No.20 / 2002.05.31

****** global middle east *************** issue No.0020 ***********
グ ロ - バ ル  ミ ド ル イ ー ス ト***
From Erico Inc. Editor/ Ken-ichi Matsuoka ***** 31/05/2002****

いよいよFIFAワールドカップが開幕です。日本全国津々浦々、ワールドカップ・モードに切り替わった今日この頃、当global middle eastも関連の話題をご紹介しましょう。

【コンテンツ】
1.アルジャジーラ通訳日記:米英軍のイラク総攻撃
2.新宿でサウジアラビア王国展覧会
3.チュニジアウィークが各地で開催
4.東京ジャーミイ訪問記

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1.米英軍のイラク総攻撃         by 新谷 恵司============================================================

30日のアルジャジーラ・ニュースによれば、イラクの日刊紙が、「米国は来る9月11日を対イラク軍事作戦の開始日と決定し、アラブ連盟事務局はその連絡を受けた」と報じたそうです。開戦の日取りが5月の現時点で決まっているというのはあり得ない話ですし、万一決まっていてもそれを他国、ましてやアラブ連盟に通報するとは、奇妙キテレツなお話です。しかし、そのようなイラク紙報道があったことは事実のようですし、そうであれば、その事実から何らかのメッセージを汲み取ろうと試みることが、中東ウオッチャーにとっては必要なことかもしれません。

去る5月13日、著名な中東ウオッチャーであるピエール・シャマス氏(APSコンサルティング代表)が来日し、都内で講演しました。イラク情勢に関する同人の見解は、「今後米英のイラク攻撃があるか、ないか、はもはや問題ではなく、それがいつ開始されるかだろう」ということだったと思います。その具体的時期としてシャマス氏はラマダンおよびクリスマス休暇終了後の来年1~3月になる可能性が高い、と述べました。

ここでは、字数の関係もありその詳しい理由を再現できませんが、大きな理由のひとつは、冬でなければ暑過ぎて地上戦は出来ない、ということです。そこで昨日このお話、すなわち9月11日に作戦が開始されるかもしれない、という報道に接し、これを通訳しながら、私は、「ああ、それはあながち無視できない、うん、その可能性もあるなあ」と思ったのでした。

9月11日といえば、まだ残暑厳しい時候ですが、その日を期してアフガニスタンに行ったと同じ空爆を開始すれば、地上軍を投入するのは丁度よい気候になった頃となるでしょう。その後11月になると、聖ラマダン月がやってきます。よく聞かれた珍説にラマダン月はイスラム教徒にとって聖なる月だから、その最中に戦闘をするのはよくない、世界中のイスラム教徒が怒り狂って立ち上がる・・・というのがありました。しかし、そのような現象は起きない、ということが昨年以来の対テロ戦争で証明されました。むしろ、イスラム教徒が断食を励行して、政治的・社会的活動が著しく低下するその月内は、大きな反発を招くような行為、例えば一般市民の虐殺などを起こしても、あまり注目されずに済む、というような効果さえあるのです。

攻撃をするかしないかを決めるのは米国首脳であり、そのためにはいろいろな要素が働くわけですが、何と行っても「世論の反発を招かない」という観点が如何に重要か、ということに私は最近注目しています。それは、先にニューズウイーク誌がイスラエル極右の指導者エイタン氏へのインタビューを報じまして、これを読んだ時、彼の論理が極めて明確に今、世界で起きていることを説明していると、驚かされたからです。それは、イスラエルがパレスチナ自治区に侵攻してジェニン難民キャンプでの虐殺などが報じられた時に行われたインタビューでした。イスラエルにとって一番大切な同盟国である米国からの撤退要求をどうして跳ねつけることができるのですか?との問いに答えて、

(翻訳案:エリコ通信社)あなた方米国は、B52爆撃機を使ってアフガニスタンの雲の下にあるものをすべて破壊し尽くしたではないか。一般市民であろうが、基礎インフラであろうが、何のおかまいもなしに。あなた方がそれを実行できたのは、国際的な批判を免れることが出来る、と感じたからだろう? あなた方は何週間も報道管制を敷いた。そしてとても時間がかかった。7ヶ月だ。他方われわれ(イスラエル)はあと8週間欲しいだけだ。パウエルに、「モラルダブルスタンダード」は使うな、と言うつもりだ。(引用おわり)

というのです。

イラクへの攻撃については、対タリバン・アルカーイダ戦争ほどの国際的支持はありません。米国は下手をすると世論の反発を招くだけに、この戦争を何としても遂行したいブッシュ政権としては、如何に国際世論、いやそれにも増してどうやって国内世論を味方に付けるか、という点が最重要問題でありましょう。9月11日に開始する、というシナリオは、国内の世論の支持を得、反対論者の声をナショナリズムで封殺し、その後の国際的な反発や、アラブイスラム社会の反発をも最小限に抑える、という観点からは、検討に値すると言えるでしょう。

最後に、イラク紙がそのような記事を書いた、というその背景ですが、イラクのフセイン政権が、近づきつつある米英軍の総攻撃を真に畏怖しているひとつの証拠では、と愚考しております。

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2.サウジアラビア王国展覧会
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サウジアラビア王国情報省主催の展覧会のお知らせが寄せられました。

都内の会場にベドウィンテントを常設し、民族衣装や民芸品を展示するとともに、サウジアラビア各地の写真や模型が展示されるそうです。耳より情報としては、来場者にはFIFAワールドカップ・サウジアラビア参加記念Tシャツ他関連グッズ、また特にお子様にはベドウィンテントと同じ生地でできたリュックサックなどの記念品が無料プレゼントされる由です。なかなかのレア物。是非足を運んでサウジアラビア・オリジナルグッズをゲットしましょう!早いもの勝ちかも。

《記》サウジアラビア王国展覧会日時:5月31日から6月11日の毎日開催 午前10時から午後7時まで会場:東京都新宿区西新宿NSビル1階大時計広場およびオープンプラザ入場無料

新宿NSビルのウェブサイトはこちら  http://www.shinjuku-ns.co.jp/

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3.チュニジアウィーク開催
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チュニジア政府主催によるチュニジア紹介イベントが大分・奈良・神戸・大阪各地で開催されます。チュニジアの代表的料理クスクスの試食会、伝統音楽団によるコンサート、映画上映会、チュニジア物産展などなど内容盛りだくさん。

奈良市・橿原市
5月22日~6月2日大分市
6月7日~6月6日神戸市
6月2日~6月6日大阪市
5月28日~6月15日

開催地によってイベント内容・日時・会場が異なりますので詳細は下記ウェブサイトでご確認を。催し物は、全て参加無料とのこと。あなたはチュニジアン・ハリッサ体験済み?

チュニジア海外通信局ウェブサイト『チュニジア通信』 http://www.tunisia.jp

【はみだし情報】橿原市に出ている物産展を訪れる機会がありました。選手団が滞在している橿原神宮前駅(近鉄)のロイヤルホテルには展示があり、傍らのホテル内売店では、チュニジアのお土産も販売していたように思います。また、代表チームがトレーニング・キャンプを張っているのは、同駅から程近い競技場です。この入り口付近にも特設テントで、チュニジアのパンフレットなどが配布されていました。大阪などのイベントでは、ギネスブックものの世界最大クスクス作りに挑戦するそうです。(新谷)

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4.東京ジャーミイ訪問記             by 松岡 健一==============================================================
2000年6月30日に開館してから早や2年を迎えようとしている東京ジャーミイ(東京モスク)。ムスリムでなくとも見学可能なので、アラブやイスラムに興味のある方は一度訪ねてみては如何でしょう。

小田急線・代々木上原駅から井の頭通りを歩いて行くと、アッ!と驚かんばかりにミナレット(尖塔)が空を突いて直立している光景が目に入るでしょう。ふとイスラムの街角に足を踏み入れた様な錯覚を覚えるかもしれません。

館内1階入口ホールにはクルアーンやハディースの一節など繊細なアラビア文字のカリグラフィーが壁に掲げられています。「クルアーンの朗唱に最もたけていたのはエジプトであり、書写に最もたけていたのはトルコである」という諺があるそうですが、トルコ共和国宗教庁が東京ジャーミイ建設の中心的な役割を担っている証とも思えます。

3階には礼拝室(ハラム)があり、礼拝の時間でなければ入室可能です。女性はスカーフで髪を覆う必要あり(ジャーミイでも貸与)。天井のカリグラフィーやシャンデリア、ステンドグラス等々の美しさもさることながら、静かな空間に身を置いているだけで深遠な時空間を体感できる気がします。

最も印象深かったのは、アザーン(礼拝への呼びかけ)が聞こえた時。「アッラーフ・アクバル」で始まる朗唱にしばし耳を傾けていると、魂が奥底から呼び覚まされる様な不思議な気持になりました。あぁ、またイスラム圏に行ってみたい、という想いを新たにした東京ジャーミイ訪問でした。

《記》東京ジャーミイ東京都渋谷区大山町1-19  Tel: 03-5790-0760小田急線代々木上原駅から徒歩3分関連ウェブサイト :イスラミックセンター・ジャパンhttp://ns.islamcenter.or.jp/jpn/TokyoMosque.htm

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<編集後記>
FIFAワールドカップのサウジアラビ代表チームは東京都調布市にキャンプしています。練習に先だって選手数人が並んでお祈りを始めると、地元の子ども達は神妙な面持ちで眺めていました。彼等にとっては強烈な異文化体験だったかもしれません。しばしPCや本から離れ、各国のイベント会場に足を運んでみては如何でしょう。(ハッサン)ご意見・ご要望をお気軽にお寄せ下さい。

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