それぞれの事情(3)

前回、短い分析を書いてから早いものでまた2か月が経過した。
この間、チュニジア、エジプトという「革命が成就した」国、未だ途上にある国(リビア、シリア、イエメン)のそれぞれにおいて事態は進展しているわけだが、あまり大きな変化がない。ここでいう「変化」とは、デモが爆発してわずか数日のうちに大統領が失脚する、という前者2か国で起きたような政権交代の動きである。
見方を変えれば、2か国では民衆デモが体制を打倒できるまで、国民の声というものに力があったが、後者3か国の事情はまったく違っている、ということなのだろう。私が「それぞれの事情」(が異なる)というのはこういうことである。
大きな変化がない、というのは多分に誤解を招く表現で、実際はそれぞれの国において事態はどんどん変化している。その中で、昨日はリビアについて驚くべき報道に接した。
<リビア>
5月半ば頃の情勢は、反政府勢力を支援するNATO軍の攻撃にも本腰が見られ、カダフィは明日にも殺害されるだろう、レジームチェンジ(体制の交代)は間違いないだろう、という見方が圧倒的だった。しかし、その後の戦況は一進一退。チェスに興じるカダフィの映像が流されたかと思えば、NATO軍側が誤爆したとの報道。これが影響したのかどうかは定かでないが、現在は欧米の結束が大いに乱れているようだ。特に、米国はリビア情勢に不介入の構えである。
驚愕の報道はAFPが伝えたもので、反政府勢力側スポークスマンが、「カダフィが政権に参加せず、遠くで暮らすなら国内で生きることを認めてもよい」「カダフィ側と非公式な交渉をしている」と述べたとされることである。
カダフィという、リビア部族社会における大ボスの存在を考えるとき、これはオール・オア・ナッシング(生か、然らずんば死を)で考えなければならないだろう。老犬カダフィは静かな引退を受け入れるかもしれないが、その生存はかならずや一族の求心力を保存するだろう。子供たちや、忠誠心ある「家来」たちが悪さをせずに引き下がる、ということはあり得ない。
反政府勢力側が、「交渉に応ずる」というのは、明らかに弱さを認めたものと解釈できるだろう。カダフィ軍を完膚なきまでに叩きのめす力がないのである。仮にそうであるとすれば、恐れられているシナリオ:リビアの分割、も視野に入ってくる。一度そのようなことが起きると、民族は100年単位で苦しむことになる。英仏は、今でも「分割して、支配せよ」の原則で新植民地政策を進めるつもりなのだろうか。
ここは暫定評議会(反政府側)の奮起と欧米の良識(!)に期待したい。

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