アラビア語通訳の仕事

しばらくご無沙汰しておりました間、久しぶりに通訳三昧の日々を送っていました。今日はアラビア語通訳の世界がどのようなものか、一部をごく簡単に紹介します。
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東京駅で広島へ向かう新幹線初乗車に期待高まるアルジェリア労組幹部(2月11日)
私がまだチュニジアで書記官をしていた1992年頃、本省から出張者がやってきて、「労組を訪問したい」と言いました。政府やPLOなど、いわゆる政治関係とはパイプがありましたが、はずかしながら労働組合運動については全く無知な私でした。まあ、外務省全体もそうでしたし、今も「関係ない、連合・民主党はウザい」などと思っている人が99%でしょう(^^♪
それが、生まれたばかりの連合の国際支援組織・国際労働財団(JILAF)と私の最初の接点でした。チュニスにあるチュニジア労働者総同盟の事務所を出張者と一緒に訪問して、日本での研修への参加意図を打診しました。その後帰国して独立した私は、毎年欠かさずこの研修とお付き合いすることになりました。アラブの多くの組合若手幹部が日本の高度成長を支えた日本的、民主的労働運動の精神を学び、巣立って行きました。2月10日JILAF研修会議室で開かれた労働事情を聞く会で、モロッコUMTの代表は、「最近の大会で選出された書記長はJILAF研修の卒業生であり、日本で学べたことを誇りに思っている。私も、将来は書記長になれるよう頑張りたい」と述べて拍手を浴びました。
20年の歳月があっという間に過ぎましたが、この間アラブ諸国は社会主義イデオロギーに基づく労働運動から、民主的原則に基づく労働者の生活重視の運動へと進化を遂げました。これに失敗したエジプトはイスラム過激主義の恐怖と闘っています。組合活動にある程度、力のあるチュニジアは、同じイスラム過激主義政権と言っても、安心して見ることができます。
研修では、日本の労働組合活動と法社会制度、生産性運動などを学び、平和なくして労働者の幸福なし、という大原則に基づき、平和運動の一環として広島訪問が必ず組まれています。また、地方を訪問して日本の田舎でも組合活動が充実していることを実感して帰ります。今年は偶々小生の出身地の組合である連合香川を訪問しましたので、参加者とともにさぬきうどんをすする得難い経験をしました。弊社の仏語、アラビア語通訳者はこの研修の全通訳・エスコートを担当しています。
この後、休む暇もなく待ち構えていたのはお台場の国際展示会議場で開かれた海外水インフラPPP評議会における会議同時通訳の業務でした。
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有明の国際会議場内同通ブースにて(2月16日)
PPPとは、Public Private Partnership すなわち官民協力のことだそうです。次々新しい造語がありますので勉強に終わりがありません。会議では、英、日、アラの3カ国語間の同時通訳を行いました。パートナーのMMさんは米国で最近博士過程と博士号を修了されておりますし、私も拙いながら、英語-アラビア語間の通訳の方が簡単に感じられる場面もあるのです。きれいな英語をアラビア語に同通していくことは、語順が大体一致するので機械的に気持ちよくできるのです。しかし、技術用語が英語で言わなければ通じないのにそれを日本語で発言されてアラビア語に訳す、あるいはその逆をする、というのはほとんど無茶、といって良い要求です。
会議では、参加したカタールの公共事業庁幹部への日本参加団体側からの積極的なアプローチが看取されました。2月初旬に開かれた日・サウジビジネス会議も同様でしたが、最近の湾岸とのビジネス会議では日本側の熱意が感じられます。「サウジに進出しませんか?」「それは冗談を言っているのですか、それとも喧嘩を売っているのですか!?」といった会話が聞かれたひと昔前とは全く違う風景が展開しています。

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