アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
12日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イラン、「ナタンツの核施設がテロ攻撃を受けた」と発表。イスラエルメディアは、攻撃の裏にモサドがいた可能性を報道。ネタニヤフ首相は「イランとの戦いは壮大な任務だ」と発言
■ 米国防長官、テルアビブを訪問して「米はイスラエルの軍事的優位性保持と同国への保護の義務を果たす」と確認。イスラエル国防相は、イランを「世界的な戦略上の脅威」と評す
■ルネッサンスダムをめぐる交渉のエジプト代表団メンバー、「ダムの2度目の貯水に関するデータ共有へのエチオピアの提案は、拘束力のある合意がなければ受け入れられない」とアルジャジーラに告げる。スーダンは、「エチオピアとの戦争は望まないが、これを余儀なくされたらスーダンが勝つ」と表明
■露、ウクライナが南東部での状況打開に向けて武力を行使する可能性への懸念を表す。米は露のウクライナに対する攻撃を警戒
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラン原子力庁のサレヒ長官は、「ナタンツの核施設で起こった事件は、核テロリズムの攻撃であり、IAEAや国際社会はこれに対応すべきだ」と述べ、「イランには、攻撃の実行犯とこれを指示した者らに報復する権利がある」と警告した。また、「この攻撃は、制裁解除に向けたイランとの核合意をめぐる交渉に反対する勢力の失敗を示すもの」との見方を示した。同国の原子力庁はこれに先立ち、「ナタンツの核施設で、電気系統に部分的な不具合が発生した」と発表していた。
―イスラエルメディアは情報機関関係者らの話として、「モサドがイランのナタンツの核施設に対してサイバー攻撃を行った」と報じた。
―ネタニヤフ・イスラエル首相は、ナタンツの核施設へのサイバー攻撃発生後初の発言として、軍参謀本部で行われた独立記念日関連の祝賀行事の場で、「イランとその手先の勢力、及び同国の核開発計画との戦いは壮大な任務だ」「イスラエルは世界的な強国となった」「現在の状況が将来も続くとは限らない」と述べた。
元英IAEA大使のピーター・ジェンキンス氏(バース):ナタンツの核施設を攻撃したのがイスラエルだということは、十分考えられる。同国のメディアもこれを示唆している。イスラエルの情報機関は国内メディアと通じており、前者がそうすることに利益があると見た時、後者に情報を流すのだ。今回の攻撃は、米の利益にはならない。攻撃の結果、イランがウィーンでの交渉でより柔軟な姿勢を見せると米が計算し、イスラエルにゴーサインを出したとは考えにくい。イランにとって、核合意の再生は大きな利益となるから、イスラエルの挑発に乗って同合意をめぐる交渉を放棄し、米から離れることはありえない。イランは10日、高性能の遠心分離機(IR-6)からなるカスケードへの六フッ化ウランガスの注入等を開始した。ナタンツの核施設への攻撃の主な目的は、おそらくこれらの新たな遠心分離機に損失を与えることだったのだろう。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―サウジアラビアのメディアは、「サウジ率いる同盟軍は、ホウシー派が同国南部のジャーザーンに向けて発射した弾道ミサイルを迎撃し、破壊した。また、同派がサウジに向けて飛ばせた爆発物搭載の無人機6機を迎撃・破壊した」と報じた。
○ エジプト情勢
―シュクリー外相は、「ルネッサンスダムに関する合意を成立させ、エチオピアの動きを止めるための努力は続いている」と述べ、「ダムが原因で下流の2国(エジプトとスーダン)に被害が生じたら、必要な措置を講じる」と警告した。
―ルネッサンスダムをめぐる交渉のエジプト代表団メンバーのアラー・ザワーヒリー氏は、アルジャジーラのインタビューで「エジプトは、ダムの2度目の貯水に関する情報交換のための機構を設置するというエチオピアの提案を拒否した。エチオピアの提案は、それ自体が一方的な行為だ」「エジプトは、紛争解決システムを含めた拘束力のある合意を望んでいる」と述べた。また、「エジプトが懸念しているのは、ダムに貯められたナイル川の水を乾期に十分に得られるかどうかということだ」と説明した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―オースティン米国防長官は、イスラエルを訪問して高官らと会談し、同国への最新の武器の供給、イランの核開発計画やシリアでの軍事的プレゼンス等、様々な課題をめぐって協議した。ガンツ国防相との会談では、「米はイスラエルの軍事的優位性を保持し、同国を保護する」と確認した。同国防相は、イランを「世界にとっての戦略上の脅威」と評した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ブリンケン米国務長官は、「バイデン大統領は、アフガニスタンでの紛争終結と駐留米軍の帰国にコミットしている」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダン統治評議会メンバーのヤーセル・アター氏は、メロウェで兵士らを前に演説し、「エチオピアは、スーダンが南部での内戦で手一杯だった状況を利用して、スーダンの国土を占領した」「スーダンは同様の機会を捉えて、国土を奪還する」と述べた。エチオピアがティグレ州での危機のため、余裕がない状況であることを示唆する発言。同氏はまた、「スーダンはエチオピアとの戦争を望まないが、これを余儀なくされたら勝つだろう。スーダンの側が正しいからだ」とも述べた。
―サウジ、イラク(スンナ派)、カタール、エジプト、チュニジア、レバノン等は、11日に新月が肉眼で観測できなかったため、13日がラマダーン月(イスラム教の断食月)の初日となると発表した。
エリコの目
―2017年に史上最高額の4億5千万ドルで競り落とされた名画「サルバトール・ムンディ」について、来週フランスのTVで放送される予定のドキュメンタリーの内容を雑誌フォーブスが伝えている。ルーブル美術館の専門家3人は「絵はダビンチ直接の筆によるものではなく、ダビンチ工房の職人らによって描かれたもの」との鑑定結果を出した。しかし、サウジアラビアのムハンマド皇太子はこの事実を公表しないよう美術館側に圧力をかけ、最終的にはマクロン大統領がサウジ側の要求を拒否したため、両国間のちょっとした外交問題になった、由。(アラビー21)
フォーブス(英語)の記事は
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(アルジェリア)
累計新規感染者数:118,251人(2,660人)、累積死者数:3,123人(70人)(カッコ内は人口百万人あたり)
マグレブ3国(チュニジア、モロッコ、アルジェリアの順)で百万人あたりの数値を比較すると、累積新規感染者数は(22,565/13,449/2,660)、累積死者数は(770/239/70)と、いずれもかなり小さい。この数値が、感染状況の実態を示していないのか、それとも、昨年3月から長期間実施されたロックダウン等の政府の対策が有効であったことを示すものか判断材料に乏しい。
その上で感染動向をみると、昨年12月に1日あたり1,000人程度の第2波感染拡大があったものの、その後は低下傾向で現在は1日あたり100人程度。10日の数値は新規感染者127人、死亡者3人となっている。
―イランは新型コロナの感染が広がり第4波の様相を見せているところ、10日より10日間のロックダウンを発表した。全31州中23州で実施される。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし