アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
6日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■エジプト大統領、「エジプトの水の利益を害することは容認しない」と米特使に伝える。米議会代表団はスーダンを訪問し、エチオピアにはダム建設の権利があるとしつつ、「全ての国の利益を尊重する解決が必要」と指摘
■イラク大統領、「サウジとイランに複数回、対話の場を提供してきた」「この対話は、地域の全ての国の利益になる」と語る
■エルサレムのシェイク・ジャッラーハでの座り込み参加者をイスラエル軍が攻撃し、複数が負傷。EU、占領地の家屋取壊しの増加に懸念を表明
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―日本の新聞によれば、防衛省は中国の脅威に対処するため、国内南方の島での米の中距離ミサイル配備計画について検討している。日中間で係争中の島に近く、このミサイルの拠点に理想的な立地である石垣島の住民は、日中の衝突の際に島が軍事攻撃の標的となることを懸念している。
東京特派員のレポート:石垣島は豊かな熱帯果樹とエメラルドの海が特色だが、島の農業者、金城(哲浩)さんにとってこの立地は、島の恵みを不快な思いへと変えた。台湾にも近いこの島が、自衛隊の基地となるからだ。彼が活動家たちと共に起こした訴訟は、5年間を経て、基地建設を無効化できなかった。彼は、決定が東京の政府高官の手にあるのだと理解した。
金城さんは、「政府は我々の声に耳を傾けず、基地が島を守ると主張する。しかし戦争になれば、基地のために島は標的になる。また基地は、中国との緊張を高める」と話す。
日本が支配し、中国が「釣魚島」と呼んで要求する尖閣諸島は、石垣島から約170キロ離れ、行政上、石垣市に属する。このことが、石垣島に基地が立地することの重要性を高めている。
基地は約7千平方メートルで、3億5千万ドルかけて整備される。数字が、この基地の規模と役割を表している。来年、石垣島に基地が完成すると、他の日本の島々の4つの基地と合わせて、石垣島の行政責任者が言うところの「中国の脅威」に対する「ミサイルの盾」を形成することになる。中山義隆・石垣市長は、「中国船が昨年、尖閣周辺の日本の領海を侵犯した。島に部隊を上陸させようと試みる可能性も排除できない。このため中国を抑止する基地が必要だ」と話す。
日本のメディアによれば、石垣島の基地建設と並行して、米国防総省には、中国の脅威に対処するため、日本と連携し、石垣も含むいわゆる「第1列島線」の島々に、高度に精密なミサイルを配備する構想がある。米中間の緊張が高まる一方で、ミサイル基地建設を拒否する日本の活動家たちの声は、高まっている。彼らは自分たちの島が将来の衝突で軍事標的となるのを望んでいない。
○ イラン・イラク・シリア情勢
―サーレハ・イラク大統領は、シンクタンク「ベイルート研究所」のインタビュー(ネットで公開)で、サウジアラビアとイランが2016年の国交断絶以降、イラクで複数回の協議を行ったと述べた。サウジ・イラン間のイラクでの協議を、イラクが公に認めるのは初めて。大統領は、「この対話は域内の皆の利益に資する。また、様々な勢力に対し、彼らの問題の解決を見出すよう説得するために重要だ」と述べた。また大統領は、イエメンの和平に向けたサウジのイニシアチブを称えた。サウジ・イランの新たな交渉が行われるかについては明かさなかった。
―ロウハニ・イラン大統領は閣議で、「米の対イラン制裁は、イラン人が結束し続ければ、短期のうちに解除される」と述べた。また「ウィーン協議での核合意再生に関する合意成立は、相手方が法を順守するなら、早急に可能だ」「ウィーンでの協議は、正しい道を進んでいる。核合意の署名諸国は、安保理決議2231号の履行以外に選択肢はないことを理解している」と語った。ウィーンでの協議は今月7日に再開の予定。
―ハティーブザーデ・イラン外務省報道官は、米NBCのインタビューで、ウィーンでの協議の雰囲気を「建設的」と評し、「進展はある」としながら、「米は今回の協議が新たな交渉ではないことを理解すべきだ」と述べた。報道官は「交渉は(イラン核合意が結ばれた)2015年7月で既に終わっている。我々がウィーンにいるのは、米が合意順守に戻る方法を決めるためだ」と語った。
―ウリヤノフ露IAEA大使は、「米とイランの拘束者(相互釈放)の問題は、ウィーンでの協議の対象になっていない」と述べた。これに先立ち露大使は、「ウィーン協議が崩壊した」との(一部アナリストによる)コメントを否定し、「協議は進展している」と語っていた。
―米ニュース・サイト「アクシオス」は、欧州外交筋の話に基づき「イランの核開発に歯止めをかける措置をめぐり、米とイランの間に大きな隔たりがあり、ウィーンの協議進展を妨げている」と報じた。「米と欧州は、核爆弾製造に必要な濃縮ウラン生産にかかる期間は、少なくとも1年なければならないとの点で一致している」「主要な対立の一つは、より迅速にウラン濃縮が可能な(イランが設置した)新型・高性能の遠心分離機の扱いだ」という。一方、「アラブの国の高官は」は、「中東を歴訪した米高官から、エスカレーションの緩和や、イラン、トルコ、カタールに対する外交的な対応を求められた」と述べた由。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―米国務省報道官はアルジャジーラに、レンダーキング米イエメン特使がサウジに滞在中で、同地で高官や英仏露の対イエメン大使と協議していると説明。「米特使は、駐サウジ米大使や国連イエメン特使と、イエメン紛争解決のために調整している」「米は高官を中東に派遣し、イエメン紛争の恒常的解決の支援に取り組んでいる」「この取組みが国際的な合意形成を後押しし、地域諸国の努力も実を結んだ」と述べた。また「ホウシー派が、人道面の悪影響が著しいにも拘わらず、和平ではなくマアリブで攻撃を選んでいるのは遺憾だ」と語った。
―グリフィス国連イエメン特使は、「サウジやオマーンでの協議で、イエメンの各勢力は合意に至らなかった」とし、遺憾の意を示した。また「協議では、停戦、マアリブに対する攻撃、ホデイダ港への制限解除、サヌア空港の開放の各課題を扱った」「今後も紛争の各当事者とやり取りし、和平の努力を後押しする土台形成の機会を提供していく」と述べた。
○ エジプト情勢
―エチオピアがナイル川上流に建設中のルネッサンス・ダムをめぐり、シーシー・エジプト大統領はカイロで、米のフェルトマン「アフリカの角」地域担当特使に、「このダム問題は、エジプトの生存に関わる問題だ。我が国の水の利益を害されることは容認しない」と述べた。一方、米議会代表団はスーダンを訪問。代表団のクーンズ上院議員は「エチオピアにはダムを建設して電力を得る権利がある」としつつ、「それは、地域の全ての国の利益を尊重する合意を通じてであるべきだ」と指摘した。米は、ダム建設によるナイル川流域国の対立激化を懸念し、見解の調整に乗り出している。
○ 中東和平(占領地情勢)
―パレスチナ保健省によると、ナブルス南東のオウダラ村で、村に押し入ったイスラエル軍に16歳の青年が頭部を撃たれ死亡。他2人が銃弾で負傷した。イスラエル軍はここ数日、ナブルス南方のザアタラ検問所での発砲事件(入植者3人が負傷)の容疑者を追跡するためだとして、一帯のパレスチナの村々に押し入っており、オウダラ村では村の入口に検問を設置、村の若者と衝突。
―東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区で、(パレスチナ住民が立ち退きを迫られていることに抗議する)パレスチナ人のグループをイスラエル軍が攻撃し、10人を負傷させ、2人を拘束した。これに先立ち、地区のパレスチナ住民を退去させてユダヤ人入植者の居住を認めることに関するイスラエル裁判所の審理(下級審が立ち退きを命じたもの)をめぐり、両者の衝突が起きていた。
―EUは、イスラエルに入植地建設の停止を求めた。「東エルサレムを含め、1967年(第3次中東戦争)以前の境界線のいかなる変更も認めない」「国際法に反する入植地建設は遺憾だ」と声明。「イスラエルがエルサレムのアブー・グネイム入植地に540戸を新規建設すれば、東エルサレムがベツレヘムから切り離され、将来の『2国家解決』の交渉を破壊する」と指摘した。また、東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ、サルワーン両地区でのパレスチナ住民の立ち退きや住宅取壊しの増加、ワルジャ村の家屋取壊しの可能性について、「国際人道法に反しており、懸念している」とした。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン国防省高官はアルジャジーラに、アフガン軍が北部バルフ州のマイク・スパン基地を独軍から引き渡されたと述べた。独軍の基地引き渡しは2か所目。これより先に米軍は、タリバンの根拠地である南部ヘルマンド州のキャンプ・アントニク基地をアフガン軍に引き渡したと発表していた。
―タリバンのムジャーヒド報道官は、北部バグラーン州ブールカの政府施設を制圧したと述べた。アフガン国防省筋は、「ブールカの施設からロジ・技術的な理由で撤退した」と述べつつ、ブールカ地域がタリバンに制圧されたことは否定。アフガンのTV「トロニュース」は、タリバンがブールカの複数地域を制圧し、政府が事務所を一帯の別の場所に移したと報じた。
―ヘルマンド州の政府筋によると、州都ラシュカルガーに向けたタリバンの前進を阻止すべく、米戦闘機がタリバン拠点を空爆した。州議会議長は「タリバンは前進したが、政府軍が複数の地域を奪還した」と述べた。米軍のアフガン撤退開始とともに、州内でタリバンが攻勢をかけている。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―オナル・トルコ外務次官は、カイロでエジプト高官と会合し、両国の関係正常化のための方策、今後の閣僚級会談の準備について協議した。エジプト外務省は「関係正常化をもたらし得る、両国間と地域レベルの措置について話し合った」としている。トルコ代表団のエジプト訪問は、2013年半ば以来。
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―エルサレムでパレスチナ人の抵抗活動が「爆発」する懸念が高まっているため、イスラエルの裁判所はシェイク・ジャッラーハ地区の家屋強制収容4軒の執行を6月3日まで延期することを決定した。また、イスラエル当局は、(最も神聖とされる)ラマダン月下旬(同月28日=5月10日)に際して、ユダヤ教超正統派がアルアクサー・モスク襲撃を計画していることについて、これを禁止することを決めた。超正統派はイスラエルがエルサレムを占領した記念日を祝う目的で襲撃を計画している。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
https://www.alquds.co.uk/توقعات-بانفجار-الوضع-في-القدس-تدفع-إسر/
中東の新型コロナ動向
―チュニジアでは、4月28日に119人の1日当たり死者数を記録して以降、100人台の死者を記録する日が多くなっている。5日は106人と、前日の101人に続いて大台を突破した。同日の新規感染者数は1,448人。明らかな第3波の感染拡大が続いている。ワクチン接種回数は約43万回で、2回接種を完了した人の数は約10万3千人に留まっている。ワクチン入手の遅れから、同国の人口の約半分である550万人に接種するという国の計画は困難に直面している。(アルクドゥス・アルアラビー紙他)
<特記事項・気付きの点>
―特になし