以前、この欄でご紹介したように、尖閣の問題については国際報道がこの諸島を「係争地」としており、係争地を国有化するとはけしからん、という中国のナンセンスな主張が国際的にまかり通るという奇妙な事態になっています。私共は、仕事上、アルジャジーラのアラビア語チャネルを注視していますが、ここでも15日、要旨次のような報道がありました。
―日中間で係争中の尖閣諸島を日本政府が国有化したことを受けて、中国の北京など10都市で大規模な抗議デモが行われた。…
北京特派員の報告要旨:在北京日本大使館前で数千人規模の抗議デモ。中国政府は、「中国人民が虐げられる時代は終わった」と過激な声明を出し諸島に対する正当な領有権があることを確認した。中国外務省報道官:「日本政府の措置によって、諸島に対する中国の歴史的な領有権が失われることはない。主権を侵害する如何なる行為も許さない。今後の状況を見守り必要な措置を講じる」。尖閣諸島は小さな無人の岩島であるが、周辺海域に石油や天然ガスなどの資源が埋蔵されている可能性が確認されている。中国側は「諸島は6世紀も前から中国人が発見し利用してきた」、日本側は「200年前に清王朝が領有権を放棄した」と主張している。
百歩譲って、それが係争地であるなら、両当事者のコメントを出すのが報道に求められる姿勢と思いますが、北京のアルジャジーラ支局が当局の厚い保護を受けているのに対して、東京には支局が存在しない、といった事情も影響していると言えるでしょう。これはいけません。ペンの戦争は、真の戦争以上に負けると大変なことになるのです。
偶々連休で、急ぎの仕事が入ることもなかったので、下記のようなコメントをアラビア語でFBに掲載してみました。こういうことをしなければならない義務は、そのことに気づき、表現できる力があるなら、単なる一市民であっても、この私にもあるだろうと思ったからです。ただ、それは、国のトップである総理や、外交の責任者である外務大臣に、より重い責任として求められることです。官僚組織の下のレベルや、有識者の論文のレベルでやっても、あまり意味がないのです。普通の国は、どこもきちんとやっていることが、どうして我が国にはできないのでしょうか。これはすぐにでも変えることのできる我が国政府の許されざる不作為だと思うと、少し憤りも篭ります。
◆小生がFBで友人に知らせた意見(アラビア語)の和訳
1.アルジャジーラ・ネットの以下の報道にコメントしたい。
「アルジャジーラの特派員によれば、北京の日本大使館に数千人の抗議する中国人たちが侵入を試みた。またこの日の朝、中国各都市の日本の公館前では同様のデモが行われた。日本政府が東シナ海で両国間で係争中の島を国有化したことへの抗議である。」
この島々は係争中ではなく、第二次世界大戦後の一時期(1945-72)、米国に占領された時期を除いて歴史上ずっと日本の領土であった。中国も台湾もこの島々が日本に返還されたとき異議を唱えなかったが、その後何年も経って、石油・ガス田の存在の可能性が言われると領土主張を始めた。戦前は、後に台湾政府となる中国政府も、また「人民政府」も日本のこの諸島の領有権を認めていた。そのことを証明する公文書が存在している。中国人はこの諸島に手をつけた歴史がない。なぜなら、日本の施政権が常に及んでいたからである(実効支配)。したがって、この文脈で「係争中」の言葉を使用することは誤りである。
一方、日本政府が「国有化」した、という点についてはこの諸島の国際法上地位に特別の意味のあることではないのであり、中国政府の反応は適切でない。この背景は次のようなものである。日本国民であるこの諸島の所有者は、個人的な資金の問題のため島を売りたいと考えていたが、日本の官僚機構はこの所有者に支援の手を差し伸べなかった。そこで東京都知事が購入の申し出をした。東京都には太平洋上に多くの離島があり、その行政経験があるので、この諸島も都の行政区域に入れるという計画であった。すると、中央政府の官僚が動いた。国ではなく、地方自治体によってこの諸島が買われることになると自分達が恥をかくことになるので、これを嫌がったのである。中央政府は、十分なカネを出し、売買契約が成立した。
2.アルジャジーラ・ネットは、ロイターを引用して次のように伝えている。「数百人の中国人は日本大使館に向け様々なものを投げつけた。一方、警官隊はこの阻止に懸命であった。」
デモは平和的なものではなかった。それどころか、ずっと危険なものであり続けている。日本の商店や工場、施設が攻撃され、火を放たれた。中国北部、青島のジャスコでは略奪があり、すべての商品3000万ドル相当が消えたのはその一例だ。
中国の立場に偏ったアルジャジーラ・ネットの記事は次のように言う:「日本の海上保安庁によると昨日、中国のパトロール船6隻が両国間で係争中の諸島近くの日本の領海に入った。これはアジアで最大の2つの経済大国間に長年横たわる紛争の新たな局面だ。」しかし、両国の間にはそもそも領土紛争は存在しない。存在しているのは、貪欲で、違法な領土要求が、アジアの隣人に覇権を押し付けようと画策する国によって突きつけられていることだけである。
3.日本はなぜ暴力で国境を侵した中国人活動家を罰せず、中国のパトロール船に弾の一発も発射しないのだろうか?
日本は平和的な国家であり、その国民は暴力を好まず、たとえ相手が犯罪者であってもそれを傷つけることを好まない。多くの漁民、一般市民が北方領土を違法に占拠しているロシアによって殺されたり、連行されたが、日本は、その隣人との関係において、この国のように振る舞うつもりがない。国民の大体半分はこのように考えているが、もう半分は、日本の弱腰の姿勢は問題を更に複雑化させ、熱い戦争を招くことになりかねないとみている。腐った官僚主義に支配された日本政府は、断固とした措置を取ることも、確固たる立場を表明することもできない。このことが、東京都知事のイニシアティブのような愛国的な運動が起きる背景であり、これには国民の幅広い支持がある。
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