アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
11日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イラン、ウラン濃縮を加速する高度な遠心分離機を稼働。米は、全制裁の解除にこだわるイランの姿勢を批判
■ エチオピア、ルネッサンス・ダムの第2段階の貯水に関するデータの共有を提案。スーダンとエジプトは、「この提案への合意は貯水を認めることに等しい」として拒否
■ 露、大西洋に軍艦を派遣。ウクライナ大統領はトルコを訪問し、「露の脅威に立ち向かう」と強調。トルコ大統領は、緊張の抑制を呼びかけ
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ロウハニ・イラン大統領は、「ナタンツの核施設で新たに遠心分離機IR-6(164機)からなるカスケードを立ち上げ、同機へのウラン・ガスの注入を開始する」と発表し、「イランはNPTを順守しており、イランの核開発計画は平和的なものだ」と述べた。
―米国務省のある高官は、(ウィーンでの核合意をめぐる協議の後)「イランがすべての制裁解除の必要性に固執していることが事態を行き詰まらせることになるだろう」「核問題をめぐるイランの真剣さを示す最初の兆しは見られたが、十分ではない」と述べた。
元駐イラン英大使・元英外務省中東部長のウィリアム・パティ氏(在ロンドン)の話:(ウィーン協議で前向きな成果があったとされる中でイランが核開発計画の完了に固執していることについて問われ)これは、より強い立場で交渉するためのイランの取り組みの一環だ。イランの要求は、米による対イラン制裁のすべての解除であり、それまでは(核合意の順守に関して)何も行わないとしている。これは米側には受け入れられないものだ。イランが包括的共同行動計画への違反を続けているのは、交渉上の立場の一部だ。イランは交渉を放棄したのではなく、交渉における姿勢を硬化させているのだ。米がこうした振る舞いを認めるとは思われない。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―シレシ・エチオピア水・灌漑・エネルギー相は、スーダンとエジプトに「ルネッサンス・ダム貯水の第2段階の開始前に、情報(データ)交換のため、両国のダム・オペレーター(の代表者)を任命するよう」呼びかけ、「重要な実際的段取りで協力する必要がある」と強調した。また、「近くアディスアベバで、ダム調整者・オペレーターらの初会合を開くことを強く望んでいる」と述べた。
―エジプト水資源・灌漑省は、(上記)エチオピアの提案を拒否し、「これに合意することは、ルネッサンス・ダム貯水の第2段階を認めるに等しい」と指摘した。また「この提案には、過去数年間の交渉プロセスの事実を反映しない多くの誤りや主張が含まれている」とし、「エジプトは、下流の2か国に現状を押し付けようとするエチオピアの取り組みの政治的・技術的隠れ蓑となるような形の相互理解に至ることは受け入れない」と強調。
―マハディ・スーダン外相は、フェイスブック上で「エチオピアが、スーダンとエジプトに7、8の両月のルネッサンス・ダム貯水の第2段階の詳細を知らせると申し出て来た」と述べた上で、「法的拘束力を有する合意なしでのいかなる情報の共有も、エチオピアからの贈り物や慈善行為のようなものであり、いつ停止されるか分からない」と強調した。
―スーダン灌漑・水資源省は、「エチオピアの(上記)提案には、これまでの合意事項への対応における疑わしい折衷主義が含まれており、拘束力のある包括的合意に至るための真剣な取り組みを避けようとしている」との見方を示し、「合意なしに情報交換のための代表者を任命することは、ルネッサンス・ダムをめぐる交渉の(要求の)上限を下げることを意味する」と指摘した。
―スーダン灌漑・水資源省は、「エチオピアによるルネッサンス・ダムの第2段階貯水の開始に備えて、(ハルツーム南方の)白ナイル川にあるジャバル・アウリヤーア・ダムで約6億立方メートルの貯水を開始する」と発表。
―スーダン統治評議会議長の広報担当顧問は、「国際社会が介入しなければ、水戦争がより酷い形で勃発するだろう」「敵を作り出す原因で水の剥奪より強い原因はない」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―米NYタイムズ紙は、ヨルダン政府当局者の話として「2004年に(アブドラ国王が)ハムザ王子から皇太子の地位を剥奪すると決定したことが、フセイン前国王のお気に入りだった同王子を落胆させた」「同王子はある時、アブドラ国王に自分を軍最高司令官に任命するよう求めたが、これを拒否された」と伝えた。また、同紙は「ハムザ王子とアワダッラー元王宮府長官は、不満を持つ諸部族と共謀し、混乱を煽ろうとした」「同元長官は、国外の反体制派に指示を出していたほか、ハムザ王子にツイートの仕方をアドバイスしていた」と報道。
―露艦隊司令部は、「露海軍の艦艇4隻がシリアのタルトゥースにある露軍基地を出て、大西洋に向かった」と発表した。行き先や任務については明らかにしていない。
―エルドアン・トルコ大統領は、イスタンブールでゼレンスキー・ウクライナ大統領と会談し、「ウクライナ東部の危機の解決は同国の領土の一体性維持と国際法に基づく平和的なものであるべきだと信じている」と述べ、「同危機解決に必要なあらゆる支援を提供する用意がある」と表明した。ウクライナ大統領は、「危機解決方法について、ウクライナとトルコは見解を共有している」と発言。
―スーダン・西ダルフール州の州都ジェネイナで3日に始まった民族間の暴力(衝突)による死者が144人、負傷者が232人に上った。スーダン安全保障国防評議会は、同州の治安維持のために、正規軍と他の和平プロセス参加勢力からなる合同部隊の結成を決定。
エリコの目
―米・イラク戦略対話の第3回会合(外相会合)がオンラインで実施され、イラク駐留の米軍の最後の戦闘部隊を撤退させることに米国が同意した。具体的な撤退日程は、今後協議される。共同声明の中で両国は「米国と同盟国軍の役割は、教育訓練とコンサルティングに変化した。従って、依然イラクに駐留する戦闘部隊は再展開される」ことを確認した。(8日、アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(チュニジア)
累計新規感染者数:268,837人(22,565人)、累積死者数:9,179人(770人)(カッコ内は人口百万人あたり)
マグレブ3国の中では最も感染が拡大している。人口百万人あたりの死者数は、日本の約10倍、フランスの約半分である。9日の新規感染者数は2,010人、死者は43人であった。医療関係者によれば、重篤者用ICUの稼働が限界に近付いている。
https://www.worldometers.info/coronavirus/country/tunisia/
チュニジア政府は7日、新型コロナ対策措置の強化を発表した。期間は今月末までで、全国で一切の集会が禁止されるほか、夜間外出禁止を従来の7時間から10時間に延長することなどが含まれる。検疫も強化され、72時間以内に検査した陰性証明がなければチュニジア行きの航空機への搭乗ができない他、全ての入国者に到着後5日間の検疫滞在が課される。(フランス24/アラビア語)
https://tinyurl.com/2d546wtc
10日、ムシーシ首相は、国民の間に強い拒否感が広がっていることに鑑み、夜間外出禁止の開始時間を夜7時から10時に遅らせることを決定した。その一方で、感染状況が悪化していることへの危機感を表明、マスク着用、社会的距離の確保、飲食店における予防措置等が守られていないとして、国民の意識向上を呼び掛けた。(アルアラビー・アルジャディード)
<特記事項・気付きの点>
―配信開始より10日ほどが過ぎました。毎日お読みいただき、ありがとうございます。ぜひ、ご感想やご要望をお聞かせ下さい。私達は、「モニタリング」の再事業化を目指しております。この面でのご意見も頂戴できれば幸いです。(編集部)
メール宛先:admin@erico.jp
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大変興味深く読ませて頂いております。イランの近隣諸国への影響力が強まる中で米が撤退し、核開発もなし崩しに続くとなると、更なる不安定化は不可避ですね。
ご愛読ありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。エリコの目でご紹介した記事は、米国の戦略上のプライオリティは中国であることが兵力再展開の理由であるとしています。中東も不安ですが、もっと不安なのは実は極東。中東を見ることでわれわれの身の回りのこともわかってきます。