2021年4月17日 (No.21017)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

17日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■露、米への対抗措置で、米外交官の国外追放を決定。「関係正常化に向けた、静かで職業的な対話の用意がある」とも述べる

■イラン、核合意をめぐる協議がウィーンで続く中、ナタンズの施設で初めて濃縮度60%のウランを製造したと発表

■「売り家」から「住人がいる家」へ。イラクの人々はいかに助け合っているか?

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―サレヒ・イラン原子力庁長官は、ナタンズの核施設で濃縮度60%のウランが初めて得られたとし、「1時間あたり9gの濃縮ウランを製造している」「濃縮度60%のウランは、少量の製造としていく」と述べた。ウィーンで他の核合意当事国との協議が続く中での発言。

―EU高官は、濃縮度60%のウラン製造を始めたとのイランの発表に「非常に懸念している」とし、「ナタンズの施設への攻撃と、濃縮度60%のウラン製造開始は、いくらかウィーンでの協議の妨げとなっている」と述べた。ただ「協議の参加各国は、先週よりもさらに合意に近づいた」とも語った。

―サキ米大統領報道官は、イランによる「濃縮度60%のウラン製造開始」の発表を「挑発的な行動だ」と評した。また「イランの発表を深刻に捉えている」「ウィーンで進行中の米との間接協議へのイランの真剣さを疑わせる行動だ」と述べた。

―バイデン米大統領は、ワシントンでの菅首相との共同記者会見で、イランが米との間接協議に入ったことを評価しつつ、「協議の結果を判断するのはまだ早い」と述べた。また、イランによる濃縮度60%のウラン製造について「適切ではない。核合意違反だ」と語った。

―レバノンのヒズボラは、同国経済の完全崩壊に備え、配給カードの新規発行、医薬品の輸入、燃料備蓄の準備を急いでいる。配給カードは、ヒズボラに属さない多数の住民にも発行。家族の人数に応じ、国産やシリア、イラン製の砂糖や小麦粉等の食料を供給する。ヒズボラの影響力が強いベイルート南郊の共同組合店舗等で、市価より40%割安で購入できる。医薬品はシリアやイランから輸入。燃料はイランから輸入し、シリアにも備蓄場所を設ける計画という。経済危機下のレバノンでは類似の動きが他勢力にもあるが、規模はヒズボラが突出。

―イラク北部ニナワ県ガイヤーラ(モスル南方)で、ある家族が息子の治療費捻出に苦慮。自宅売却を決め、家の塀に「売り家」と書いたところ、これに気づいた付近の住民有志が寄付を募り、24時間で治療に十分な約8万米ドル分を集めた。家の売却は不要となり、住民たちは塀を「住人がいる家」と書き換えた。(SNSや地元メディアで大きく取り上げられた話題。アルジャジーラでも、家族や住民とスタジオを繋いで報道)

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―米国務省は、「レンダーキング米イエメン特使は、グリフィス国連イエメン特使と共に、オマーンの支援を得て、政治協議の再開に取り組んでいる」「米特使はUAEと独を訪問し、人道危機軽減と紛争終結に必要な措置を協議した」と発表した。具体的には①ホウシー派のマアリブ県での攻撃停止、②(ホデイダ県沖に係留中の)石油タンカー「サーフィル」の国連による検査と補修、③経済安定と人道危機の緩和に向けたイエメン政府の取組みへの支援につき話し合った由。

―ホウシー派のアブドッサラーム広報担当は、政治プロセス再開について、「いかなる和平の呼びかけも、封鎖の全面解除を含まなければ、我々は真剣なものとみなさない」「(サウジアラビアやUAEによる)敵対行為停止への真剣さは何ら見出せない」とツイート。

―サウジのメディアは、「イエメンのホウシー派がサウジ南部ジャーザーンに向けて発射した弾道ミサイルを、サウジ・UAE同盟軍が迎撃・破壊した」と報じた。

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―ムハンマド・カタール外相は、「米とNATOの部隊のアフガニスタン撤退の延期が表明され、アフガンの恒常的和平への到達は非常に難しくなった」と指摘。「アフガンの全当事者が和平プロセスを前進させるかは、定かではない」としつつ、「今後2週間で進展が実現するよう願う」と述べた。一方、米国防総省報道官は記者会見で「アフガン撤退の暫定計画には、少なくとも一部請負業者が含まれる」としつつ、想定される撤退規模は語らず。

―アトマル・アフガン外相はツイッターで、「ザリーフ・イラン外相と、アフガン和平問題について意見交換し、地域協力のため両国共同の取り組みや相互関係強化について議論した」「イランの和平への確固とした支持に感謝する」と述べた。

○ マグレブ情勢

―国連安保理の全15か国は、60人の停戦監視団のリビアへの派遣に同意。リビア新政府に、今年12月24日の大統領・議会選挙に向けた準備を呼びかけ、政府とハフタル元少将派からなる「5+5合同軍事委員会」に対して停戦監視の委任計画を詰めるよう求めた。また安保理は、国連の全加盟国に「全ての外国部隊・傭兵の撤退を含む停戦合意履行への支援」「対リビア武器禁輸の順守」を呼びかけた。これに先立ち今月7日、グテーレス事務総長は、治安やロジ面で国連が常駐する要件が整い次第、北部シルトに国際監視団を派遣することを提案していた。

リビアの政治アナリスト、ジブリール・ズウィ氏の話(在トリポリ):各国がこぞって年末の選挙実施を後押しする強い姿勢を示したことが、今回の安保理の決定の新味だ。ただ、外国部隊の即時撤退や停戦監視は、前線であるシルト諸地域やジョフラ南方、「石油の三日月地帯」周辺が露のワグナー社の部隊に占拠されているため、依然として、有効な実施は困難だ。ワグナー社の存在を疎ましく思い、外国部隊の撤退に積極的な米などによるより強い措置が必要だ。

―ショイグ露国防相は、モスクワでのドベイバ・リビア首相(国防相兼任)との会談で、「この訪露は、両国国防省の包括的協力の再開への第一歩だ」と述べ、軍事関係深化の重要性を強調。また「露の努力はリビアの政治的解決、軍事行為停止に貢献した」と述べた。一方、リビア首相は「露との関係で新たなページが開くことに期待する」「リビアでの新たな経済環境の創出に取り組んでおり、露はそのパートナーかつ強い経済的支援者となる」と述べた。

―エルドアン・トルコ大統領は、ストルテンベルグNATO事務総長との電話で、NATOにリビア新政府への支援提供を呼びかけた。また「防衛・治安分野の支援が必要だ。トルコはリビア側との協定に基づきこの方面の支援を行っている」と述べた。

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―ラブロフ露外相は、米による制裁への対抗措置として、米外交官10人の国外退去、米高官の入国禁止を決定したと述べた。ただ「駐モスクワ米大使には、自国政府との協議のために露を出国するよう提案した」とし、「露米首脳会談の提案については、今も検討している」と語った。

エリコの目

―リビアの安定のためには、国軍組織の統一が不可欠。ドベイバ首相はモスクワで「80%以上の国の機関が我が政府の下に統一が達成された。残りは軍組織だけだ」と発言。しかし、その達成のためには東西の信頼醸成が肝要。依然、あらゆるシナリオが展開する可能性を残している。(アルアラブ紙)

Just a moment...

中東の新型コロナ動向

―国別感染状況(スーダン)
公衆衛生に関する行政機構未整備のため、下記の数字があるものの全く信頼できない。
累計新規感染者数:31,700人(710人)、累積死者数:2,194人(49人)(カッコ内は人口百万人あたり)
Imperial College Londonが昨年12月1日に公表した報告によると、首都ハルツームにおける死亡例は2%程度しか報告されておらず、2020年11月20日の時点で16,000人以上が統計から漏れている恐れがある。第一波の後、高い免疫が観察されたが、ハルツームの人口の38%は既に感染済と研究者は見ている。
OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、スーダンの全学校の55%は衛生的な水道の設備を有していない。また、サンプル調査した学校のうち、石鹸で手洗い可能な設備を有していた学校は9.9%に過ぎなかった。

Sudan COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Sudan Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, trends...
Majority of COVID-19 deaths in Khartoum, Sudan are undetected | Imperial News | Imperial College London
The majority of COVID-19 Deaths in Khartoum, Sudan are not detected, according to a new report from Imperial's researchers.
Sudan Situation Report, 5 April 2021 [EN/AR] - Sudan
Situation Report in Arabic on Sudan and 4 other countries about Camp Coordination and Camp Management, Contributions, Epidemic, Flood and more; published on 5 A...
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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