カタール2022

中東をフォローする人々の間で言われる「格言」のひとつに、「中東では10年に1回大事件がおきる」というものがある。例を挙げれば、73年の第4次中東戦争とオイルショック、79-80年イラン革命とイラン・イラク戦争勃発、90年湾岸戦争、2001年9.11事件と対テロ戦争開始、といった具合で、確かに10年サイクルの「激動」がある。
この原則が当てはまるとすれば、2010年頃に起きるのは何だろう、と誰もが不安と「期待」(?)をもって眺めている。期待というのは変だが、因果なことに小社の売上げは戦争など人の耳目を集める事件が起こらないと伸びない、という現実に縛られている。
そんな中、2022年W杯開催地にカタール当選、という衝撃的なニュースが飛び込んできた。カタールはアジア大会も経験し、確かに国際スポーツ祭典の運営に実績を上げてはきている。しかし、アメリカやオーストラリアという大国を出し抜いての当選には驚きを禁じえない。面積こそ秋田県ほどあり、淡路島ほどのシンガポールに比べれば「大国」だが、首都ドーハ以外にはこれといった都市はない。競技場や各国のキャンプ地は首都周辺に密集するのだろう。6月の気温は42度から48度、稀には50度に達する。42度、というのは相当涼しい。「きょうは涼しいね~」と言い合ったらその日は42度の発表だった、というような経験が懐かしい(筆者は1987-89年にカタール勤務)。すべての競技がエアコン完備の屋内スタジアムで行われる、初のW杯になるだろう。オバマ大統領でなくとも、「間違った選択」と言いたくなるのは理解できる。
これは革命的なニュースである。もしかしたら、2010年の激動とは、このことになるかも知れない。だとすれば、中東で初めて、平和的、建設的な激動が起きたことになる。これからの12年間、ペルシャ湾岸とそれをとりまく中東世界の平和と安定が確保され、さらなる成長を遂げるとすれば、これはその経済効果を裨益する世界にとっての朗報だ。私個人には、これからの12年間を健康に過ごし、ドーハのスタジアムで日本代表の健闘を応援する日を迎えるという、人生の大きな目標ができた日となった。

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