2021年4月2日 (No.21002)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

1日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ WSJ紙、米当局者の話として「大統領が米軍の一部部隊と軍装備品の湾岸地域からの撤収開始を命じた」と伝える。国防総省は「装備・部隊の配備は様々な要因や優先度に基づくもの」とする

■ 米国務省、2日に予定される欧州諸国とイランの会合を「前向きな一歩」と評する。IAEAは、「イランが遠心分離機の新たなカスケードの使用を開始したことは核合意違反」と指摘

■ エチオピア、「キンシャサで3日、AU議長の下でルネッサンス・ダムをめぐる3か国協議を再開する」と発表し、「同ダム建設作業の79%が完了」と確認

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―日本では春を迎えて、満開の桜見物を楽しもうと、多くの市民が東京の目黒川沿いに集まっている。当局が先週、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態(宣言)を解除したためだ。それでもなお当局は予防措置を講じ、東京の公園の遊歩道を封鎖し、市民に「桜の木の下での伝統的な祝宴を控えるよう」呼びかけた。今年の桜は、約70年前(の観測開始)以降で最も早く開花した。専門家は「気候変動によるものだ」と見ている。日本で好まれている花である桜は例年、新学期と新会計年度が始まる4月に開花していた。(桜を眺める人々の映像と共に事実のみ報道)

○ イラン・イラク・シリア情勢

―EUは、「イランとの核合意に関する合同委員会が2日、オンライン会合を開く」と発表し、「この会合には、中仏独露英とイランの代表が参加し、米が核合意に復帰する可能性や全当事者による同合意の項目の完全かつ有効な実施を保証する方法について協議する」と明らかにした。

―プライス米国務省報道官は、2日に予定されているイランと欧州諸国の(上記)会合を「前向きな一歩だ」と歓迎し、「米は同合意の順守に戻る用意がある」と改めて表明した。

―ロウハニ・イラン大統領は、「核合意への復帰が遅れることは、『5+1』グループの利益にならない」とし、「イランは先に、米が制裁を解除すれば、核合意の義務事項を実施すると表明した。これは双方の利益となるだろう」と述べた。

―IAEAは、「イランがナタンズの地下施設で、高性能遠心分離機『IR2m型』174台からなる第4カスケードによるウランの濃縮を開始した」と報告し、「これは核合意への新たな違反だ」と指摘した。

―イラク議会は、2021年の連邦予算案(約900億ドル)を賛成多数で可決した。同案は、一部会派からの反対に遭って、何度も可決に失敗していた。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、「バイデン米大統領が国防総省に、世界の米軍を中東から離れて再編する取り組みの一環で、湾岸地域に駐留する米軍部隊と軍装備品の一部の撤収を開始するよう指示した」「米は、少なくともミサイル防衛システム『パトリオット』3基を湾岸地域から撤収させた。そのうちの1基は、サウジのプリンス・スルタン空軍基地に配備されていたものだ」と伝えた。同紙は、米政府当局者の話として「空母と監視システムを含む一部の軍事力が、世界の他の地域の軍事ニーズを満たすために、中東地域から移転された」と報じた。同紙によると、国防総省は、サウジが親イランとみられる武装勢力からのミサイルの脅威に対抗するために必要としている軍装備品や訓練について検討している。同紙によると、当局者らは「サウジがミサイルや無人機に対応する能力が向上した」と語った。更に同紙は「提案されているサウジ支援の選択肢には、防衛用兵器の売却や諜報情報の交換が含まれる」としている。

WSJ紙によると、湾岸地域に駐留する米軍の規模は、昨年末時点で5万人。ブルッキングス研究所は、「米は中東地域に駐留する正規軍の規模を約2万人縮小する可能性がある」とし、「この規模の縮小は、米が同地域で実施している戦略の非軍事化に一役買うかもしれない」と指摘している。

―上記報道を受けて、米国防総省は「国防長官事務所と統合参謀本部は、世界の作戦用(軍事)リソースを優先度や脅威、機会に基づいて配備することに関して長官にアドバイスを提供するために、現場の指揮官らとの作業を続けている」とコメントした。

元米国防次官補で米中東研究所主任研究員のジェームス・ファルウェル氏(ルイジアナ州):この動きを大げさに分析する必要はない。米政府は「中国の脅威に対抗するために(軍事)リソースを再編する必要がある」と明言しており、そのためにアジアに向けて米軍部隊や軍装備品を再配備するのだ。これは中国の脅威に対抗するためだ。だからと言って、米が中東での出来事への関心を低下させたわけではない。米は継続的に同地域に関わってきている。しかし今、中国の脅威は米に対するだけでなく、世界の諸国に対するものとなった。中国が最近、集団虐殺を行ったことを忘れてはならない。今回の動きは、優先順位の見直しによるものだ。米が中東への関心を失ったり、同地域での米の利益を放棄するわけではない。

―プライス米国務省報道官は、「サウジは重要なパートナーであり、イエメンなどからの多くの脅威に晒されている」「米は、サウジがイエメンからの脅威に対して自衛できるよう、同国との協力を続けている。また、イエメンでの戦争終結に向けて同国と共に尽力している」と述べた。

―イエメンのマアリブ県で政府軍とホウシー派の戦闘が激化。同軍は、「同県サルワーフ郡カッサーラで、同派による大規模攻撃を阻止した。この際の戦闘で、同派の指揮官1人が死亡したほか、戦闘員数十人が死傷した」と確認。また、サウジのメディアは「同派がマアリブ戦線で民間人を狙って発射した弾道ミサイルをサウジ主導の同盟軍が迎撃・破壊した。同軍は、同派のミサイル発射台も破壊した」と伝えた。

―サリーア・ホウシー派軍事広報担当は、ツイッターで「サウジの首都リヤドの『重要かつデリケートな複数拠点』を無人機4機で攻撃し、標的に正確に命中させた」と発表。

―サウジのメディアは、「ホウシー派がサウジ南部ハミース・ムシャイトに向けて飛ばした爆弾を積んだ無人機2機が迎撃・破壊され、民間人と民間施設を狙った同派の試みが失敗した」と伝えた。一方、サリーア同派軍事広報担当は「ハミース・ムシャイトのキング・ハーリド空軍基地を無人機2機で攻撃し、標的に正確に命中させた。この攻撃は、イエメンに対する侵略行為の激化と封鎖の継続に対する報復だ」とツイートした。

―カタールと英は、両国空軍の間のパートナーシップ拡大に向けた了解覚書に署名した。ホーク飛行隊の合同訓練や、空中給油訓練のためにボイジャー給油機をカタールに配備することなどが含まれる。

―バーレーンのジャウ刑務所に収監されている政治犯らが声明を出し、同刑務所内での新型コロナウイルス感染者の増大に警告を発した。声明は「感染者数は人権団体が確認したものよりも多い」とし、「政府の情報隠蔽により、収監者らは遺体となって刑務所から出ることになるだろう」と指摘した。

○ エジプト情勢

―シレシ・エチオピア水・灌漑・エネルギー相は、ツイッターで「AU現議長国コンゴ民主共和国の大統領を議長として、(同国の首都キンシャサで)3日にルネッサンス・ダムをめぐる3か国協議を再開する」「協議には、エジプト・エチオピア・スーダンの3か国の外相と水・エネルギー担当相のほか、AUの専門家とオブザーバーが参加する」と発表した。また、同相は「同ダムの建設作業が79%完了した」とし、「エチオピアは、ナイル川の水資源の公正かつ合理的な手段による共有に取り組む」と確認した。

○ 中東和平(占領地情勢)

―プライス米国務省報道官は、「イスラエルが(1967年の戦争で)西岸地区(とガザ地区)とゴラン高原を占領したのは歴史的な事実だ」「イスラエルとパレスチナが平和的に存在できるようにするのは2国家解決だ」との見方を示した。

○ 国際テロ・過激主義情勢

―特になし

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―憲法裁判所は、国民民主主義党(HDP)の閉鎖(解党)申し立てについて、(提出された書類や申し立ての手続きに不備があるとして)審理する前に「この件に必要な詳細(手続き)を完了させるよう」求めた。検察は先に、「PKKと緊密な関係にある」として、HDPの閉鎖を求める申し立てをしていた。HDPの幹部はこの関係を否定している。

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―中国とイランの接近に、イスラエルが強い警戒を示している。イスラエルの軍事専門家がヘブライ語紙「The Times of Israel」に発表した記事によると、イスラエルは中国の動きは同国にとってマイナスに作用すると見ている。中国は原油の国内消費の大半を湾岸アラブ諸国に依存しているが、イランとの合意でイラン産原油の輸入が10倍増となれば、それはサウジに影響する。また、中国は経済関係だけでなく、イランと軍事協力を進める目論見であろうとの見方。(アラビー21)

Redirecting to https://arabi21.com/story/1348192/%D9%85%D8%A7-%D8%AA%D8%AF%D8%A7%D8%B9%D9%8A%D8%A7%D8%AA-%D8%A7%D8%AA%D9%81%D8%A7%D9%82-%D8%A7%D9%84%D9%86%D9%81%D8%B7-%D8%A7%D9%84%D8%B5%D9%8A%D9%86%D9%8A-%D8%A7%D9%84%D8%A5%D9%8A%D8%B1%D8%A7%D9%86%D9%8A-%D8%B9%D9%84%D9%89-%D8%A5%D8%B3%D8%B1%D8%A7%D8%A6%D9%8A%D9%84-%D9%88%D8%A7%D9%84%D8%AE%D9%84%D9%8A%D8%AC

中東の新型コロナ動向

―国別感染状況(イラン)

政府発表の数値がどの程度信頼できるか疑問符が付くものの、感染者数ランキングで世界第15位、中東ではトルコに次いで多い。

累積感染者数:1,875,234人(22,116)、累積死者数:62,529人(738)。カッコ内は人口百万人当たり。この人口比をトルコと比較すると、感染者比率はトルコの3.9%に比して2.2%と低いが、死亡者比率はトルコの0.37‰に対し、0.74‰と跳ね上がる。一日あたり新規感染者数は昨年12月3日に13,992人を記録した後、12月25日には6,021人まで抑え込むことに成功したが、その後は漸増し、先月30日には10,250人を記録している。

対策の鍵となるワクチン接種については、ハメネイ指導者が欧米のワクチンを批判、ロシア製「スプートニク」の導入や、国産ワクチンの開発等が報じられた。しかし対応については不透明で、著しく遅れているものとみられる(例えば、最高指導者の発言にも拘らず、政府はアストラゼネカ社製ワクチン420万回分を購入したとの報道や、まだ開発が完了していない国産ワクチンの一般接種を5月から実施する、等の報道)。

Iran COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Iran Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, trends ...
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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