2021年4月20日 (No.21020)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

20日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ウィーンで核合意当事諸国の外相級会合を数時間後に控え、「前向きな雰囲気である」との見解で一致。イランはステップ・バイ・ステップの原則を拒否

■米露、両国首脳会談を開催する可能性について協議。露は「米の対露措置にもかかわらず、関係正常化に向けた対話は続いている」と表明

■ウクライナ軍、露との国境付近及び黒海で演習を実施。欧米諸国は露に「挑発行為の停止とウクライナとの国境付近からの露軍の撤退」を求める

■サッカーの欧州「スーパー・リーグ」創設をめぐる危機。UEFAは今季チャンピオンズ・リーグの準決勝からレアル・マドリード、マンチェスター・シティ、チェルシーの追放を警告

■エチオピア、国連安保理に対してエジプトとスーダンにルネッサンス・ダムをめぐる3か国間協議への復帰を促すよう要請。一方、エジプト外相はアフリカ諸国を歴訪

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―ウィーンで、核合意関係諸国の外務次官級の会合が20日に開かれる予定。また、米によって解除可能な制裁、及びこれに対してイランが核合意を再び完全に履行することに関する技術的な問題について作業部会で協議される。

―ウィーンでの核合意をめぐる協議に関してハティーブザーデ・イラン外務省報道官は、「交渉は米の合意復帰のための技術的なもので、進展があった。交渉は正しい道筋になったが、最終的な合意には到達していない」「我々は今回、米が合意を完全に履行するかどうかを確認したい」「核合意に関して付帯合意や新たな合意はない」「米の代表団がウィーンに滞在していることは前向きな事であり、米が核合意復帰の要諦を理解していることの表れだ」「イランと米は直接的にも間接的にも交渉していない」と述べた。

―アラグチ・イラン外務次官(核問題交渉団長)は、「ウィーンでの暫定合意に関する交渉は一切なく、この件に関して報道されていることは正確ではない」「ウィーンで行われている交渉の内容や最終的な措置は、米による全面的な制裁解除に向けたものだ」「イランはステップ・バイ・ステップ(段階的な措置)の原則を拒否する」「イランの当局者はウィーンでの協議の詳細を精査した上で、最終的な決定を下すだろう」と述べた。

―独政府報道官は「ウィーンでの核合意当事諸国間の協議において、独は進展しているとの感触を得ており、前進への意志を感じている」と述べた。一方、ボレルEU上級代表は、「先週、協議(の内容)は全般的な事柄から、制裁解除や合意履行に関する問題などのより詳細なものに変わった」「協議は継続しており、一部で進展がある」「米が核合意に復帰し、これを完全に履行すれば、世界はより安全になるだろう。そのためウィーンへの欧州派遣団は、米・イラン両国派遣団の間の連絡を支援している」と述べた。

―ウリヤノフ在ウィーン国際機関露代表部常駐代表は、「ウィーンでの核合意をめぐる協議が、起草の段階に入ったことに満足している」「協議から2週間が経つが実質的な解決には程遠い。しかし、協議は一般的な言説から、目標に向けた特定の措置をめぐる合意に向けたものに変わった」「米の制裁(解除)とイランの核合意の完全履行に関して、露米は有益な協議を行った」とツイートした。

―IAEAはイランの未申告の施設において検知したウランの痕跡について、同国との協議をウィーンで開始。IAEAは過去2年間に未申告の施設3か所でウランの痕跡を検知しており、これらの物質を調査してイランが核兵器の製造に転用していないか確認することを望んでいる。

―タミーム・カタール首長は19日、ドーハでディアブ・レバノン暫定首相と会談し、レバノンに対するカタールの継続的支援とレバノン国民への支持を表明。また、「レバノンでの安定確立のため、国益を優先し、速やかに政府を樹立するよう」レバノンの全当者に求めた。一方、ディアブ首相はレバノン大使館で会見し、「様々な混乱によって新政府の樹立が妨げられ続けている間に、レバノンは全面的な崩壊状態に達した」と述べ、アラブ諸国に対して「レバノンが経済状態を改善するあらゆる能力を使い果たした後、レバノンを脅かす危険を克服するための支援」を求めた。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―ロイターがバーレーンの活動家らの話として報じたところによると、同国の治安部隊は収監状況に抗議していた収監者らを殴打した。当局はこの行為を「暴動に対して、何度も警告した後に講じた治安措置」としている。ジャウ刑務所では、先月に新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、緊張が高まっている。当局は「感染拡大は収束した」としていた。収監者の家族は刑務所の外で小規模な抗議活動を行い、政治犯の解放と収監状況の改善を求めた。

○ エジプト情勢

―メコネン・エチオピア副首相兼外相は国連安保理の現議長に宛てた書簡の中で、「ルネッサンス・ダムをめぐる協議に戻り、AUが主導する路線を順守すべく、エジプトとスーダンを促すよう」要請し、「この路線は、アフリカの問題はアフリカ諸国が解決策を見出すとの精神の下、相補の原則に基づいた安保理による完全な支持を得ている」と述べた。また、「エジプトとスーダンは善意を以て交渉しなかった」「両国は双方に有益な成果に達するために必要な譲歩をする準備ができていなかった」「両国は、エチオピアに不必要な圧力をかけるべく、交渉の失敗と問題の国際化を選択した」と非難した。

―シュクリ・エジプト外相はアフリカ諸国歴訪をケニアから開始し、シーシー大統領の書簡をケニヤッタ・ケニア大統領に手交した。エジプト外務省によると、書簡には、今月初頭に行われたルネッサンス・ダムをめぐるキンシャサでの会合の成果に基づいた交渉に関するエジプトの立場について盛り込まれている。その後、シュクリ外相はコモロの首都モロニに移動し、ドゥルカマル同国外相と会談した。

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―特になし

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―ウクライナの海軍は、「黒海での1週間に亘るルーマニアとの海上軍事演習を終了した」と発表。この演習は戦艦との接戦を想定。同国国防省は「海軍は夏期に黒海北西部で実施予定の同様の演習にも参加する予定だ」と明らかにした。一方、同国軍はドンバスの戦線で、露の攻撃を阻止するための部隊の準備状況を確認し、兵士のパフォーマンスを向上させるため、実弾等を使用して演習を継続。

―ウクライナ軍は、「親露派武装集団が同軍の防衛拠点に向けて発砲し、兵士1人が死亡、1人が負傷した」と発表。また、ドンバスの複数の村で、分離独立派が対戦車砲や軽・重機関銃を使用した5回の停戦違反が確認された。

―ボレルEU上級代表は露に対し、「ウクライナとの国境から部隊を撤退するよう」要請し、「EUは現在、露に制裁を科すつもりはないが、この立場は変わる可能性がある」と述べた。

―カービー米国防総省報道官は、「露によるウクライナとの国境付近での更なる(部隊の)集結を深刻な懸念を以て注視している」「露はその意図や地域で計画していることを明らかにすべきだ」と述べ、「地域での挑発的な行為をやめるよう」求めた。

―クレバ・ウクライナ外相はアルジャジーラのインタビューの中で、露の様々な経済分野に対して制裁を科す重要性について強調し、「これにより、露はウクライナを攻撃する前に再考せざるを得なくなるだろう」「集団的制裁は、露のエスカレートを阻止する手段である」と述べた。

―米大統領府によると、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はパトルシェフ露安全保障会議書記と両国大統領による首脳会談の開催の可能性について(電話で)協議し、協議を継続することで合意した。また、両者は両国間関係や地域・国際情勢についても協議した。パトルシェフ氏はサリバン氏に米や同盟諸国による露への内政干渉を拒否する旨を伝え、「米は非難の根拠となる証拠を示さず、露に制裁を科した」と述べた。

―露大統領府によると、プーチン大統領は、バイデン米大統領が今月22・23日に開催を呼びかけた気候変動サミットにビデオを通じて参加する予定。

エリコの目

―サウジアラビア政府高官は、同国がイランと直接対話を行ったとの報道を否定した。しかし、湾岸の消息筋はサウジとイランの政府関係者が両国間の関係改善に向けた話し合いを行ったことをイラン側が漏出させたのは、域内各国がイランの外交政策の前に屈したことを印象付ける狙いがあると指摘。(アルアラブ紙)

Just a moment...

―サウジアラビアとイランがバグダッドで「秘密裡に」協議をしたことは確認されつつあるというのに、サウジはなぜ頑固に否定するのか?対話への転換は、イエメンでの戦争を始めて、アラブ・イスラム世界で陰りを見せている同国の政治的立場を真剣に見直そうとしているのではないか?(アブドル・バーリー・アトワーン。論説見出し)

中東の新型コロナ動向

―国別感染状況(トルコ)
累計新規感染者数:4,268,447人(50,181人)、累積死者数:35,926人(422人)(カッコ内は人口百万人あたり)
月初にトルコを取り上げたときの1日当たり新規感染者数は4万人弱で、それでも大変な数であったが、16日には62,606人と過去最高を更新した。死者数も増加の一途で19日には341人となっている。しかし、累積死者数の人口比は、イタリア(1,941人)、米国(1,747人)等と比べるとまだ4分の1、5分の1の水準に留まっているので、ここしばらくは更に拡大するのではないか。

Turkey COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Turkey Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, trend...

トルコでは1月中旬より中国製ワクチン(シノヴァック)の接種を開始、2月末まで感染は減少傾向にあったが、3月に感染予防措置を緩和した後、急激な増加を経験している。(DWアラビア語)

<特記事項・気付きの点>

―ご愛読ありがとうございます。「中東の新型コロナ動向」では、18か国とパレスチナの状況を日替わりで一巡し、2周目に入りました。中東と一口に言っても多様性に富んだ地域であることが実感されたのではないでしょうか。最新の情報を追う上で数字は重要ですが、2周目は、各国の対策やワクチン事情についても、可能な限り探って行きたいと思います。ご感想をお寄せください。(J)
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