アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
7日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 紅海でイラン船が攻撃されたとタスニム通信が報道。米国防総省は「米部隊はいかなる攻撃にも加わっていない」と関与を否定
■ ウィーンでイランの核開発をめぐる協議。米、協議を「建設的だったが、ブレーク・スルーの見通しはない」と評す。イランは楽観的な姿勢を示しつつも、「成果を急ぐことはない」と慎重
■ ルネッサンス・ダムをめぐるコンゴでの交渉は、状況を打開できず終了。エジプト・スーダンとエチオピアの間で非難の応酬
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラン革命防衛隊に近いタス二ム通信は、イラン船「サビーズ」が紅海で吸着水雷による攻撃に遭ったと報じた。同船について「過去数年、紅海に留まり、イラン商船を海賊行為から保護するためのイラン特殊部隊の任務の支援にあたっていた」としている。一方、船舶の航行状況や現在位置の情報を提供するサイト「マリン・トラフィック」によると、「サビーズ」は上記報道の時間帯、紅海上で停止していた。
―米国海軍協会(USNI)は、イラン船「サビーズ」について、「商船登録しているが、イラン革命防衛隊のもとで活動している」と指摘。「おそらく、紅海域での情報収集活動、イランの部隊やイエメンのホウシー派への支援提供、シリアへの原油供給に従事していた」と指摘している。
―米国防総省報道官はアルジャジーラの取材に、イラン船に対する攻撃への関与を否定した。「攻撃があったとの情報は報道で把握している」「米のどの部隊も攻撃に加わっておらず、報道以上の情報は有していない」と述べた。
―米紙NYタイムズは、米政府高官の話として、「イスラエル人たちは(上記)攻撃について、以前のイランによるイスラエル船への攻撃に対する報復だったと述べている」と報じた。
ワシントン特派員:米はイラン核合意再生に向け、イランとの共通の土台形成に取り組んでいる最中。米国防総省はその立場に沿って、紅海でのイラン船への攻撃について、異例の迅速さで関与を否定した。米はウィーンでイランとの「交渉第一ラウンド」を終えたところで、「これから難しい交渉になる」(国務省報道官)としつつ、イランとの対話に意欲を示している。こうした中でエスカレーションが起きれば、交渉の妨げとなるためだ。
―イラン核合意当事国の会合がウィーンで開かれ、米も間接的に参加した。各国は、「米の対イラン制裁解除」「イランによる核合意の義務履行」に向けた明確なビジョン策定のため、それぞれの課題を扱う専門家委員会を設置することで合意した。当事国の代表は、今月9日に再び協議を行う。会合を主催したEUの代表は「前向きで建設的な会合だった。全体に、共同外交プロセスのための一体感と意欲が感じられる」と述べた。
―イラン外務省は、ウィーンでの会合後、「制裁解除と核合意の技術的措置について、それぞれ専門家会合を開くことになった」と発表。アラグチ外務次官は「建設的な協議だった。道筋は正しい」としつつ、「結果について語るのは早い」と述べた。また「制裁が解除されてはじめて、他の詳細を協議できる」「(制裁解除や、それに応じたイランの核合意違反是正を)段階的に行うとの提案は、真剣な案ではなく、関心を持っていない」と改めて強調した。「ウラン濃縮20%の停止に対して、資産10億ドルの凍結を解除する」との情報については、「何の合意もなされていない」とした。
―プライス米国務省報道官は、ウィーンでのイランとの間接交渉について「歓迎される、建設的な一歩だ」とし、「今協議では、イランを核合意順守に戻すためのより良い行程について米代表団が理解できることを望む」と述べた。また「今協議は正しい一歩だが、直ちに状況を打開できるとは期待していない」とした。
―マレー米イラン特使は、ウィーンでの協議について「米とイランが核合意に戻るための、長く困難な道のりの最初の一歩だ」「合意復帰に向けて双方がとるべき措置を特定するための議論を行う」と述べた。また「自国の核活動を変える前に、まず制裁を解除せよとのイランの立場は、核合意復帰に真剣でないことを示すものだ」と語った。
国際危機グループ、イラン・プロジェクト責任者、アリー・バエズ氏の話:(イラン核合意をめぐるウィーンでの交渉中に紅海でイラン船に対する攻撃が起きた意味を問われて)最近のイスラエル・イラン間の作戦パターンのように見える。両国の一連の攻撃の応酬の一部かもしれない。今回の攻撃がウィーンでの交渉初日に起きたことは、交渉を破壊する試みであることを示す可能性がある。また、イランの報復を誘うことで外交の道筋を損なうための、イスラエルの挑発行為という可能性もある。
核合意をめぐる協議の今後については、自分は慎重ながらも楽観視している。全ての当事国が核合意の再生に努め、少なくとも現段階では、現行の核合意以上のものを求めていないからだ。米とイランの双方が同じ目的への到達を目指し、政治意思を有しているなら、現実的対応と障害の克服が可能だろう。核合意がなくても、米とイランは結局、制裁や核開発の問題に対処しなければならないが、核合意の代案は双方にとって、より魅力の低いものだ。
一方、米とイランの国内や、地域における米の同盟国の一部に、核合意再生への反対派がおり、交渉を破壊しようと試みるだろう。米とイラン双方の期待値に開きがあることも、課題だ。イラン側は全ての制裁解除に期待するが、米にはそれはできない。制裁の一部は核合意に沿ったものではないからだ。例えば、イランには対米サイバー攻撃を実施した多くの組織・施設がある。また米側には、例えイランの遠心分離器を解体しても、イランがこの間に核開発を進展させて得た知見までは奪えない、という難問がある。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―ホウシー派は6日、サウジアラビア南部ハミース・ムシャイトのキング・ハーリド空軍基地を攻撃したと発表した。一方、同じ時間帯に、サウジ・UAE同盟軍は、サウジを標的としてホウシー派が放った爆装ドローンを撃墜したと発表。
○ エジプト情勢
―コンゴ民主共和国で開かれたルネッサンス・ダムをめぐるAU主導の協議は6日、予定を1日延長したが、進展なく終了。エチオピア、エジプト、スーダンの3か国は合意に失敗した。コンゴは1か月後の交渉再開を呼びかけたが、再開は未定。エジプト外務省は「我が国が提案し、スーダンが支持した交渉を前に進めるための代案を、エチオピアは尽く拒否した。同国はスーダンによる4者(AUに加え、国連、米、EUの)仲介案も拒んだ」と声明。一方、エチオピアの協議出席者は「他の2国が議事日程外の提案を行ったために、交渉が躓いた」「スーダンは2回目のダム貯水の延期と、交渉オブザーバーの水準引き上げを提案した」と述べた。
―エチオピア外務省は、「我が国のナイル川の水使用の正当な権利を、現在と将来にわたり奪う合意には参加できない」「原則宣言に基づき、予定通りダムの貯水を開始する」と表明。また「エジプト、スーダンとの貯水をめぐる情報とデータの交換には便宜をはかる」としつつ、「両国は、AUによる仲介を台無しにしようと試みた」と非難。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―ヨルダン検察は、(政府が「国家の不安定化を計画した」等と非難した)ハムザ元皇太子や他の人物についての報道を、全てのTV、ラジオ、SNSメディアに禁じると発表した。「この問題に関わる一切の写真、映像を広めることを禁じ、違反者は刑事責任を問われる」としている。
―サウジアラビアのTVは、「サルマン国王が、ヨルダンとその利益を守るための全ての措置を支持すると強調した」と報じた。一方、サファディ・ヨルダン外相は、アンマンでファイサル・サウジ外相と会談した。サウジ外相は国王の書簡を携えてヨルダンを訪問し、1日滞在の後、帰国した。
―米紙ワシントン・ポストは、サウジ外相がヨルダン訪問時、(「治安上の理由」で拘束された)バーセム・アワダッラー元王宮府長官の釈放を求めたと報じた。サウジ外務省はこれを否定した。
―米紙NYタイムズは、「ハムザ王子、王子の事務所長ヤーセル・マジャーリー氏、同氏の従兄弟サミール・マジャーリー氏の居場所が6日朝の時点で不明」と報じた。
エリコの目
―6日、UAEのバラカ原子力発電所が操業を開始。UAE指導部(ムハンマド・アブダビ皇太子、ムハンマド・ドバイ首長)は相次いで「アラブ初の原子力平和利用、歴史的偉業」などとツイートした。(ツイッター、ラアイ・アルヨウム紙)
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(ヨルダン)
ヨルダンでは、感染拡大と後退、ロックダウンと解除を繰り返しており、最近のピークであった3月17日の新規感染者数9,535人から5日は6,537人、新規死者数は82人と若干後退したものの、依然危険な水準にある。
累積感染者数は632,907(61,568)人、累積死者数7,201(701)人。この人口百万人当たり感染者数は、イラン、イラクの約3倍、英国や米国と同水準である。
―イランのコロナ対策委員会は、国産ワクチンの「バラカト」が5月に量産体制に入り、6月にもその分配を開始できるとの見通しを明らかにした。事態は急を要しているため、治験の第二段階と第三段階を合併させる、としている。(アルマヤーディーン)
―5日、イラン保健相は同国がこれまでで最も大きな新型コロナ流行の危機に直面していると述べた。しかし、イランはこれに対抗できるだろう、としている。5日、新規感染者数は13,890人、新規死者数は172人を記録した。(アルマヤーディーン)
<特記事項・気付きの点>
―特になし