「リビアがイスラム国家化」の真偽

24日早朝、アルジャジーラの通訳当番でリビア、ベンガジで行われた全土解放祝賀会の報道を見ていて驚いたことがありました。アブドルジャリル暫定国民評議会議長が、「リビアはイスラム国家だ。イスラム法の原則に反する全ての法律の効力を停止する」と高らかに宣言したからです。
議長「わたしたちは、イスラム教の国家としてイスラム法を国家の基本法と定めました。従って、どのような法律であれ、イスラム法の原則に反するものは、法的に効力停止です。そのような法律の例を挙げると、たとえば婚姻離婚法です。この法律は一夫多妻に制限を加えていますので、イスラム法に反しています。従ってこれは停止されます。また、銀行法についても、この方向で真摯に法整備をすすめてまいります。」(アルジャジーラ報道のまま)
時を同じくして制憲議会選挙を行なっているチュニジアでも、またエジプトでも、そしてその他多くのアラブ諸国でイスラム過激主義をどう取り扱うか、イスラム法の適用を訴える人々をどうなだめるかが世界的に焦眉の急となっているこの時に、その言葉をあまりにあっけらかんと聞いてしまい、私は我が目と耳を疑ったのです。
そこで少しネットで調べ、また弊社の切り札であるアーデル君に教えてもらった結果をここにご紹介しておきましょう。
-アブドルジャリル議長がイスラム国家、イスラム法の実施に言及するのはこれが初めてでなく、以前から発言し、多少の物議を醸していた。
-同議長の考えるイスラム国家とは、アラブ人のアイデンティティとしてのイスラムを価値観の中心に据える国家といった意味であり、穏健なイスラムという言葉でも代弁できる。イランやサウジアラビアのような、過激主義とは無縁のものをイメージしているらしい。
-議長自身はムスリム同胞団ではない。しかし、TNCのメンバーの中にはガチガチのイスラム過激主義者も存在する。
議長の顔を見る機会があったら注意してください。議長の額の真ん中には見事な「お祈りダコ」が出ています。これは毎日5回、額を床に擦り付けて礼拝をする人に現れる天国の相です。親欧米の政治スタンスを取り、スーツを着こなし、結婚指輪も薬指にはめている議長が突然イスラム法を口にするのはアンバランスに見えますが、彼個人的には何の矛盾もないのだ、ということはアラブのイスラム教徒と付き合ってかれこれ30年になる私には、自然に受け止めることのできる事実です。
しかし、彼の今次発言を問題視する意見は、アラブ諸国の世俗主義者からも既に噴出しています。一国の暫定元首としては極めて不用意とのそしりは免れないとも思います。リビアの今後が前途多難であることは誰しも認めるところであり、この問題は尾を引くでしょう。ただ、あくまでリビアの安定を求める気持ちから、このことだけは多くの人が理解してくれればよいと思います。それは、「穏健なイスラム国家」というモデルを追求することは可能だ、ということ。そしてその選択に政治的野心から過度の中傷をしてはならない、ということです。
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