いている。その非情さ、残忍さは度を増すばかりである。国連特別報告者のアルバネーゼ氏は最近の報告で「パレスチナ人に対するジェノサイドは、(中略)パレスチナ人を完全に排除、または根絶やしにするという目的を達成する手段」と映る、と述べた。
イスラエルがガザ地区で公然と「民族浄化」を行っているとの指摘は、現地からの映像を伴う報道で裏付けされている客観的な事実である。このイタリア出身の国際法学者による「真実の吐露」に対し、イスラエルと米国の国連大使は「最も反ユダヤ的な人物」「国連特別報告者による反ユダヤ主義を許してはならない」などと糾弾している。イスラエルのダノン大使による「(アルバネーゼ氏の存在は)すべての道徳規範への裏切りだ」との言説に至っては、4万3000人を優に超える無辜(むこ)の市民が虐殺されているが、それは道徳的なのかと反問したくもなる。
◆ガザで続く重大な国際犯罪
ネタニヤフ政権がガザ地区を文字通り粉砕して、大イスラエル建設のための新たな既成事実を押し付けようとしてきたことは、もはや国際的には常識となっている。国連人道問題調整室(OCHA)のムスヤ事務次長補は今月12日、国連安保理に対し「ガザ住民は目の前で家族が殺され、燃やされ、生き埋めにされている」などと述べて、「最も重大な国際犯罪」が犯されている可能性を指摘した。
にもかかわらず、同政権が国際的勧告を一切無視して集団虐殺を続けることができるのは、米国と一部欧州諸国がイスラエルに武器の提供を続け、外交・メディア対策面で事実を歪曲(わいきょく)しているからである。
「歪曲・世論操作」の具体例が、先日アムステルダムで起きた。事の発端は、イスラエルからサッカー観戦に来たフーリガンの一団が、観客席だけでなく、街中で虐殺を肯定するスローガンを叫び、民家に掲げられていたパレスチナ国旗を引きちぎるなどしたことだった。この挑発を受け、在留モロッコ人を中心とする親パレスチナの集団がこのフーリガンの一団に「懲罰」を与えたのだ。
◆塗り替えられた報道
この事件について、英スカイニューズは、当初正しく伝えていた同社サイトの記述を2度にわたって削除し、事件を「反ユダヤ主義者による襲撃」に塗り替えた。その時、イスラエル側の言説は「現代のポグロム(ユダヤ人虐殺)を許してはならぬ」となっており、オランダの首相はネタニヤフ首相に電話して「容認できない反ユダヤ主義的な襲撃」と訴えた。
この「物語」の展開は、「ハマスのテロ攻撃があったので、パレスチナ人4万人以上を虐殺してもなお、イスラエル側に正義がある」と米・イスラエルが主張し、それにわが国を含む西側諸国が追随していることと構図が重なる。
前出アルバネーゼ氏はその立場ゆえに「反ユダヤ主義者」として激しい攻撃を受けており、筆者にもまた、1年前の記事が原因で、親イスラエルの見知らぬアカウントから脅迫状が舞い込んでいる。しかし、この問題をグローバルな視点から見れば、真実は確実に広まっている。ネタニヤフ政権の蛮行が清算の時を迎えるのは間もなくだろう。日本メディアには肝が据わった報道を望む。