【特集】熱い中東

「アラビア語通訳者に聞く」という趣旨のテレビ出演があり、その事前の打ち合わせ取材で、「チュニジアとエジプトの出来事をどう捉えていますか」と聞かれた。奇妙なことに、今回の出来事は私の過去と重なる。私が最も長い時間生活したアラブの国がチュニジアであり(4年2か月)、その次がエジプト(3年)なのだ。また私が日本で通訳を始めてから担当させてもらった要人は多いが、元首級となると数名に限られる。にもかかわらずその中に、追放されたベンアリ・チュニジア大統領、居座れば居座るほど問題が大きくなっているムバラク・エジプト大統領、同じく危機が深まる一方のサーレハ・イエメン大統領の3人がいる。
私は、「チュニジアの市民革命成功にはおめでとうと言い、エジプトの混乱には気の毒としか言いようがない」と答えた。チュニジアの出来事があって、エジプトに火がついたわけだが、この二国で起きていることは似ているようで全く別物である。チュニジアでは軍が革命の成功を保障する保証人的役割を果たしている半面、エジプトでは軍は国民の改革への熱意に水を差す火消し役。その程度に留まっていればよいが、新たな専制を生み出す基盤となる可能性すらある。
この構図の仕組みの秘密についてはおいおい述べていきたいと思う。ここでは、国によって事情は大きく異なるのだということと、国際政治の犠牲になって、社会的な開発が歪めに歪められてきたエジプトの爆発は、今後の国際情勢は言うに及ばず、人類の歴史に大きなインパクトを与える事件に発展するのだということを指摘しておきたい。

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