No.28 / 2003.03.12

***** global middle east ************* issue No.0028 **********
グ ロ - バ ル  ミ ド ル イ ー ス ト***
From Erico Inc. Editor/Ken-ichi Matsuoka ****12/03/2003 ***

みなさん、こんにちは。イラク情勢が俄かに緊迫の度を増していますが、ここはひとつ冷静に見つめる時間を持ちたいと思います。

【コンテンツ】
1.イラク再生      by 新谷 恵司
2.緊急研究集会に行ってきました。 by 松岡 健一
3.オマーンとザンジバルの文化と社会

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1.イラク再生        by 新谷 恵司===============================================================
第26号の本欄で、今度の戦争は大義なき戦争だと書いた。この「正当性のなさ」が災いして、米国は開戦のための国際的合意を取り付けることが出来ない。国際的な合意どころか、国民の中にも反戦を叫ぶ者が増えてきた。逸早く空母を出航させたフランスのシラク大統領が、武力行使に繋がる決議案には拒否権を行使するとはっきり述べたのは、この1、2ヶ月で米国が企図するこの戦争の評価が固まってきたことを意味しているのだろう。

それでも米国は有志同盟を率いて攻撃を決行するという。真の目的は、サッダーム政権の放逐とイラク占領、湾岸「再編成」にあるのだから、国際的な反響は別にして、軍の準備は決められたタイム・テーブルに従って予定通り進んでいる。後は大統領の一言を待つだけだ。

ここで読者に改めて確認しておきたいと思うことは、世界が反戦に傾いているぐらいだから、当事者のアラブ諸国はイラク支援で一致している、戦争反対でまとまっているだろう、と考えるのは間違いだ、ということだ。今月のアラブ首脳会議では、対イラク戦争断固反対の声明が全会一致で出された。それでも、その裏で決議に賛成した多くの湾岸諸国においては、米軍の攻撃に最大の便宜を図る準備が着々と進められている。

このパラドクスをどう理解したらよいのか。その歴史的背景を中心に、2003年のイラク問題をどう捉えるか、そして、アラブ世界に登場した自由メディアは、どのような役割を果たすのか、これからの世界を大きく動かすことになるグローバルイシューについて、私見を緊急出版することになった。

「イラク」は泥沼化するのだろうか。それとも、米英による「解放」が新風を吹かせ、新たな復興と発展の時代を迎えるのだろうか。読者のご批判を仰ぎたい。

イラク再生 -アラブ・メディアがもたらす民主化-

新谷恵司著 四六版 並製 200頁 第三文明社刊定価:1,200円+税

主な内容:アラブの苦悩・王制と共和制・「第三次」湾岸戦争自由メディアの勃興・ニュース専門チャンネルアラブの民主化・日本外交の課題・イラクの改革とアラブ新時代など
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エリコ通信社では、上記書籍を書店発売に先駆けて、グローバルミドルイースト読者に通信販売いたします。お近くの書店で入手できない方もどうぞご利用下さい。お申し込みは下記より

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2.緊急研究集会に行ってきました。 by 松岡 健一===============================================================
3月10日、明治大学駿河台ホールにて開催された中東研究者有志主催の緊急研究集会『対イラク戦争と日本—-中東研究者が鳴らす警鐘』を聴講しました。

板垣雄三先生はじめ、大塚和夫先生、酒井啓子先生など8名の先生方が順次発言され、あっという間に3時間が過ぎました。500名近い収容力を誇るホールもほぼ席が埋まり、昨今の中東情勢の関心の高さを垣間見た気がしました。

イラク戦争間近と一種異様な盛り上がりを見せている今だからこそ、忘れてはいけないのがパレスチナ情勢だという指摘がありました。12年前の湾岸戦争、2001年9月11日事件以降のアフガン空爆など、メディアの情報に振り回されるあまり、メディアが伝えていない現実があるということも忘れないようにしたいと思います。

イラク戦争後になれば、復興支援として日本の出番になるのでしょうか。世界の国々から見れば「米国が壊し、日本が直す」という連携プレーに日本の孤立を深めてゆくだろうという指摘もありました。日本国憲法と日米安保条約こそが、日本が世界との広い視野を忘れ、米国との関係からしか考えない「日本の知能低下」の原因となっているという発言もありました。

中東を語る前に、まず足元の日本を見つめ直す必要を強く感じました。

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3.海外実習写真展『オマーンとザンジバルの文化と社会』===============================================================
宮城学院女子大学国際文化学科より、2002年12月にオマーンとザンジバルで実施したフィールドワークの写真展についてご案内を頂きました。

アラビア半島東端のオマーンは、かつてインド洋交易で栄え、東アフリカ・タンザニアのザンジバル島に至るまで勢力を誇っていました。言わば、砂漠の民ならぬ海の民アラブの栄華の軌跡を辿る現地調査で見えてきたものは?

総勢38名の参加者が観光開発、住居、家族、世界遺産、食・・等々9つのテーマに分かれて現地調査を行い、写真をはじめ民芸品、絵画、衣装、特産物などの展示で現地の様子を紹介します。

アラブはもちろん、アフリカに興味のある方も是非ご覧になってはいかがでしょうか?

≪記≫日 時: 2003年3月14日(金)~19日(水)午前10時~午後7時(最終日は午後5時まで)入場料: 無料場 所: せんだいメディアテーク 5Fギャラリー C-1仙台市青葉区春日町2-1主 催: 宮城学院女子大学国際文化学科問合せ: 宮城学院女子大学国際文化学科 副手室 TEL:022-277-6208

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<編集後記>
12年前の湾岸戦争の時はアフリカの国々を旅していた。白人観光客から「戦争が始まったよ」と教えられた。帰路も予定外の空港で着陸し、機内から米国軍機の離陸を見送った。あの時感じた戦争のパワーと個人的な無力感。今回は同じ轍を踏まぬ様。(Hassan)

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