アルジャジーラ記者、アッルーニ氏逮捕(スペイン) 2005/09

スペイン暗黒裁判の記録
スペイン司法、言論封殺のクロノロジー

タイシール・アッルーニ記者

アッルーニ被告、19日判決を前に収監される

(9月18日) アルジャジーラ.ネットの報道要旨

16日、スペイン警察は、アッルーニ被告に対する判決言い渡しが当初予定の今月26日から、19日に早まったと発表、同日、アッルーニ被告を再収監しました。ホセ弁護士によれば、この再収監そのものは、何ら法律に違反するものではありませんが、アッルーニ被告は最近母親が病死したとの報を受けたばかりであり、母の葬儀への出席を許可されないばかりか、収監されたことで精神的ダメージを受けているということです。

被告人質問始まる

「アルカーイダのスペイン細胞」に関する前代未聞の大裁判がマドリードで開始され、アッルーニ被告に対する被告人質問が行われました

(5月16日) アルジャジーラの報道要旨

 16日、スペイン法廷はいわゆる「アルカーイダ・スペイン細胞」事件に関して、タイシール・アッルーニ被告に対する被告人質問を行いました。午前、検察側は被告がスペインに居住するに至った理由、主犯格とされる人物との関係、アフガニスタン特派員時代のアルジャジーラにおける勤務の実態、オサマ・ビンラディンと会見したときの状況、及び同人から度々メッセージを受け取ったときの状況などについて質問しました。

質問は、まず「アルカーイダ・スペイン細胞」の主犯格とされるシリア人バラカート・ジャルカス(アブ・ダハダハ)との関係に及びましたが、アッルーニ被告は、単なる友人関係だったと述べ、アブ・ダハダハがスペイン在住のアラブ人をアフガニスタンに送り込んでいるとは知らなかったと証言しました。また、アフガニスタンのタリバン政府(当時)との関係については、同国で世界に先がけてアルジャジーラが支局設置の許可を得られるよう同政府の外務省と連絡をとっていたものだと述べました。そして、ビンラディンが特別の便宜を彼に与えたということはなく、(ビンラディンらと接触できたのは)当時、アルジャジーラがアフガニスタンにおける唯一のメディアであったからだろうと述べました。アフガニスタンに資金を運搬したとの容疑については、いずれも極めて少額の現金を人道的機関に手渡す助けをしたに過ぎないと述べました。

ホセ・ギャラン弁護士(アッルーニ被告の弁護士)談話
「法廷での被告の発言は明確だった。被告が無実であることについては一点の曇りもない。すべての容疑は捏造されたもので、証拠はスペイン治安当局がでっち上げたものだ。」

また、公判を傍聴したアラブ・国際人権団体に所属する人々の間からも証拠に対する疑問の声が上がっています。アラブ人権委員会会長のダーギル女史
「容疑を確証するような証拠は全くありません。逆に、疑わしいものばかりです。まず、電話会話の盗聴内容については、実質的な意味のあるものがなく、多くの翻訳の間違いが発見されました。それが、容疑の基礎になっています」

法廷は、その他の容疑者に対する審問を7月まで継続し、判決は今夏、または今秋に予定されています。多くの専門家は、裁判は、スペイン情報当局が提出するであろう決定的な証拠がない限り、証拠不充分であり、有罪の立証は困難なまま展開するのではないかと見ています。

アッルーニ記者、釈放される

(3月16日)

 スペイン当局は、16日健康上の理由による保釈請求を認めてタイシール・アッルーニ記者を釈放し、同記者は「自宅軟禁」の状態に移りました。

アッルーニ記者の釈放を求め動き

1月31日、マドリッドで100人を超える欧州、アラブの知識人、ジャーナリストが集い、タイシール・アッルーニ記者の保釈を求めました。この国際シンポジウムは、「アッルーニ記者弁護のための国際委員会」の主催によって開かれ、「国境なき記者団」、「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」、「国際アムネスティ」をはじめとする各種人権擁護、記者組織の代表、及びジャーナリストが個人の資格で参加しました。

「国境なき記者団」のフェルナンド・カスティロ主幹は、「私たちは単にアッルーニ記者を健康上の理由から保釈するよう求めているのではありません。私たちは同記者があらゆる容疑に関して無実であることを信じています」と述べました。

昨年(2004年)の11月20日以来、無期限の未決拘留下にあるアッルーニ記者は、心臓や、ヘルニアなどの持病に苦しんでいます。スペイン当局は一切の特別の取扱いを認めていませんでしたが、漸く2月初旬、医師による検診を認める決定を同記者に伝えたということです。これは、上記シンポジウムが世間の注目を集めたことと無縁ではない、と上記国際委員会は考えている、ということです。

アルジャジーラがインタビューした、あるスペイン人記者は、「私も、バスクの非合法組織との連絡手段を持っている。記者としては当たり前のことであり、そのことで逮捕されたのではかなわない。」と述べました。

新谷恵司は、2004年初夏、保釈中のアッルーニ記者にグラナダで会った際、アッルーニ記者が次のように述べるのを聞きました。

「私がもしアメリカ人であったなら、西当局が私を逮捕することなど考えられなかっただろう。この逮捕は人種差別そのものである。私の肌に色がついているから、あやしい、というそれだけだ。そもそも容疑の確定していないイスラム過激主義者と付き合っていた、ということを問題にしている。何一つ、具体的な証拠のない逮捕である。」

スペインのテロ対策は人権侵害

(1月27日)
アメリカの民間人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は、スペイン政府の対テロ取締りが被疑者の人権を完全に無視しているとして、被疑者の拘留・取調べに関して、国際的な基準に従うよう求めました。

アッルーニ記者、再逮捕される

タイシール・アッルーニ記者(49)は、2004年11月20日、自宅を出て仕事場に向かっていたところをグラナダ警察当局に身柄拘束されました。スペイン当局は今日まで、如何なる保釈請求、世界の各人権擁護団体、マスコミ関係団体の陳情にも応じていません。

報道によれば、スペイン当局はアッルーニ記者再逮捕の理由を当初明らかにしませんでしたが、後に「逃亡の恐れ」を挙げた由です。これが事実とすれば、本件再逮捕は極めて異例な逮捕権の濫用であると考えられます。同記者は、下記の保釈後、逃亡の姿勢のかけらも見せず、逆に裁判によって同記者の身の潔白が証明されることを楽しみに、同記者の愛するアンダルシア地方グラナダで、おだやかな生活を送っていました。

新谷恵司は、日本のテレビ番組の取材班に同行して、2004年の初夏、アッルーニ記者をグラナダに訪ねました。同記者からは、スペイン警察の捜査、起訴がいかに杜撰であったかについて詳しい話を聞くことができましたが、被疑者からの片聞きですので、あえて公表して、これが真実だろうと述べるつもりはありません。

しかし、その話は、再逮捕時に同記者の妻ファーティマさんがアルジャジーラのインタビューに答えて言った言葉:「ガルソン予審判事は、アッルーニを有罪にしたくて気が狂っている」という感想にピタリと一致しています。極めて不当な人権侵害、言論封殺が行われている色彩が濃いと思われます。

アッルーニ記者、起訴される(2003年9月17日、アルジャジーラ・ネット)

タイシール・アッルーニ・アルジャジーラ記者の逮捕

タイシール・アッルーニ記者

(注:アッルーニ記者は本件記事後の2003年10月22日、保釈金6000ユーロで保釈されました。スペインに留まり、週に1回、最寄の裁判所に出頭することが条件です。同記者の健康状態を考慮しての措置とされています。)

17日、スペインのガルソン予審判事は、拘留中のアルジャジーラ記者・タイシール・アッルーニ(48)を、9月11日事件を含むテロ行為に関与した疑いで起訴した。なお、同予審判事は、アル・カーイダの指導者、オサマ・ビンラディンら34名も同時に訴追した。

アルジャジーラのマドリッド特派員が報告するところによれば、アッルーニ記者に対する起訴状は700ページに及び、うち26ページに渡って訴因が記載されている。この中で予審判事は、同記者がアル・カーイダに所属している疑いがある者たちと連絡し、彼らに対し資金を運搬し、援助を与えたとしている。

同起訴状によれば、アッルーニ記者はテロ行為に直接参加していないが、ジャーナリストとしての地位を利用して資金を運搬し、またとある人物に対して、居住許可証の取得に際して援助した由。

起訴状は、ビンラディンの国際手配要求を含むもので、スペイン当局が拘留している容疑者の公判日時として9月24日を指定している。

(逮捕時とその後の経過については、次ページ参照)

第一回公判、始まる(24日、アルジャジーラニュースのモニタリング記録)

(日本時間20時のニュース)
(キャスター)同僚のタイシール・アッルーニ記者は本日(24日)、マドリッドのスペイン中央裁判所に出廷し、「アルカーイダの一味に対し援助した」容疑でスペイン検察当局から起訴されている事件についての審理に臨みます。

(レポーター)ガルソン予審判事は、先般9月11日に公表された起訴状において、「タイシール・アッルーニは殺人、ハイジャックなどの重大な犯罪と直接の関係はない」と述べています。この言葉を額面通りとるならば、アッルーニ記者は近いうちに現在の困難な状況から抜け出すことができるのかもしれません。しかし、国により司法当局というものは非常に攻撃的な場合があり、どのような嫌疑であれ、素早く行動することがあります。アッルーニ記者にかけられた容疑は彼が「アルカーイダと連絡があり、同組織を助けた」というものです。まるで、同記者に「アルカーイダの宣伝責任者」という称号がふさわしいかのようです。

この事件は、何十人というアラブ人、イスラム教徒が大騒ぎの末に逮捕され、しかしそのうちに無実が証明されて釈放されている事実を想起させます。もちろんその間、逮捕された人々の名誉は大きく傷つけられます。更には、アメリカでは世界貿易センタービルと米国防総省への攻撃事件が起きる以前から、「秘密証拠法」という名の法律がアラブ・イスラム教徒に対して適用されていたことも思い起こされるのです。
世界に自分達の主張を伝えたい、と願う人々が、アッルーニ記者などのアラブ人特派員のところへ彼らのメッセージを届けていたことは紛れもない事実です。アッルーニ記者の事件が、多くのアラブ人記者仲間の同情を買っているのはもちろんですが、そればかりか、「対テロ戦争」の美名の下、思想・報道の自由が風化していくことに危機感を感じる西側の知識人、組織もまた、連帯と支援の立場をとっています。

(マドリッド特派員の報告要旨)
(1)アッルーニ記者に極めて短時間会ったが、元気で、「皆によろしく」と微笑していた。

(2)ビンラディンを含む35名の容疑者中、多数を占めているのは当局が「スペインのアルカーイダ細胞」と呼ぶ集団。そのほとんどは信仰心の篤いシリア人で、その中にはシリアのムスリム同胞団メンバーが含まれている。また、その中にアルカーイダのメンバーと目される人物がいたことから、全員にアルカーイダ所属の疑いがかけられた模様。また、9月11日事件に関与している疑いがかかった最大の証拠としては、その中のひとりがニューヨークに旅行した際、ビデオカメラで景色を撮影したテープを茶の間において皆に見せていた(!?)ということが挙げられている。

(3)当局は95年以来彼らの電話を盗聴しており、この交信記録も証拠申請されている。

(4)1年以上前から私(同特派員)はアッルーニ記者に対し、スペイン国内で貴君に対する悪い噂が広まっている。新聞が騒いでいる、と警告していたが、本人は、容疑事実に対して、完全に無実を証明できると自信を示していた。公判ではその真実が語られるだろう。しかし、裁判が長期化するとの予測があり、心配。

「アッルーニは平和的な志向と確信を持つ人物」

グラナダ大学平和研究所所長の声明)

次の文書は、「アフガニスタン戦争」直後にアッルーニ記者のアルカーイダとの関係を疑うキャンペーンがスペイン新聞紙上で広まった際、グラナダ大学の平和研究所が発表した新聞記事の翻訳である。アルジャジーラ・ネットが引用している。

 (ここに書かれたスペイン人である平和研究所関係者のアッルーニ記者観は、新谷が直接会い、対話し、観察した末に得た同記者に関する印象と最も近いと思う。よってアルジャジーラ.ネットより訳出する。-新谷恵司 )

以下、アルジャジーラ.ネットより訳出

2001年10月28日付「EL PAIS」紙が掲載した、スペイン警察当局がアルジャジーラのスペイン人記者に注目しているとの記事について、次のことを明らかにしたい。

タイシール・アッルーニ記者がカブール支局長の職に就く数年前から今日に至るまで、同氏は当平和研究所のフェロー(協力メンバー)である。我々は、対話と探求、透明かつ開かれた議論が紛争当事者の間でなされることを訴え、その活動の目的としている。その一環として、我々は、アラブ・イスラム世界、とりわけイスラム過激主義に対して関心を有している。これは、平和に対して建設的な観点から、その世界に存在しているあらゆる考え方と立場を知ることが必要だと思われるからである。

タイシール・アッルーニ氏に関してわれわれが共に働いたことから知っていることは、同人は平和的な志向と確信を持った人物であるということであり、それは彼の仕事を通じて明白であった。それは当研究所の方針とも一致している。人間的、文化的相互理解を支持し、あらゆる形の暴力を拒否する人物である。私達は、彼がタリバンとの外交的な連絡の接点として働けるのではないかと議論したこともある。なぜなら、対話こそが紛争の仲裁と解決に意義あることだと信ずるからである。

スペイン最高裁、アッルーニ記者の有罪判決を確定する不当判決

(06年6月1日アルジャジーラ・ネットの報道要旨)

 スペイン最高裁判所は、アッルーニ被告がアルカーイダと協力した罪については無罪としながらも、同被告に対する禁固7年の判決を支持する判断を下しました。一方、主犯格である容疑者のシリア人・イマードッディーン・バラカート(通称:アブ・ダハダハ)の刑期は、禁固27年から12年に軽減されました。

スペインのジャーナリスト、アンドゥーニ女史はアルジャジーラに対し、「最高裁は検察側の言い分を採用し、弁護側が提出した証拠や弁論が採用されなかった」と述べました。そして、「アッルーニ記者は憲法裁判所に対して赦免を求める訴えを起すことが可能だが、その訴えが認められても、この有罪判決そのものを覆すものではない」、「この判決は、スペイン司法における一大スキャンダルだ」と述べました。

アンドゥーニ女史は、アッルーニ記者の弁護団がEU人権問題裁判所(ストラスブール)に提訴し、同記者に対する裁判の違法性を明らかにするであろうとも語りました。また、「ジャーナリストを擁護するアラブの委員会」副代表のユーセフ・シューリー氏は、「この判決は、スペインの司法が如何にアラブのジャーナリストに対し、敵愾心と偏見を有しているかを示すものである」と述べました。シューリ氏は、「主犯格に対する容疑のいくつかを無罪にし、また刑を軽減しておきながら、一方で職務上ビンラディンに会っただけのアッルーニ記者の判決を変更しないとは許されることではない」と述べました。

アブ・ダハダハ被告は、9.11事件に関する陰謀容疑について無罪を言い渡されましたが、これは検察側が申し出たことによるものでした。検察側は、第一審が有罪判決の根拠とした証拠は、不十分であったとしました。この結果、最高裁はアブ・ダハダハ被告にアルカーイダへの所属容疑のみを認定し、禁固12年を言い渡しました。

スペイン最高裁、5月に上告審開廷か

報道によれば、スペイン最高裁がこの事件の上告審を開く予定です。スペイン検察当局は、アッルーニ被告についての判決維持を主張する一方、主犯格とされるヤルカス被告については、9.11事件への関与を訴因から外したとされています。これが事実とすれば、そもそも、同事件の共謀共同正犯を疑って、7万年以上の禁固刑を求刑した検察の迷走ぶりを如実に示すものであり、ますます暗黒裁判のそしりを免れない実態が明らかになったと言えます。

(06年2月18日アルジャジーラ・ネットの報道要旨)

 スペインからの報道によれば、いわゆる「アルカーイダのスペイン細胞」事件についての最高裁における審理が今年5月に開かれる。スペイン検察当局は、この裁判で昨年9月に罰金を伴う禁固7年の刑を言い渡されたタイシール・アッルーニ被告に関して、取材のため『テロリスト集団』と係わり合ったことは、「記者としての権利の濫用」であるとの理由で、同被告についての判決維持を求めた。

一方、検察当局はこの事件の主犯格とされるイマードッディーン・バラカート・ヤルカス(通称:アブ・ダハダハ)被告について、9.11事件の謀議の容疑を訴因から外し、ビンラディン率いるアルカーイダに所属した罪だけを問うこととした。

同被告は、9.11事件謀議他の罪で、27年の禁固刑を言い渡されている。(昨年9月に出された)この判決は、同年7月に行われた禁固7万4377年の求刑(9.11事件共謀共同正犯容疑)に対する大幅に軽い判決であった。この時裁判所は、同被告が2001年7月にスペイン北東部のタラゴナで開かれたアルカーイダの会合に出席したと認定した。この会合には、9.11事件の実行犯であるムハンマド・アタともうひとりのアルカーイダ・メンバー、ラムジー・ベナルシーバが出席したとされている。

スペイン憲法裁判所、上告審理の開始を決定

憲法上の重大な人権侵害があった場合に提訴が認められているスペインの憲法裁判所は、アッルーニ被告の上告審理開始を決定しました。

(06年1月1日) アルジャジーラ・ネットの報道要旨

 スペイン憲法裁判所は、タイシール・アッルーニ記者を7年の禁固刑に処した判決の破棄を求めた上告を受理(注:審理開始決定に相当)した。同裁判所は、この判決の破棄を求める訴えを起こすに足りる十分な理由があると判断したことを明らかにしている。

アッルーニ記者の妻、ファーティマさんは同記者の弁護士から、「通常、上告の90%を受理しない憲法裁判所がこの件は受理した」と聞かされたと述べた。そして、スペインの裁判手続きは進行が遅いため、この審理は1年以上かかるとの見通しを示した。また、最高裁判所が憲法裁判所の前にこの上告について審理するかもしれないとのことである。

ファーティマさんは、獄内で心臓発作を起こすなどアッルーニ記者の健康状態が悪化しているため、同記者の保釈を目指した努力が続けられていることを強調した。また、弁護団は、憲法裁判所に対して、もうひとつの抗告を行っている。それは、同記者が、刑務所内で憲法上保護されるべき人権を侵害されたことについての抗告である。

法律の専門家は、アッルーニ記者が受けた量刑が、同人の訴因とは不釣合いに重いと考えている。また、アラブと世界の知識人の多くは、この判決が、情報を入手する自由、情報源を秘匿し、保護する権利といった基本的なジャーナリストの権利を侵害していると考えている。そして、このような不当な判決が出た背景には、米国のスペインに対する圧力があったと考えている。

アッルーニ被告に罰金付き禁固7年の有罪判決

「アルカーイダのスペイン細胞」に関する裁判は、アッルーニ被告らに有罪判決を
下しました

(05年9月26/27日) アルジャジーラの報道要旨

 スペインで行われていた所謂「スペインのアルカーイダ細胞」裁判で、裁判所は主犯格のイマード・アッディーン・バラカート・ジャルクース(ヤルカス)被告に対し、9・11事件実行の共謀を認定、禁固27年を言渡した。また、アルジャジーラのタイシール・アッルーニ記者に対しては、アルカーイダへの所属容疑は認めなかったものの、テロ組織に協力した罪で罰金を含む禁固7年(罰金刑を含む)が言渡された。

厳重な警備と、マスコミの大きな関心を集めて数ヶ月前に始まった裁判は、再び、前例のない厳戒体制が敷かれる中、判決の時を迎えた。裁判では、まず裁判長が裁判の概要、とくに、審理の大部分が盗聴記録に基づかなければならなかったことは、事件の特殊な性質によるものであると説明を行った。次いで別の判事が判決を読み上げ、アルジャジーラのタイシール・アッルーニ記者については、アルカーイダに協力した罪で禁固7年が言渡された。

今日判決を受けたのは「アブ・ダハダハのネットワーク」と呼ばれる18人の容疑者で、主犯格のシリア人アブ・ダハダハ、本名イマード・アッディーン・バラカートに対しては、テロ組織への帰属、および一般市民の殺人共謀の罪で禁固27年が言渡された。すなわち、9・11事件の準備に関与したとの容疑が認定されたもの。

アッルーニ夫人のコメント
「もちろん判決は不当なものです。今日は、夫が裁かれるとともにアルジャジーラも裁かれました。これはアルジャジーラに対する裁判でもあるのです。わたしたちは夫の無罪を勝ち取るまで、上訴を続けていく決意です」

ホセ弁護士(担当弁護士)のコメント
「この判決を覆すのは困難で、時間のかかる問題。1年半はかかるだろう。また、判決後の保釈も非常に困難。しかし、それが実現できるよう全力を尽くす」

この裁判を当初から傍聴してきた人権団体などはアッルーニ記者に対する有罪判決に驚きを隠していない。しかし、今後はスペインの上級裁判所への控訴、そしてその先は欧州裁判所への破棄申請という手続きが取られることになる。

アルジャジーラの声明(9月26日)
アルジャジーラ・チャンネルは、タイシール・アッルーニ記者に対する判決内容に強い衝撃と深い失望の念を表明する。この判決は不当であり、ジャーナリズムの歴史における危険な先例となった。
アルジャジーラは、弊社特派員であるアッルーニ記者に対する支援、および、同人の職業的キャリアとジャーナリストとしての勇気を援護していくことを再確認する。
アルジャジーラは、担当弁護士と連絡の上、控訴手続きを支援する。また、スペイン司法当局に対し、アッルーニ記者の健康状態に配慮して、即時保釈が認められるよう求める。

(アルジャジーラ聴き取りの上、翻訳/新谷恵司。公式日本語声明ではありません)

アルジャジーラ.ネットの記事が伝える事実要旨

①タイシール・アッルーニは、9月5日正午、グラナダの自宅にいるところを、訪ねてきたスペイン諜報部の私服警官に逮捕された。逮捕状の容疑は、アッルーニ夫人によれば、アルカーイダに所属との疑い。

②8日、アッルーニはガルソン予審判事の審理を受ける。ガルソン判事は、イスラム過激派問題を扱っており、チリの独裁者ピノシェ引渡しを担当したことでも有名。

③当局は、アッルーニとスペインが2001年に逮捕したイスラム細胞のリーダーと目されるイマードッディーン・バラカート・ジャルクス(コード名:アブ・ダハダハ)の間に関係があると疑っている模様。

④アッルーニ氏は、アフガニスタンから帰任後、ドーハで心臓の手術を受けており、今後も継続的な健康チェックが必要と主治医が証言。

⑤アルジャジーラは、世界のジャーナリスト、とりわけアルジャジーラが受けている嫌がらせの一環であると、この逮捕を強く非難。既に弁護士を選任して弁護に当たらせていると広報担当者。

⑥アルジャジーラはまた、スペイン当局と接触するとともに、報道の自由に関心のある諸機関に働きかけている。アラブ人権委員会は既にこの逮捕を強く非難する声明を発出済み。

⑦パキスタンでは、7日、報道関係者の諸組織が、本件逮捕に抗議してパキスタンの主要都市でデモ行進を行う。

<その後の経過>(9月15日現在)

⑧ガルソン判事は、アッルーニ記者の拘留期限を無期限延長。この理由としてアルジャジーラ特派員は、「西当局が、アッルーニが記者として知り得たビンラディンに関する情報を引き出すことを望んでいる」、「米、イスラエルより、アッルーニがチェチェン問題に関与しているとの情報がもたらされた」と報告。

⑨アルジャジーラのハマド・ビン・サーメル会長は、10日、スペインのアスナール首相宛、アッルーニ記者の早期釈放を求める親書を発出。同会長は、「記者が秘密組織に情報源を持つことは、記者として誇れることであり、そのために裁判にかけられるようなことがあってはならない」と述べた。広報責任者のバッルート氏は、「アッルーニ記者は、記者としての職責を完全に果たしただけと確信している」と改めて表明。

本件逮捕を報道したアルジャジーラのビデオ報告の内容翻訳

9月11日事件が起きた後のアフガニスタン戦争報道でアルジャジーラは高い評価を得ることになりましたが、この時、タイシール・アッルーニはカブール特派員として空襲を実況し、その結果についても詳しく伝えました。そして、世界のメディアがアルジャジーラのアフガニスタン報道をキャリーしたため、アッルーニの顔は世界中でよく知られることとなりました。そして、この戦争が終結する直前、彼と彼を支えていたスタッフは支局が空爆されたために死の危険に晒されました。そして、2003年、新たな戦争が彼を待っていましたが、今度はアフガニスタンではなくイラクでした。彼は、躊躇することなく戦争が始まってから2週間目にアンマン経由でバグダッドへ赴きました。彼を待っていたのは2回目の支局攻撃で、今回はアルジャジーラだけが狙われたのではありませんでした。この爆撃では同僚のターレク・アイユーブ記者が殉職し、アッルーニ氏とその他のスタッフは難を逃れました。

(シリア出身の)アッルーニ氏は、経済学博士号取得のためスペインに渡り、その後、スペインの国籍を獲得しました。卒業後、最初に勤めたのは、スペイン通信社でした。今日、彼は休暇でグラナダの自宅にいるところを逮捕されましたが、間もなくこの休暇を終えてドーハに帰任するところでした。彼に対する逮捕状は、チリの独裁者として知られるアウグスト・ピノシェ容疑者を担当したことで知られるスペインの検事が用意していました。

数々の機関は、この逮捕について非難する声明を出しています。アラブ人権委員会はアッルーニ逮捕を強く非難する声明を発表し、この逮捕は、報道の自由に対するあからさまな敵対行為であると述べ、同氏の即時釈放と、同人及び家族への謝罪を求めました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました