アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
29日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ウィーンで核合意をめぐる協議が続く。露は交渉における「協議には勢いがある」と述べ、ブルームバーグは「米政府は、協議に関する同盟諸国の懸念を払拭するため、中東に政府高官から成る代表団を派遣する意向」と伝える
■イエメンのマアリブで同盟軍が空爆。イラン外相はホウシー派広報担当とオマーンで会談し、イエメンでの戦争終結・封鎖解除の必要性を確認し、「イエメン人同士の交渉を開始するよう」呼びかけ
■アフガニスタンのタリバンは米軍の撤退開始を歓迎。米統合参謀本部議長、「外国軍の撤退後、アフガン政府の崩壊や内戦勃発の可能性がある」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ウリヤノフ在ウィーン国際機関露代表部常駐代表は、「ウィーンでの核合意をめぐる協議は勢いを得ている」「制裁解除と核開発問題を担当する作業部会は、米とイランが講じることになる措置のリストで合意すべく取り組みを続けている」「すでに、第3作業部会が初会合を行った」とツイートした。一方、ブルームバーグは、「米政府は核合意をめぐる協議に関する同盟諸国の懸念を払拭するため、今週、政府高官から成る代表団を中東に派遣する意向」「米国務省の高官らはこの情報に関するコメントを拒否した」と伝えた。
―米ニュースサイト「アクシオス」によると、イスラエル政府高官は、「イスラエル代表団とサリバン米国家安全保障問題担当大統領補佐官との会談中に、核合意をめぐる対立と、イランに関するその他の問題とを切り離すことで合意した」「代表団はサリバン氏に、『イランとの核合意への復帰は、より長期的でより強力な合意に至る機会を減少させるだろう』と伝えた」「代表団は米政府高官との会合がどのように進むか懸念を抱いていたが、結果的に極めて満足している」と明らかにした。
―ブリンケン米国務長官は、「イランは、地域の安定を揺るがす活動やテロ支援によって、明らかな脅威・問題となっている。また、国内での人権弾圧についても懸念される」「イランの核開発計画は、その意図や核兵器への転用の能力が高まっていることに関して、何年もの間、国際社会の脅威となっている」「平和と安全を脅かすイランの活動に対して、米は必要な措置を講じ続ける」と述べた。
―サリバン米国家安全保障問題担当大統領補佐官は、「ベンシャバト・イスラエル国家安全保障顧問は今週、訪米し、イランの核兵器保有を阻止するための戦略的目標、核合意をめぐる両国の対立について協議する予定だ」と述べた。
―ロウハニ・イラン大統領は、「米政府と他の国々が、核合意への復帰が唯一の選択肢であると認識した。このような機微な時期において、ザリーフ外相の内密の発言が漏洩した。外相の発言を盗んだ者は、ウィーンでの交渉を失敗させるために内部分裂を作り出そうとしたのだ」「敵は内部分裂を引き起こし、サウジが資金提供している放送局を通じて外相の発言を広めた。イスラエルや地域の反動主義国家は、自分たちの目的が実現しないことに動揺し、憤っている」「イランは敵に目的の実現を許すつもりはない」と述べた。一方、ザリーフ外相は、「『外交の取り組みと軍事に関する現場は一つの道筋にあり、バランスが取れている必要がある』との自分の発言を、内部分裂を作り出すために利用されたことは遺憾である」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメンのホウシー派傘下のメディアによると、この24時間にマアリブ県のサルワーハとマドガルで同盟軍が空爆を17回実施。またジャウフ県ハズムで2回実施した。一方、政府軍報道官は、「サルワーハの複数の戦線でホウシー派の攻撃を食い止めた」「同盟軍機は同派の拠点や軍用車両を攻撃した」と述べた。軍事情報筋によると、ジャウフ県で政府軍とホウシー派が激しく交戦している。
―ザリーフ・イラン外相はオマーンでアブドッサラーム・ホウシー派広報担当と会談し、イエメンでの戦争終結と封鎖解除の必要性を確認。「停戦とイエメン人同士の交渉開始を歓迎する」と述べた。イラン外務省は、「アブドッサラーム氏はザリーフ外相に、イエメンの諸問題の最新情勢に関する報告書を渡した」と明らかにした。また、ザリーフ外相と会談したブーサイーディー・オマーン外相は、両国間の協力関係の強化、地域・国際問題等について協議した。
―ムハンマド・サウジ皇太子は、「イエメンのホウシー派が停戦を受け入れ、全当事者の権利や地域諸国の利益を含む解決に至るべく、交渉に参加することを望む」と述べた。
―ムハンマド・カタール副首相兼外相は、「国連憲章の堅持、国家主権の尊重、内政不干渉は文明国家の支柱であり、地域において安全と平和を維持するための安全弁である」「ムハンマド・サウジ皇太子が呼びかけた、このような土台やイランを含む地域での善隣と対話の原則に立脚した外交政策を支持する」とツイートした。
―ガリバフ・イラン議会議長は、「地域における外国の存在は、安全と安定を揺るがす主要因である」「湾岸地域における米軍の存在は、同地域でエネルギーや経済に影響を与えることによってイスラエルの安全を確保するためである」と述べ、イランの近隣諸国に「自分たち自身で地域から米軍を退去させるために共に取り組み、協力し、抑止力・防衛力を強化するよう」呼びかけた。
○ エジプト情勢
―シュクリ・エジプト外相は、「エチオピアはルネッサンス・ダムをめぐる危機を打開するための仲介を拒否した」「エチオピアの頑迷さが、交渉の失敗と、ダムの貯水・稼働のための拘束力のある包括的な法的合意の成立を失敗させた原因だ」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―ハマースは、「パレスチナの選挙の延期または中止するとの考えを拒否する」「解決策としては、イスラエルの許可や調整なくエルサレムで選挙を実施するメカニズムを協議する国民会合を行うべきだ」「選挙の中止や延期を決定した責任は、パレスチナの分裂状態を継続させる目的を持ったイスラエルの拒否(の求め)に応じて決定を下した者にある」と述べた。ハマースは政治勢力、抵抗諸派、選挙の立候補者らに対して「中止や延期のための口実を与えないよう」呼びかけ、「パレスチナ人の誰も、エルサレムを含まない選挙の実施を受け入れることはできない」と述べた。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―タリバンは外国軍がアフガニスタンからの撤収を開始したことを歓迎し、「国際(治安支援)部隊の存在がアフガンでの戦争の主要因だった」「国際部隊の撤収によってアフガンでの紛争は終わるだろう」との楽観を示した。一方、ミラー駐アフガンNATO・米軍司令官は、「米軍の撤収は、正式な撤収の日程は5月にも拘わらず実際に開始された」と確認した。
―ミリー米統合参謀本部議長は、「(国際部隊のアフガンからの撤収後の)可能性や帰結に関するリストがある。極めて悪いものと悪くないものがある」「最悪のシナリオは、アフガンの政府と軍が崩壊して内戦に突入し、人道災害が引き起こされ、アルカイダが戻ってくる可能性があるというものだ」と述べた。
―オースティン米国防長官はバジュワ・パキスタン陸軍参謀総長と電話で会談し、アフガンからの米軍の撤収に加え、地域の安定の必要性と、共通の目的に向けた共同の取り組み等について協議した。
―サリバン米国家安全保障問題担当大統領補佐官は、「アフガンに対する米の軍事的義務は終わったが、治安・民生・人道面での支援、女性の権利の保護に関する義務は終わっていない」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダンは露に対して、露が紅海に面したポートスーダンに軍事基地を設置するとした合意の凍結を正式に伝えた。スーダンは「この決定は、立法評議会も許可した」と述べた。一方、露連邦安全保障会議の国防安全保障委員会副委員長は、「この決定がスーダンの立法に関する事情に基づくものであり、外国勢力の影響を受けていないことを望む」と述べた。
エリコの目
―イランのザリーフ外相は「革命防衛隊が過度に力を持ち、外交にも干渉している」旨の自身のオフレコ発言が暴露された件について、27日インスタグラムを通じ、このことが大統領選挙を目前に「イラン内部の闘争」に発展していると遺憾の意を表明した。また、同じ「改革派」のロウハニ大統領も、ウィーンの核合意をめぐる交渉が成功を収めつつある中での「暴露」は、「国内対立を顕在化させることを狙っている」と批判した。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―モロッコのワクチン事情
モロッコでは、主に中国製ワクチンの入手に成功したことから既に440万人以上が接種を受け、その接種率は多くの欧州諸国を超え、世界10位にランクインしている。それでも当局は、世界的な厳しい第三波の流行に対抗するには、ワクチン接種を強化することが急務であると考え、中国製ワクチンに加えロシア製を視野に入手を急いでいる。また自国生産が、ワクチンをめぐる国際競争に打ち勝つ鍵であるとして、タンジェの中国との合弁製薬工場プロジェクトの完成を急いでいる。(アルアラブ紙)
―モロッコでは、昨年11月に新規感染者が6000人を超えるピークを経験したが、その後減少傾向が続き、28日の新規感染者は493人、死者は10人と落ち着きを見せている。
<特記事項・気付きの点>
―特になし