アルジャジーラの報道によると、今般日本政府はガザ地区復興支援のために貢献を約束していた約850万ドルの支払いを完了した旨、現地事務所(大使館の支店のようなものです)所長が、ファイヤード首相、EU代表とともに共同記者会見して明らかにした由。
約束しても、支払わない国々が多い中、日本がきちんとパレスチナ支援にコミットしている姿勢を示すことは大変重要です。
かつて、日本外交には広報姿勢、というより、広報マインドが全くなく、巨額の支援をしても、それが世界はおろか、支援されている国民にすら知らされるということがありませんでした。この観点から、このような情報発信努力をされていると聞くことで、日本外交(官僚組織)には、多少なりとも漸進がある。ベストでないにせよ、望ましい形を追求して仕事をされている、と感じました。
他方、この報道を聞いて一番強く感じたことは、日本円にして約70億円の国のお金が震災被災者ではなく、パレスチナの人々に援助される、ということへの違和感です。
対外援助と国内投資、ないしは社会保障問題を同列に論ずるべきではないのかもしれません。しかし、そのような思考方法こそ、縦割り行政を是認してきた官僚主義的考えかもしれません。
日本は今、未曾有の自然災害に見舞われ、政府は被災者に十分な手当をすることもできず、また、被災した原発の制御ができず、世界に不安感を与えています。これが我が国の現実の姿です。「他人を援助している場合か?」と
思ってしまうのです。
私は、民主党が政権に就く前に主張した「政治主導」という言葉に惹かれ、政権交代を願った者のひとりですが、「腰砕け」どころか、そもそも政治主導の意味も分からず、固い決意もなければ、実行能力もなかった彼らに深く失望しました。
この事例で言えば、日本の政治家であれば、「パレスチナに支援する前にそのお金をまず被災地に回そうではないか」と言うべきではないでしょうか。東北の被災地には、パレスチナの人々以上に困っているわが同胞がおり、われわれ被災していない国民も、耐乏生活の準備をしているのです。
実際にはそのお金はパレスチナで困っている人たちのために支払うことになるとしても、「福島で困っている人も、パレスチナで困っている人も同じだ。私たちはパレスチナ人を助けるので、皆さんは福島の人々に支援の気持ちを送ってほしい」と、アラブ産油国や、パレスチナ支援に関係する当事国に言うべきです。ただ、支援するだけでなく、本来パレスチナ人を支援すべき立場にあるアラブ諸国から、70億円以上の我が国に対する支援を確保すべきなのです。そういうことができる、ということが「政治主導」の本来の意味ではないでしょうか。
(なお、ガザ地区が破壊されたのは天災ではありません。イスラエルがしなくてもいい爆撃で破壊の限りを尽くしたのです。本来、罰せられ、支援金(=賠償金)を払うべきなのに、知らん顔をするどころか、米国から多額の援助をもらっているイスラエルも当事者である、ということを言及しておきたいと思います。被災地には、イスラエル軍の初動鮮やかな緊急医療支援があったことに深い感謝の気持ちを表するとともに、です。)
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