11月1日、アルジャジーラは創立15周年を迎えます。
96年11月に発足したとき、世界は冷戦終結後に米国が新たな仮想敵・イスラム過激主義の育成に努めていた時期でした。5年後の2001年、9.11事件が起こり中東では既にブレークしていたアルジャジーラは世界的な名声を得ることになりました。その後同局は影響力を強める一方で、イラクであまりに真実をすっぱぬかれたことに怒った米国の圧力により、総局長の首が飛びます。その後、ジャーナリストとしての力量が疑わしいハンファル前総局長の下、組織が肥大化する一方で、核となるアラビア語チャンネルのイスラム化、陳腐化、政治ツール化が進みました。
創立15周年を前に起きた「アラブの春」はSNS(インターネット)が起した民衆革命と言われていますが、私が年初から指摘しているようにアルジャジーラが起した革命である側面が強いのです。このことが徐々に言われ始めています。「メディアが戦争当事者になる」という、大きな歴史の展開を目撃してきました。
このブログで少しだけ触れた9月の総局長辞任・交代劇は、このような隘路にしか行き当たらない路線に入り込んだアルジャジーラの軌道修正を狙って、トップの交代を図ったものです。毎日のニュースをフォローしていると、その効果が出始めていることに気がつきます。まだ十分とは言えませんが、かつての客観的報道を重視した報道姿勢が戻ってきていますし、何より、ファイサル・カーシムという天才キャスターの討論番組「反対方向」も再開しました。
時を同じくして、「アラブの春」を最初に実践したチュニジアの制憲議会選挙が公正に実施され、「穏健なイスラム過激主義」を標榜するナハダ党が40%を超える議席を確保しました。過激主義が穏健とは論理矛盾も甚だしいものがありますが、エジプトの良識、フエイディ氏は次のように指摘しています。
「世俗主義者であれ、イスラム主義者であれ、また左翼であれ、穏健な勢力は、それぞれの過激な勢力よりずっと近しい関係にある。アラブ世界という名の船は、これらの穏健勢力が連携し合い、統一した政治戦線を形成しない限り航海を続けることは困難だろう。」
中東は新たなステージを迎えています(新しい時代と言ってもよい)。この時代に、アルジャジーラがメディア本来の仕事である客観的報道に徹する路線に戻りつつあることは喜ばしいことです。関係者の一層の努力を期待します。
復活した「反対方向(alittjah almuaakis)」
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