2021年5月3日 (No.21033)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

3日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■エチオピア、「エジプトとスーダンが戦争の脅しを超える軍事協定に署名した」と非難。スーダンは「調整のないルネッサンス・ダムの2回目の貯水は、スーダン国内のダムを脅かす」と述べ、エジプトは「貯水による影響を抑える計画がある」と明らかにする

■米及び国連のイエメン特使はオマーンで会談し、イエメンでの停戦とマアリブでのホウシー派による攻撃停止の必要性を確認

■ウィーンでの核合意をめぐる協議についてイランは楽観を示す。「アクシオス」によると、米大統領はモサド長官に「核合意復帰への道のりは長い」と伝える

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―ロウハニ・イラン大統領は政府の経済委員会の会合中、「イランからの制裁解除は近い」として、ウィーンでの核合意をめぐる交渉の成果、イランに経済発展が戻ることに楽観を示した。また、「イランは恐らく、制裁に関して数週間以内に重要な突破口を目撃するかもしれない」と述べた。一方、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、「主要国はイランとの合意にまだ達していない」と述べ、在ウィーン国際機関代表部のウリヤノフ露常駐代表は、「3週間以内の合意成立に向けた傾向が見られる」と述べた。

―米ニュース・サイト「アクシオス」によると、イスラエル政府高官は「バイデン米大統領は4月30日に行ったコーヘン・イスラエル諜報特務庁(モサド)長官との会合中、同長官に『イランとの核合意への米の復帰は間近ではない。合意の完全な順守への復帰で合意する前に、イランとの協議において乗り越えなければならない長い道のりがある』と伝えた」「同長官は米大統領に『合意を改善する前に米が復帰することは、過ちとなる』と述べた」「米大統領は『今後も、イスラエルの意見を取り入れてゆく』と確認した」と述べた。

―イラクの治安情報筋によると、バグダッド国際空港がカチューシャ・ロケット弾3発による攻撃を受けた。被害状況は未だ不明。イラクのメディアによると、空港の防空システムがこのうちの1発を迎撃し、1発が空港周辺に着弾した。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―レンダーキング米イエメン特使とグリフィス国連イエメン特使はオマーンのマスカットに到着。同時にファイサル・サウジアラビア外相、ホウシー派代表団も同市を訪問中。米国務省は、「協議は、イエメンへの物品や人道支援物資の搬入の保障、恒常的停戦と政治プロセスへの移行を支援することに集中する予定」との声明を出した。

―米国務省近東局はツイッターで「米イエメン特使とヘンゼル駐イエメン米大使は、ホウシー派によるマアリブでの攻撃を終わらせ、また、国全土での包括的停戦で合意する必要がある、と確認した」「国連安保理常任理事国5か国は紛争解決を決意しており、共同行動を歓迎する」と表明した。

マスカット特派員:ここ数週間、マスカットでは外交活動が活発に行われている。数日前にはイラン外相が訪問し、今日2日はサウジ外相が訪問。同時に米と国連の特使が訪問し、イエメン危機の打開に向けて取り組み、また、ホウシー派代表団と直接・間接的に協議している。オマーンの情報筋によると、協議はマアリブ県でのホウシー派による攻撃激化とミサイルによるサウジへの攻撃を止めることに集中。ホウシー派は、封鎖解除、サウジ・UAE同盟軍の正統政府への支援停止、サヌア空港とホデイダ港を支援物資や石油・ガス運搬船等に対して開放するよう要求している。

○ エジプト情勢

―エチオピアは、国連に先週、送付したルネッサンス・ダムをめぐる交渉に関する書簡の中で、「エジプトとスーダンが戦争の脅しを超える軍事協定に署名した」と非難。エチオピアのメディアは、「エジプトとスーダンは同ダムの問題を国際化するため、現在行われている交渉を妨害してエチオピアに圧力をかけようとしている」と報じた。デメケ・エチオピア外相の署名が入ったこの国連への書簡には、「エジプトとスーダンは軍事協定に署名することによって、地域の安定を揺るがそうとしている」との内容が含まれている。

―マハディ・スーダン外相はアフリカ歴訪の一環としてコンゴ民主共和国のキンシャサに到着。これより前、「ルネッサンス・ダムの合意なき2回目の貯水は危険である」と述べた。また、ムセベニ・ウガンダ大統領に2回目の貯水と最近の協議の結果について自国の立場を伝え、「エチオピアの頑迷さと拒否の姿勢によって、同国は他者に損害を与えるために時間を費やす侵略者となる」と述べた。一方、ウガンダ大統領は、全当事国の利益の実現に至る対話を呼びかけ、「アビィ・エチオピア首相と可及的速やかに連絡を取り、意見のすり合わせを行う」と約束した。

―エジプト水資源・灌漑省は2日、「水一滴毎に強力なシステムを運用することによって、ルネッサンス・ダムの2回目の貯水による危険を回避するための計画がある」と明らかにした。ガーニム同省報道官は、「最悪の状況に基づき、起こり得るあらゆるシナリオに対する準備を行った」「エジプトは、自国とスーダンに影響を与える一方的な2回目の貯水と既成事実を押し付ける政策を拒否する」と述べた。

―エジプトのメディアによると、アッバース・スーダン灌漑・水資源相は、「ルネッサンス・ダムの合意なき2回目の貯水による危険を抑えるため、複数のシナリオを準備している」「エチオピアとの調整や情報等の交換が行われないままだと、ロセイレス・ダムの稼働が不能になり、ダム湖の土製の橋梁の安全が脅かされ、青ナイル川流域に暮らす2千万人のスーダン人の命が脅かされる等の脅威となる」と述べた。

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―バイデン米大統領はビンラディン・アルカイダ指導者殺害から10年を迎えるに当たって声明を出し、「アフガニスタンから発生するあらゆるテロの脅威を監視し、阻止し続ける」「米は全世界に広がるテロ集団の脅威を警戒し続ける」「このような脅威には、世界の同盟諸国・パートナー諸国と協力して対抗する」「アフガンのアルカイダは非常に弱体化した」「米は、アフガンでアルカイダとその幹部らを追跡するという約束を果たした。また9.11の攻撃に続き、更なる攻撃の発生を阻止する責任を放棄するつもりはない」と表明した。

―ミリー米統合参謀本部議長はAP通信に対して、「アフガンからの米軍撤収は、予定の9月11日より前に完了する可能性がある」「米軍の撤収後、アフガン政府は先行きが不透明な状態に直面する」「アフガン政府とタリバンとの間で、交渉による政治的解決に至る可能性はまだある。そうすれば一部の人々が恐れている激しい内戦の勃発を回避できる」と述べた。

―アフガン国防省の当局者は、「米軍は、ヘルマンド州のアントニク軍事基地をアフガン軍に引き渡した」「アフガン南部におけるテロ対策とタリバンによる攻撃の阻止のために、アフガンの特殊部隊が同基地を使用することになる」「米軍部隊は帰国の準備のため、カブール近郊のバグラム基地に戻った」と述べた。

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―サウジアラビアのファイサル外相がカタールに続き、オマーンを訪問した。イランのザリーフ外相もこの2国を訪問しており、観測筋はサウジ・イラン間の関係改善に向けた仲介の存在を推測している。また、1日付NYタイムズ紙はバグダッドで緊張緩和のための両国間の秘密交渉が行われている、と報道。(アルアラブ紙)

Just a moment...

中東の新型コロナ動向

―シリアの新型コロナ事情「急激な拡大と治療・検査体制の欠如」
10年を超える内戦状態にあるシリアは、政府支配地域、クルド人支配地域、スンニ派反体制勢力支配地域に分断されている上、その人口の9割が貧困状態にある。国全体でPCR検査施設はほとんどなく、国連の活動するクルド人支配地域には一か所だけである。その検査結果は感染の急増を示している。4月1か月間に5300人の感染が確認されたが、この数は2020年1年間の半数以上であった。また、検査の陽性率は47%超を記録した。国際救済機関の責任者によれば、「人工呼吸器を装着した患者の83%が死亡した。事態は更に深刻になろうとしている。」
また、別の国連機関によれば、政府支配地域においても2月3月期に新規感染者数は倍増し、ダマスカスの病院の高度救急病棟は患者で溢れている。ガーディアン紙が伝えた。(BBCアラビア語)

ملايين في خطر في سوريا مع تصاعد حالات الإصابة بكوفيد-19 - الغارديان - BBC News عربي
ملايين الأشخاص في سوريا في خطر مع تصاعد حالات الإصابة بمرض كوفيد-19 والنقص الحاد في إمدادات الأكسجين، والهند تعيش أوضاعاً تعد من بين الأسوأ عالمياً مع تزايد حال...

―シリア政府(保健省)発表の数値は下記。信頼できないが、グラフから、一貫して感染が拡大している傾向は看取される。

Syria COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Syria Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, trends...
<特記事項・気付きの点>

―連休の中日、東京は穏やかな五月晴れです。如何お過ごしでしょうか?国際ニュースに休みはありませんので、エリコ・モニタリングも連休はお休みしません。皆様の連休後の国際情勢分析の一助となることを願っております。バックナンバーは下記URLで再読することができます。

エリコ・モニタリング・レポート | アラビア語報道による地域と世界の情勢の定点観測
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