アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
7日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ ウィーンでの核合意をめぐる協議の新ラウンドを翌日に控え、イラン外務次官は「懸案事項は深刻且つ根本的なものだ」と述べる。露は「次回が最終ラウンドになる」とし、米は「イランが合意に復帰しない場合に備えている」と述べる
■ カタール外相、アルジャジーラのインタビューの中で「カタールはケニアとソマリアの正常な関係を維持するために支援する」「カタールは米及びイランと連絡を取り続け、両国に前向きな対話を開始するよう促している」と確認
■ エジプトとトルコはカイロでの予備協議を終え、「協議は率直で深いものだった」「議題にはリビア、シリア、イラク各国情勢や中東での平和実現も取り上げられた」と表明
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―日本では新型コロナウイルスの影響で、多くの人々が逼迫した経済状態の中で暮らしている。このため、多数のレストランやホテルが閉店し、多くの料理人が職を失った。そこで国内の企業は、顧客の自宅に料理人を派遣して調理させるという新たなアイデアによる仕事(出張シェフ・サービス)を作り出した。登録している料理人は約9百人おり、その中にはレストランで働き続けている人もいる。料理の作り置きなどを含め、1回の出張の料金は約7千円。昨年の飲食業倒産は年間最多の840件以上に上り、同業界の負債額は1千万円以上。10年前の(東日本大震災の)津波による経済的損失を上回っている。
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ウィーンで7日、イラン核合意をめぐる協議の第4ラウンドが開始される予定。アラグチ・イラン外務次官は、「イランは、深刻な問題が存在し、その道程が長く困難であっても、協議を続けるつもりだ」「協議における懸案事項は深刻且つ根本的なものだが、これを解決するためには、交渉を続けるしかない」「我々は協議がいつ終わるか予想することはできないが、できるだけ早く成果を出すことを望んでいる」「イランの優先事項は時間ではなく、国益の確保における精度だ」と述べた。同外務次官が率いるイラン代表団は既にウィーンに到着している。また、同外務次官は7日、IAEA事務局長と会合を開く予定だが、対イラン制裁に関して依然として対立している模様。
―在ウィーン国際機関ロシア代表部のウリヤノフ常駐代表は、「7日に開始予定の次期協議は恐らく最終ラウンドになる」「必要があれば、協議の参加者らは自国政府から更なる情報を得るために、再び休止を決定する可能性がある」とツイートした。
―米国務省の当局者は、「米はイランと核合意の改善について相互理解に達した後、これについて協議することを望んでいる「米は、イランが核合意順守のために何をすべきか理解しており、また米は自身が何をすべきか知っている」「新たな核合意の形成ではなく、2015年の合意の順守が望まれている」「米はイランが核合意に復帰しない場合に備えているが、それを望んではいない」「前米政権は何年もイランに圧力をかけようとしていたが、この戦略は成功しなかった」「最近の協議のでは、核合意への復帰のために実行しなければならない、より多くの措置が明らかになった」と述べた。また、イランで拘束されている複数の米人に関して、「米はこの問題を提起したが、合意には至っていない」と明らかにした。
―ムハンマド・カタール副首相兼外相はアルジャジーラのインタビュー番組の中で、「カタールは米とイランの仲介役を果たしてはいない」としつつ、「(両国間の)直接対話は、イランと湾岸諸国間の互いが抱いている恐れが払拭されれば、可能になると思われる」「この互いの恐れを解消するために(イランと湾岸諸国は)直接対話をすべきだ。そうしなければ地域で緊張と紛争が続くだろう」と述べた。
―ルドリアン仏外相はレバノンを訪問してアウン・同国大統領、ベッリ議会議長などと政治情勢や組閣をめぐる危機について協議し、「組閣を妨害しているレバノンの政治指導者に対して、強い語調のメッセージを送るつもりだ」「仏はそのような人々に対して決然として対応する」と述べた。一方、アウン大統領は「議会の信任を得られる新政府の樹立が最優先事項だ」と述べた。ベイルート港での爆発事故(2020年8月)の後、仏はレバノンの危機打開のための提案をしたがこれまで何の成果もなく、今回、組閣を妨害している人々に制裁を科す段階に移行するようだ。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区で、パレスチナ人と入植者が衝突。目撃情報によると、日没のアザーン(礼拝の呼びかけ)と共に、集団によるイフタール(断食月中の日没後の食事)のために集まった家族や連帯者たちに向けて入植者が石や催涙ガスを投擲し始め、これに対してパレスチナ人は入植者が極右議員を迎えるために設置したテントを破壊。同地区では激しい緊張状態が続き、イスラエルの警察が特殊部隊を大幅に増員する事態となっている。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―チャウシオール・トルコ外相はベルリンでマース独外相と共同会見を開き、「リビアの新政府に支援を提供し、リビア国民の最低限のニーズに応えなければならない」「リビアには多くの外国人戦闘員や傭兵がおり、外国人戦闘員のリビアからの撤退の必要性に関して、我々は独と見解を共有している。しかし、トルコによる軍事訓練・顧問の支援提供を止めることはリビアの利益にはならない。これは両国間の協定に基づいており、このような協定に第3者が介入することは正しくない振舞いであり、リビアにおけるトルコの存在と外国人戦闘員との存在を混同すべきではない」と述べた。
○ トルコ情勢
―トルコとエジプト両国の外務次官が率いる代表団間の予備協議が6日、カイロで終了。両国は共同声明の中で、「協議は率直で深いものだった。議題はリビア、シリア、イラクの情勢など地域の諸問題、中東地域における平和と安全の実現の必要性に加え、2国間の諸問題にも及んだ」「両国は次の措置を決定する前に、協議の内容について評価を行う」と明らかにした。オクタイ・トルコ副大統領は、「トルコは地域における全ての国々との関係発展に向けて開かれている」「エジプトとトルコによる共同の動きは、地域の平和と発展に寄与する」と述べた。
カイロ大学のハサン・ナーフィア政治学教授(カイロ):(Q.協議における最大の障害・困難な点は何か?)現段階では、リビアの問題が最大の障害だと思う。リビアはエジプトにとって非常に重要な国だ。なぜならリビアとの国境から治安が脅かされており、国境付近に存在する民兵組織が懸念材料だからだ。リビアの領土一体性の維持、挙国一致政府の支持、全ての外国軍の撤退で合意しても、リビアが完全に主権を取り戻すにはまだほど遠い。治安等に関して依然として両国間の相違点がある。その他、メディアを通じた攻撃、内政干渉、東地中海におけるガス資源をめぐる問題もある。
―マース独外相はチャウシオール・トルコ外相との共同会見で、「独はEU議長国(2020年下半期)だった間に、トルコとの対話を継続すべきだと主張していた」「昨年はトルコとEUの関係にとって困難な年だったが、今年は非常に改善されたように見える。このため、対話を継続することは重要だ」と述べた。
<その他の重要ニュース要旨>
―ソマリア政府は「善隣の原則を尊重し、ケニアと外交関係を再開する」と発表。ユースフ情報省次官は、「両国は、友情の維持、互いの主権の尊重、内政不干渉で合意した」と述べ、「ソマリアとケニアの関係正常化へのカタールによる仲介の取り組み」に関して、タミーム同国首長に謝意を表明した。ソマリアは昨年12月、「ケニアがソマリアの反政府派民兵に武器を提供し、両国間の国境に緊張をもたらして内政に干渉し、主権と領土の一体性を侵害した」としてケニアとの国交を断絶。ケニアは当時、これを否定していた。
―ケニア外務省はソマリアとの外交関係の再開を発表し、「貿易・通信・運輸・文化交流の分野におけるソマリア当局との関係正常化を期待している」「ソマリアとの国交正常化におけるカタールをはじめとする国際社会の継続的な支援を評価する」と表明。
―タミーム・カタール首長は、ファルマージョ・ソマリア大統領とケニヤッタ・ケニヤ大統領からそれぞれ電話連絡を受けた。両者は、和解のためのカタールの取り組みと努力に謝意を表明し、首長は祝意を表明した。
―ムハマド・カタール副首相兼外相は、「カタールは、ソマリアで政治諸派が合意した期日通りの選挙の実施を支援する」「ソマリアとケニアの全当事者に緊密に連絡を取ることを促している」と述べた。
エリコの目
―イラク政府やクルド地方政府の高官は、「イスラム国」(IS)が復活する深刻な懸念を表明している。予定されている米軍の撤退が、聖戦主義者を刺激することは、過去にも例があるからだ。イスラム国を名乗る勢力によるイラク軍、クルド人部隊兵士に対するテロ攻撃が激化しており、ここ数日のうちに国内で少なくとも19人が死亡した。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―第3波の感染が拡大しているエジプトでは、政府が「新型コロナ予防措置」の強化を決定した。商業施設、カフェ、映画館等の営業時間の短縮で、午後9時以降、営業してはならない。今月6日から21日まで実施される。マドブーリ首相は「エジプトは国民の命と暮らしを守ると同時に経済活動を止めないというバランスの取れた政策を実施してきたが、世界的に感染者数が拡大している」と述べた。この他に、13-16日のラマダン明け休日中、全ての祝宴、集会を禁止した。イードの集団礼拝は、現行の金曜礼拝の制限事項を遵守した上で実施してよい。(アッシャルク・アルアウサト紙)
―エジプト保健省発表の5日の新規感染者数は1,102人、死者は64人であった。死者数は昨年12月末の第2波時の水準を超え、昨年6月の第1波の水準(97人)に迫る勢い。
<特記事項・気付きの点>
―特になし