2021年4月15日 (No.21015)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

15日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ バイデン大統領、「9月11日までにアフガン駐留米軍を完全撤退させる」と発表。NATOも同様の方向性を発表。アフガン大統領は撤退の決定に理解を示す。タリバンはドーハ合意を順守しない者に警告を発する

■ アルビール空港を狙った攻撃発生。イラクのクルド地方内務省は「爆発物を搭載した無人機が有志連合軍の拠点を標的とした」と述べる

■ 欧米がイランのウラン濃縮活動の加速を懸念。IAEAは同活動を確認し、サウジは「合意に至るよう」呼びかける。イラン最高指導者は「消耗戦的な交渉」を警告

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―国際原子力機関(IAEA)は14日、「イランがナタンズの核施設でウラン濃縮度を60%に引き上げる準備をほぼ完了した」と確認し、「イランは、ナタンズの核施設に遠心分離機1024機を追加設置する意向を示した」と述べた。また、「(IAEAの)査察官がナタンズ核施設を訪問した」「今後もイランでの検証・監視活動を継続し、核計画に関する動向を(IAEA理事会に)報告する」と述べたが、先日の攻撃によるナタンズ核施設の被害の規模については言及せず。

―仏英独は共同声明で、「(ウラン濃縮度引き上げに関する)イランの決定は危険な展開であり、(核兵器の製造が可能となる90%に近づくため)核兵器の製造に向けた重大な一歩となる」と述べ、「イランにはウラン濃縮度を(60%まで)引き上げることを必要とする真の市民的な需要はない」と指摘した。

―イランのウラン濃縮度引き上げについて、米政権は「挑発的な行為だ」と評し、「核合意をめぐるイランとの対話は15日にウィーンで再開される」と述べた。サキ米大統領府報道官は、「米は、イランとの対話は長い道のりになるが、前向きな一歩であることを理解している」と述べた。
一方で露のウリヤノフ在ウィーン国際機関常駐代表は、「イランが、とりわけ(米の復帰等も含めた核合意の再生に向けた取り組みが行われている)今、合意義務の更なる履行停止措置を講じることは残念だ」と述べた。

―ハメネイ・イラン最高指導者は「米の全ての提案が傲慢な要素を含んでおり、受け入れられない」と述べ、イランの(交渉)責任者らに対し「欧米諸国との交渉で消耗されぬよう」警告した。また、「欧州諸国は核問題に関するイランの権利を認めているが、一方で決定を下すための独立した意志を有していない」「約束を繰り返し破ってきた米を信頼していないため、まず全ての制裁が解除されるべきだ。我々はその後に義務を履行する」と述べた。

―ロウハニ・イラン大統領は、「ウラン濃縮度引き上げと、最新型遠心分離機の追加設置の決定は、ナタンズ核施設攻撃に対する報復だ」「攻撃は核テロであり、イランは『ユダヤ人の企て』に対する報復を躊躇しない」と述べた。

―サウジアラビア外務省は、「(ウラン濃縮度引き上げの)措置が平和利用に限定されると捉えることは出来ない」と述べ、国際社会に対し「イランとより強固且つ長期的な制限を含む合意に至るよう」促した。

―イラク国営通信によると、クルド地方のアルビール国際空港が14日夜に攻撃された。攻撃を受け、アルビールの米領事館は警報サイレンを鳴らした。同地方の内務省は、「爆発物を搭載した無人機による攻撃は、有志連合軍の拠点を標的とした」「攻撃により一部の建物に被害が生じた。人的被害はない」「無人機の発射地点の特定に向けた捜査を続けている」と述べた。

―バルザニ・クルド地方大統領は、「アルビール空港の攻撃を実行した者を処罰する」「攻撃は、治安及び有志連合との協力を弱体化させる卑劣な試みだ」と述べ、「イラク中央政府の正規軍に属しない武装集団は、クルド地方の境界から即座に撤退すべきだ」強調した。また、「中央政府の首相や議員らと会談し、違法な集団の処罰について確認した」と述べた。

―上記攻撃に先立ち、イラクの「サラーヤ・アウリヤー・アルダンム(血の守護者部隊)」を名乗る集団は、「モサドの拠点を攻撃し、人的・物的損害を与えた」と述べた。これについて、クルド地方首相広報局長はアルジャジーラのインタビューで、「クルド地方のモサド拠点が攻撃された」との情報を否定した。

―イラク北部ニナワ県の県都モスルで14日夜、トルコ軍部隊が駐留する同市北部のゼリカーン基地にロケット弾2発で攻撃された。ロケット弾は1発が基地内に、もう1発は基地の近くに着弾。こうした中、トルコ国防省は「イラク北部にあるトルコ軍のバアシーカ基地がロケット弾3発で攻撃され、トルコ軍兵士1人が死亡した」と発表した。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―特になし

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―バイデン米大統領は、「(同時多発テロ事件から20年となる今年の)9月11日までにアフガニスタン駐留米軍を完全撤退させる」と発表した。5月1日に段階的な撤退が開始される。また、バイデン大統領はタリバンに対し、「撤退中の米軍が攻撃されたら、全力で反撃する」と警告した。

―アフガン駐留米軍の完全撤退について、オースティン米国防長官は「撤退は難しいことだが、安全に完遂されると確信している」「アフガン治安部隊は現在良い状態にあり、アフガンの国民及び国境を守る能力を有している。我々は同部隊への支援を継続する。また、我々の安全を脅かすテロリストにとってアフガンが『安全な避難所』にならないように、テロ対策の強化に向けて同部隊及び同盟諸国と緊密に協力する」と述べた。

―ストルテンベルグNATO事務総長は、「米と足並みを揃えて、アフガン駐留部隊の撤退を5月1日までに開始する」「数か月内に完全撤退を完了する」と発表し、「タリバン側からの攻撃があれば、完全な形で反応する」と述べた。

―ガニ・アフガン大統領は(撤退に関する米の)正式発表に先立ち、「アフガン政府は米の決定を尊重する」「円滑な移行の確保に向け、アフガンはパートナーたちと協力する」と述べ、「アフガン軍は自国及び自国民を守ることができる」と確認した。

―(タリバンとの和平交渉を担う)アフガンの「国家和解高等評議会」 のアブドラ議長は、「タリバンはドーハでの政府代表団との会談や、主要課題をめぐる協議の継続を望んでいない」「米軍の撤退はタリバンの要求であり、(政府とタリバンの両代表団による)ドーハ合意に含まれる」と述べた。

―撤退の決定に対し、アフガン国会は米政権に「決定の見直し、もしくは(撤退を)情勢に鑑みて条件付きにするよう」求めた。バイデン大統領の発表に先立ち、ラフマーニー国会議長は「治安状況はアフガン全土で顕著に悪化している。和平の実現と、タリバンとの和解の前に米軍が撤退すれば、政府が崩壊し、内戦が勃発するだろう」と述べた。

―タリバンは、「ドーハ合意に基づき、外国部隊の撤退を目指す立場」を改めて強調し、「撤退の完了後に、懸案事項の解決が可能となる」と述べた。タリバン広報担当は、「合意に違反し、アフガン駐留外国部隊が期限内の撤退に失敗すれば、諸問題が深刻化する」「合意を順守しない者は、(外国部隊撤退の)失敗の責任を負う」と警告。

―露外務省報道官は、バイデン大統領がアフガン駐留米軍の撤退期限を(トランプ前政権が2020年2月にドーハでタリバンと結んだ和平合意が定めた4月末から)延長すると発表したことに懸念を示し、「この決定は、アフガン当事者間の交渉開始に向けた努力を妨害する情勢の激化に繋がる可能性がある」と述べた。
また、カブロフ露アフガン特使は、「米軍の撤退期限延長は明らかなドーハ合意違反だ」「米は合意を順守すべきだ」と述べた。

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―ロウハニ・イラン大統領はエルドアン大統領との電話会談で、「地域諸国がイスラエルに向けて扉を開けることは危険なことであり、拒否し対処すべきだ」「地域の安全と安定の確保には域内諸国の協力が必要だ」と述べ、「イラン・トルコの協力は、域内諸課題の解決に影響する」と確認した。一方でエルドアン大統領は、「トルコは両国間関係を強化する重要性を確認する」と述べた。

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

ーNYタイムズ紙によると、イスラエルの安全保障筋は「イスラエルはUAE沖におけるイスラエル船攻撃に報復する計画はない」と述べた。イランとの緊張緩和が狙いとみられる。イスラエル国内では、ネタニヤフ政権がイラン問題を自己の保身に利用していると批判が高まっている。(アルクドゥス・アルアラビー紙)

中東の新型コロナ動向

ー国別感染状況(バーレーン)
累計新規感染者数:158,789人(90,877人)、累積死者数:566人(324人)(カッコ内は人口百万人あたり)
13日の新規感染者数は1,060人、死者4人。新規感染者数の推移をみると明らかに第4波を経験中。これまで3回のピークは1日あたり1,000人を超えることはなかったが、3月28日に1,027人を記録して以降、1,000人を超える日が多く、過去最高を更新し続けている。感染者数の百万人比が9万人を超えているのは、少ない人口に比べて検査数が多いことを反映しているものの、その「感染密度」は世界トップクラスで米国と肩を並べる。より検査数の多いUAEと比較しても、感染者比率、死者比率ともに上回っている。

Bahrain COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Bahrain Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, tren...
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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