アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
25日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ シリア西部バニヤス沖で石油タンカーの火災が発生。シリア政権は「レバノン領海方面から来た無人機による攻撃」との見方を示す。イラン・メディアは「このタンカーはパナマ船籍」と報道
■ エルサレムで緊張が高まる中、イスラエルは「ガザ地区北部から発射されたロケット弾を阻止」と発表。ネタニヤフ首相は、平静を呼びかけつつ、軍に「あらゆるシナリオに備えるよう」命令
■ イエメン軍、「マアリブ県西部で前進しようとしたホウシー派を退けた」と発表。同派は、「同県サルワーフの拠点が空爆を受けた」と述べる
■ 米大統領、トルコ大統領と6月に会談することで合意した後、「オスマン帝国時代にアルメニア人に起きた出来事は集団虐殺」と述べる。トルコは「両国間の友好と信頼を損なうもの」と非難
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―米・ユダヤ・ニュース・サイト「フォワード」によると、バイデン政権のマクガークNSC中東・北アフリカ担当調整官は、米国ユダヤ人指導者らとのリモート会合で、「イランからの確約がない中で、米は制裁を解除しない。すべての対立事項が解消されない限り、圧力を軽減しない」「バイデン政権は、(交渉)プロセスを前進させるためだけに対価を先払いするつもりはない」「米政権は、イランが義務事項を完全に履行し、核開発計画を核合意で規定された枠内に戻すことに合意し、完全な査察と監視を認めることを望んでいる」と述べた。
―ニュース・サイト「ビジネス・インサイダー」は「イランと中国の間で最近結ばれた協定の流出文書」を公開し、「これは単なる経済協定ではなく、駆け引きにおける形勢を大きく変えるものだ」と伝えた。流出した18ページからなる草案文書によると、この協定は「中国の投資を拡大し、通信・運輸・インフラ・銀行等のイランの諸部門を含める。その見返りに中国は、値引きされたイランの石油の供給を保証される」「中国は自国の投資を保護するためにイランに中国軍部隊を配備する可能性がある」「(ペルシャ)湾の戦略的要衝であるキーシュ島の租借権を中国に認める契約を結ぶ」と規定。同サイトは「この合意がイランの指導部にとって『同国の孤立化がもはやそれほど簡単にはいかない』ということを示すための有益なものであることが裏付けられるかもしれない」と指摘した。
―イラクの医療関係者によると、バグダッド南部のイブン・ハティーブ病院で酸素ボンベが爆発して大規模火災が発生、新型コロナウイルス感染症の患者少なくとも20人(0652JST時点の速報)が死亡した。同病院は現在、コロナ患者専用とされている。火災は民間防衛隊によって鎮圧された。民間防衛局長によると、同病院には120人の患者が入院しており、このうち約90人が救助された。
―シリア政府は、「西部バニヤス沖で石油タンカーが無人機によるものとみられる攻撃を受け、タンクの1つで火災が発生した」と発表した。シリア石油省は、「攻撃を実行したとみられる無人機はレバノン領海の方向から来た」とし、「消防隊が火災を鎮圧した」と確認した。イランのメディアは、「標的となったタンカーはパナマ船籍の『ウィスダム』号」と報じた。
テヘラン特派員:イランは「標的となった船(上記のタンカー)はイランの船だった」との情報を全面的に否定している。ただし、石油省などの関係者による正式な否定ではなく、イランの事情に詳しい筋によるものだ。テヘランでは2つの話が出ている。1つはイラン国家安全保障最高評議会に近いニュース・サイト「ヌール・ニュース」の報道だ。同サイトは「シリアの軍幹部の1人と連絡を取り、何が起きたのかを問うたところ、この幹部は『攻撃ではなく、船上での修理のための溶接作業によって爆発が起きたものだ』と述べた」「追ってシリアから訂正報が出されるだろう」「この船はイランの船ではなく、シリアの船だ」「この事故で1人が死亡、2人が負傷した」と伝えた。もう1つの話は、タスニム通信などが伝えた「バニヤス港で船に対する攻撃があったようだ」「この船はパナマ船籍で、イラン船の近くに係留していた」というものだ。前者の方が国家安全保障最高評議会に近いサイトの情報ということで重要性があり、こちらの話がメディアの大勢を占めてきている。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメンのホウシー派のメディアは、「サウジ率いる同盟軍が、マアリブ県サルワーフ郡の複数拠点を19回にわたり空爆した」と伝えた。一方、政府軍報道官は「同県のマシュジャハ、カッサーラ、その他の戦線で、まだ同派との戦闘が続いている」と述べた。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエルのガザ地区に隣接する町や入植地で24日夜、警戒サイレンが鳴り響いた。同地区北部から同地域に向けてロケット弾複数が発射されたため。イスラエルの迎撃システム「アイアンドーム」がこれらのロケット弾の迎撃を試みた。これより先に、イスラエル軍は24日早朝、同地区各地でパレスチナ抵抗運動の拠点や農地を狙った空爆を実施し、物的損害を出していた。人的被害はなかった。
―イスラエル軍がエルサレムのダマスカス門広場や旧市街周辺に集まっていたパレスチナ人の若者たちを排除しようとして暴行を加えたことを受けて、両者の間で衝突が再発。パレスチナ赤新月社によると、旧市街周辺での衝突で6人が負傷した。
―ガザ地区やエルサレムでの緊張を受けて、ネタニヤフ・イスラエル首相は、政府高官や治安機関幹部と緊急会合した。同首相は「エルサレムでの平静と法の順守」を呼びかけると同時に、軍に「ガザ地区でのあらゆるシナリオに対処するため準備するよう」指示した。また、イスラエル軍参謀総長は、予定されていた訪米を中止した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―バイデン米大統領は、声明で「約100年前のこの日(4月24日)にアルメニア人に起きたことはオスマン帝国時代の集団虐殺だった」との見方を示し、「この出来事への言及の目的は、非難ではなく、再発防止を保証することにある」と述べた。
―ロイター通信によると、米政府当局者は「バイデン大統領はエルドアン大統領との緊密な協力を望んでおり、そのため6月のNATO首脳会議の傍らで会談することを提案した」と明らかにし、「トルコはまだNATOの重要な同盟国であり、米は同国との関係強化に尽力している」と述べた。
―エルドアン大統領は、トルコのアルメニア教会総主教に宛てた書簡の中で「(1915年にアルメニア人に起きた出来事を)歴史家の議論に任せるのではなく第3者が政治的に利用し、この件をトルコの内政に干渉する政策(の道具)に変えることは、歴史を通じて有効であったことがない」「トルコは、トルコ人とアルメニア人の間の共存の文化を忘れることを許さない。この共存文化は数百年にわたって続き、人間性の模範だった」と述べた。
―トルコ外務省は、声明で(上記の)米大統領の発言を強く非難し、「いかなる科学的・法的根拠にも基づかないものだ」と指摘、「米大統領は、この大きな間違い(発言)を撤回すべきだ」と強調した。
<その他の重要ニュース要旨>
―エチオピアは、「国内外の勢力がエチオピアを紛争と混乱に陥れようとしている」と非難した。エチオピア国家安全保障会議は、「エチオピアは、謀略や圧力を受けているものの、ルネッサンス・ダムの第2回貯水を予定通りに実施し、総選挙を予定通りに実施する」と表明。
エリコの目
―リビア沖の地中海で、欧州への渡航を希望する不法移民130人を乗せたゴムボートが沈没した。生存者はいない、と救援活動を行っている欧州の機関が発表した。UNHCRによれば、リビア、チュニジア沖では今年に入ってから既に450人以上、昨年(2020年)は1200人以上の「渡航希望者」が死亡している。(アルマヤディーン・ネット)
中東の新型コロナ動向
―22日、UAEの民間航空局及び国家緊急事態・災害管理局は、UAEをトランジットしてインドに向かう便を除く全てのインド航路便の運航を24日午後23:59より停止すると発表した。この措置は10日間実施され、延長の可能性がある。(CNNアラビア語)
―UAEの感染状況は引き続き落ち着いている。新規感染者数は1日あたり約2,000人前後で推移しているものの、1日当たりの死者数は2~4人である。(2月19日に記録したピークの20人から漸減した。)ワクチンは、これまで、約1,010万回の接種が実施されており、これはUAEの人口を上回っている。通常、2回の接種が必要なので、2回接種を完了した人の割合は約51.7%と推計できる。(ロイター)
<特記事項・気付きの点>
―バグダッドでの病院火災を受けて、0622JST以降の「ミッドナイト・ニュース」の内容を変更し、SNS上に公開された現場の救助活動の映像を流しながら、状況をめぐるバグダッド支局長との掛け合いを続けた。