アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
22日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 米国務省、「対イラン制裁解除を通じて核合意に復帰する用意」を表明。米がウィーンの協議で制裁解除を示唆したとの報道も。イラン大統領は「米の真剣さ」に言及しつつ、「具体的な行動」を求める
■ ルネッサンス・ダムをめぐり、エチオピアはスーダンの提案を拒否し、「交渉はAUを通じたものに限られる」と強調。スーダンは、「エチオピアとのダム・国境の両課題で、我が国は平和的解決を選んだ」と声明
■ チャドの各党、死去した大統領の息子を後継に据えたことを「クーデター」と評し、「対話を通じた市民的な移行期」を要求
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―プライス米国務省報道官は、「米はイラン核合意への復帰に必要な措置を講じる用意がある。それには対イラン制裁の解除も含まれる」と述べた。また、ウィーンでの核合意をめぐる協議について「進展している」と語った。
―ロウハニ・イラン大統領は、「核合意履行の第1歩は米による全ての制裁の解除だ」と述べた。また、「一部の課題で米側の真剣さに接したが、別の課題での米の姿勢には矛盾がある」と語った。「真剣さ」とは、米の「制裁解除の用意」を指したものとみられる。
―米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、消息筋の話としてイラン核合意をめぐるウィーンでの協議について、「米が対イラン制裁の軽減計画を示唆したことで、進展した」と報じた。この筋によれば、「米はイランの産業分野への制裁を解除する用意があるが、革命防衛隊のテロ組織指定を解除する意向は示していない」「イランの革命防衛隊と最高指導者事務所に対する制裁や、米イラン双方の国内政治の複雑さが、交渉を妨げている」という。
―米の政治ニュース・サイト「ポリティコ」は、「核合意をめぐる交渉は加速している」とし、「1~2度の追加協議のラウンドを行うことで、最終合意に達する可能性がある」と報じた。
―イラン・韓国商工会議所筋は、「韓国が3千万ドルのイラン資産の凍結を解除した」「イランはこれを新型コロナウイルスのワクチン購入費に充てた」と明らかにした。3千万ドルは、在韓国のイラン凍結資産70億ドルの一部。これに先立ちイランは、拿捕した韓国籍のタンカーを解放していた。
―IAEAは、「イランがナタンズの地下施設に、ウラン濃縮に用いる高性能の遠心分離器を追加設置した。今後の更なる設置も計画されている」と報告。「IR2m型の遠心分離機1044台で構成するカスケード6組と、IR4型348台からなるカスケード2組がそれぞれ設置され、その一部が稼働しているのを確認した」という。
オーストラリア国立大のアラム・サーレハ教授(イラン、中東研究)話:米イラン両国は、核合意復帰をめぐる協議で課題の一般的段階では合意した。だが今後、詳細に立ち入るば、より難しい問題に直面する。それは特に、核問題に関わる対イラン制裁と、「テロ」「弾道ミサイル」「人権問題」「サイバー攻撃」に関する制裁を区別する作業だ。「テロ」関連制裁には、トランプ前政権によって「核」関連制裁から「テロ」名義に切り替えられたものがあり、これが米の核合意復帰の妨げとなっている。
米は現状、「イスラエルの懸念」は脇に置いてウィーンでの協議にあたっている。ナタンズの核施設への攻撃は、ウィーンでの交渉に悪影響を及ぼすとともに、「核施設が攻撃されている時に、どうして我々が欧米を信用できるのか」というイラン外交官の主張を可能にし、イランの立場と要求を強める結果をもたらした。イランは「米がもはや中東で戦争できない」ことを良く認識し、ウラン濃縮活動によって米に核合意「即時復帰」を迫っている。
―イランとパキスタンの外相がテヘランで会談し、相互関係や地域の諸課題について協議。両国は「経済関係強化に向けた覚書」を締結した。国境地帯の6か所で合同市場を設置する、という。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメンのホウシー派は、マアリブ県で攻勢を強めている。政府側が「国内北部で最後の拠点」とする同県で支配地域を失う恐れがある。一方、レンダーキング米イエメン特使は「サウジアラビアとイエメン政府は全面停戦を望んでいる」とし、「ホウシー派に役割を認める意向が、存在する」と述べた。米特使は「マアリブでのホウシー派の攻撃は、和平への取り組みへの最大の脅威だ」としつつ、「イエメンでのイランの建設的な役割を歓迎するが、その兆候はまだみられない」と述べた。
―サウジのメディアは、「ホウシー派がサウジ南部ハミース・ムシャイトに向けて放った爆発物搭載ドローンを撃墜・破壊した」と報じた。一方、ホウシー派のメディアは、サウジ・UAE同盟軍がサアダ県キターフで4度の空爆を行ったと報道。
○ エジプト情勢
―ルネッサンス・ダムをめぐる交渉について、アビー・エチオピア首相は、「交渉を前進させる方法は、AUが呼びかける協議だ」「交渉が失敗したとの前提は正しくない。原則宣言に調印したという具体的成果がある」と述べた。これに先立ちスーダン首相はエジプト、エチオピアに3国首脳会議を呼びかけていた。一方、スーダン統治評議会のハーディ・イドリース委員は、「エチオピアとの間のダム、国境の両課題で、スーダンは平和的解決を選択した」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル軍筋によると、ディモナ原子炉に近いアブ・クレナト地区で警報が鳴ったのが確認された。「シリアから発射された地対空ミサイルが目標を逸れて着弾、爆発した結果だ」「着弾地点は核施設の近くではなく、施設に影響はない」としている。
―シリア国営通信は、「占領下ゴラン高原からのイスラエルの攻撃で、軍の4人が負傷、物的損害が生じた」「ダマスカス近郊が空爆された」と報じた。これについてイスラエルは、「シリアからの地対空ミサイル着弾への報復であり、シリアのミサイル発射台を攻撃した」としている。
(イスラエルへのミサイル着弾については、JST9時台以降、集中的に報道)
―イスラエル当局は、ラーマッラーのジャーナリスト、アラー・リマーウィ氏の自宅に押し入り、連行。氏は抗議のハンストを始めた。「パレスチナのジャーナリスト支援委員会」はこれを非難し、「リマーウィ氏と他25人のジャーナリストの解放を求める」「ジャーナリスト拘束は、イスラエルがその犯罪を報道する彼らの役割を認識しているが故の行動だ」と声明。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―リビア政府高官は、デビ大統領が死去したチャドの情勢が、自国に悪影響を及ぼすのを懸念。リビアのハフタル元少将派とチャドの反政府武装各派が結びつき、後者がリビア南部をチャド政府に対する攻撃の拠点としているため。リビアの大統領評議会は、チャドと接する南部国境の安全確保を指示。また代表議会は「国の安定と治安確保ため(政府とハフタル派による)5+5軍事委員会は、軍事機構の統一を急ぐ必要がある」と声明した。リビア南部は近年、チャドやスーダンの武装勢力、外国傭兵、過激組織が活動し、リビアと近隣国の治安上の脅威となっている。
関連レポート:チャドの反政府勢力が公開した映像では、彼らは装甲兵員輸送車「Panthera T-6」を保有。国連専門家の報告(2019年)では、UAEがこの車両を2016年にリビア・トブルクに輸送し、ハフタル派に提供したとされる。同報告によれば、ハフタル派を支援するチャド反体制派には「変革のための合意戦線(FACT)」「民主主義と発展のための勢力連合(UFDD)」「革命民主評議会(CDR)」「チャド行動党」「共和国救済戦線軍事司令評議会(CCMSR)」がある。これらのチャド各派は、チャド北部で政府軍と交戦している。
―リビアのタブ族の指導者、イーサ・アブドルマジド氏(「タブ会議」議長)は、チャド反政府組織がリビアに流入、ハフタル派を支援して戦う過程で、UAEの武器、車両、弾薬を入手し、ジュフラ基地で露のワグナー社の傭兵から訓練を受けたと指摘。「これらのチャド反政府各派は、ハフタル派の助けで、リビア・チャド間の開放された国境を何の監視もなく通過し、今回チャド北部に入った」と話した。また「リビア大統領評議会が、これらチャドの勢力やその支援国を名指ししないのは残念だ」と述べ、チャド反政府勢力が首都入りに失敗した場合、ハフタル派が彼らを再びリビア国内に引き込むことを助長する、との懸念を示した。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―チャド大統領の死亡に伴い設置された軍事評議会は、「評議会の役割は、安定の維持と18か月以内の選挙実施だ」と強調。これに対して反政府各党は、大統領の息子が後継とされたことを「クーデターだ」「チャドは王国ではなく、世襲は認めない」と非難。
エリコの目
ーマッケンジー米中央軍(中東方面軍)司令官は下院公聴会で証言し、米軍がアフガニスタン撤退後もアルカイダ等の過激主義組織の台頭を防ぐために中央アジア諸国に兵力を再展開させる交渉を行っていることを明らかにした。司令官によれば、「アフガニスタンの隔絶した地域に存続を図る暴力的過激組織に圧力と監視を続けるため、テロとの戦いを継続する準備をしている」「地域のすべての国と外交交渉を行い、どこに資源を投ずるか議論するが、まだこの面での合意は得られていない」由。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―イランの感染が急拡大を続けている。20日の新規感染者数は25,492人(10,250)、死者数は395人(91)であった。(カッコ内は前回報告した3月30日の値。その後一貫して増加中。)2週間のノールーズ休暇で人々が国内移動した後急増した(7日、スカイニューズ・アラビア)、地方当局はテヘランを1週間以上ロックダウンすることを政府に提議(8日、BBCアラビア語)、10日政府は「レッドゾーン」指定地域(テヘラン他250都市)での商店の閉鎖、オフィスの出勤率を3分の1にする封鎖措置を命令(AP)等の報道がみられる。また、「6000万回分のスプートニクVワクチン購入についてロシアと契約した、全量は年末までに届く」と駐露イラン大使が発言(AP)。
<特記事項・気付きの点>
―特になし