皆さんの払う電気代はどこへ(1)

前の記事に引き続き、al quds al arabi紙からひとつの記事をご紹介します。
こちらは6月29日付のものであり、旧聞に属しますが、おそらく誰も注目していない記事なので読者には新鮮なはずです。
「28日、カタールのハマド首相兼外相はロンドンを訪問し、この種の建築物では欧州で一番高い高層ビル『The Shard』の竣工式に出席する。テムズ川にほど近いこの72階建のタワーはカタール国が所有(株式の95%)している、同国がロンドンに展開するポートフォリオのなかでも最新の重要案件である。The Guardian 紙が伝えた。」
「カタールが小さな独立国としてその姿を表したのはわずか41年前に過ぎないというのに、今や、英国の数々の巨大企業に重要な影響力を持つ勢力に成長した。百貨店ハロッズを所有しているのはもちろん、在ロンドン米国大使館建物、そして世界一豪華なアパートメントのある「ハイドパーク1」マンションなども持っている。Sainsbury’sの株式26%、Songbird Estates(不動産投資)、バークレイズ銀行、そしてロンドン証券取引市場もこの首長国のものである。」
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The Shard visible on the City of London skyline, seen from Forest Hill in 2012 (c)Cmglee
この記事がネタに使ったThe Guardian 紙の記事を読んでみたところ、その趣旨はロンドンの中枢部の不動産が次々とアラブ資本に買われていることへ、英国人としての危機感を持てと警鐘を鳴らすものでしたが、記事はこの他にもカタール国とその投資庁が関係している欧米の投資案件を列挙して、カタール資本が大暴れしている状況を印象づけることに終始していました。
その一部の例を挙げると、仏サッカークラブの「サンジェルマン」を1億ユーロで買収したこと、シャンゼリゼ通りの有名ブティックが次々にカタール資本の手に落ちていること、ティファニー(米)の株式の5.2%を取得したこと、フォルクスワーゲン(独)の17%を所有していること、などです。
私が研修上がりの書記官として赴任した1987年(何ともう四半世紀前!)、カタールは既にもっとも豊かな産油国のひとつとして、そこには幸せな光景が広がっていました。しかし、ちょうどその翌年あたりにこの国のLNG開発計画に青信号が灯り、その後、この国の富は倍々ゲームで殖えていくことになるのです。そのあたりの事情をこれから何回かのシリーズでお話しておきたいと思います。

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