2021年5月8日 (No.21038)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

8日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

アルアクサー・モスク敷地に突入したイスラエル部隊とパレスチナ人の衝突について特別体制で報じたため、5時、6時台のヘッドラインはなし

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―ウィーンで7日、イラン核合意の当事国による4度目の交渉が行われ、各国は「技術的協議」を始めることで合意した。イラン外務省は「技術委員会が合意案作成に向けてウィーンで核問題の交渉を続ける」「協議参加国は、できる限り早急に成果を出すべく努力することを改めて確認した」と説明。

―ナスラッラー・ヒズボラ書記長は「世界エルサレムの日」(ラマダン月の最終金曜日。イランが提唱)に際し、「イランと世界・地域・アラブ諸国との全ての対話を支持する。この対話は友人たちの戦線を強め、敵の戦線を弱める」と演説。イラクでのサウジアラビア・イラン対話を「周知のこと」と評し、ムハンマド・サウジ皇太子の「イランとの対話が必要だ」との発言について「抵抗枢軸に資するもので、地域における進展だ」と述べた。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―サウジ外務省高官は、「イランと協議を行っている」とした上で、「協議が成功することを願っている。しかし成果が出るにはまだ早い」と述べた。

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―7日夜、イスラエル警察がエルサレムのアルアクサー・モスク敷地に押し入り、音響弾、ゴム弾、催涙ガスを用いて礼拝者を攻撃し、多数を拘束した。パレスチナ赤新月社によると、イスラエル部隊との衝突で205人が負傷した。赤新月社は近郊の医療機関への負傷者搬送に加え、現場にも「野戦病院」を設けた。衝突の発生当時、モスク敷地には約3千人がいた。衝突後、イスラエル当局は国境警備隊を含む大規模部隊をモスク一帯に動員し、旧市街のダマスカス門などを閉鎖した。

―アナトリア通信によれば、イスラエルの部隊は、断食明けの食事の少し後、アルアクサー・モスク敷地に複数の門から突入し、丸腰の礼拝者を攻撃した。一方、ダマスカス門付近、東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区でもパレスチナの若者とイスラエル部隊の衝突があった。

―7日はラマダン月最後の金曜日にあたり、(日中から)アルアクサー・モスクでの礼拝に計約7万人が参加した。また集団礼拝後、モスク敷地内では集会や行進が行われ、参加者がハマース軍事部門「カッサーム部隊」とムハンマド・ダイフ司令官を称える叫びを連呼した。

―アルアクサー・モスク敷地での衝突について、イスラエル警察は「暴動を煽る者たち数百人が石やボトル等を警察の要員に投げつけたため、反撃した」と主張している。一方、イスラエル軍は、エルサレムでの緊張を背景として西岸地区に増員部隊を送った、と発表。

―上記の増援部隊の派遣に先立ちイスラエル軍は、西岸地区のジェニン北方にあるサーリム検問所で、武装したパレスチナ人グループによる攻撃を阻止。パレスチナ青年2人を射殺し、3人を負傷させた。「兵士への発砲を試みたため、即時対応した」としている。

ラーマッラー支局長の報告:エルサレムでは3週間以上、イスラエルの措置が原因で、緊迫した状況が続いていた。イスラエルはエルサレム旧市街ダマスカス門に鉄柵を設置し、(ラマダン月に推奨される特別な)タラウィーフ礼拝の後に人々が集まるのを禁じた。これが衝突をもたらし、鉄柵の撤去を余儀なくされた。しかし、闘争は間もなくシェイク・ジャッラーハ地区に飛び火した。同地区でイスラエルは、何十年も住むパレスチナ人の住居を「130年以上前にユダヤ人の所有地だった」と主張して、奪おうとしている。

そして今日、アルアクサー・モスク敷地への攻撃という新展開で再び緊張が頂点に達した。目撃者によると、イスラエル国内のパレスチナ人多数が「シルシラ門」(旧市街のユダヤ人地区に最も近い、アルアクサー・モスク敷地への門)からモスク方面に入ろうとしたところ、彼らの一部をイスラエル警察が質問で挑発し、通行させず、2人を拘束。これをきっかけに状況が暴発し、イスラエルは部隊をモスク敷地に突入させ、礼拝に集まっていた群衆と衝突した。イスラエル側は一時、モスクを閉鎖。その後、人々を退去させるためにモスクの扉を空けた際、出てきた人々にも暴行した。

例年、ラマダン月の最終金曜日には、パレスチナ各地などから約27万人が礼拝に訪れるが、今年イスラエルは、西岸・ガザ両地区からのアルアクサー・モスク訪問を禁じたため、訪問者は7万人に留まった。

イスラエル政府は2017年にもアルアクサー・モスク敷地への門に金属探知ゲートを設置して緊張を高め、パレスチナ側の抗議の高まりを受けて撤去するなど、一貫して挑発的政策を行っている。背景には「エルサレムの主権」をめぐる争いがある。イスラエル内政に利用するために緊張を高めている側面もあるようだ。

―アッバース・パレスチナ大統領は、「我々の民衆と聖地に対するイスラエルの侵害を止める責任を負うよう、国際社会に求める」「エルサレムの緊迫に関し、安保理に緊急会合の開催を求める」と声明。

―ハマースは「エルサレムで起きたことは犯罪だ」「モスクでの礼拝というイスラム教徒の権利を侵した敵に代償を払わせる」と声明。ハニーヤ政治局長は「イスラエルと(関係)正常化した国々に、正常化合意を終わらせて在イスラエル大使館を閉鎖するよう求める」と述べた。

―ナハーラ「イスラム聖戦」書記長は、「エルサレムの事態に沈黙はできない。敵は、いつでも我々の報復があると予想すべきだ」と述べた。

各国の声明は次の通り:

ヨルダン外務省:礼拝者に対する攻撃は、明白な侵害行為で、容認できない。アルアクサー・モスク敷地から直ちに警察部隊を退去させ、宗教行為を認めるべきだ。国際社会はイスラエルに圧力をかけ、そのエスカレーションとモスクへの侵害を止めねばならない。

エジプト外務省:イスラエルがモスクに押し入り、エスサレム市民と礼拝者を攻撃したことを非難する。また、シェイク・ジャッラーハ地区のパレスチナ人家族を退去させる措置を非難する。

米国務省:東エルサレムでの緊張激化、シェイク・ジャッラーハ地区の住民が退去させられる可能性について、非常に懸念している。緊迫を深刻化させる一方的な行動を避けることが重要だ。

トルコ外相:イスラエルがラマダン月に神を崇拝している人々を標的としたのは、人道の欠如した行動だ。イスラム教徒の最初のキブラ(イスラム教の黎明期に礼拝の方向と定められていた)アルアクサー・モスクへの攻撃を非難する。

トルコ大統領府:アルアクサー・モスクで今日起きた音響弾による攻撃を厳しく非難する。イスラエルの暴力的な政策とパレスチナ人への占領を、懸念をもって注視している。

カタール外務省:パレスチナの民衆と聖地を守る迅速な行動を、国際社会に求める。イスラエル部隊のアルアクサー・モスク押し入りは、世界の何百万というイスラム教徒の感情を逆なでし、人権を蹂躙する明白な国際法違反であり、最も厳しい表現で非難する。

イラン最高指導者:イスラエルは国家ではなく、パレスチナと他のイスラムの諸国民に対する「テロの陣営」だ。これと戦うことは、不正やテロと戦う公の責任だ。

○ 国際テロ・過激主義情勢

―アフガニスタン政府のスタネクザイ交渉団長は、「米軍の撤退開始後、タリバンは交渉の席に戻ると期待されたが、逆に国内各地で軍事・治安上のエスカレーションに訴えている」と批判。これに対してナイーム・タリバン政治事務所報道官は、「エスカレーションの責任はアフガン政府と外部諸勢力にある。彼らが和平協議を妨げている」と述べた。

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―エルドアン・トルコ大統領はイスタンブールで礼拝後、「エジプト国民との歴史に根差した一体性を取り戻すべく、トルコは努力する」「我が国のエジプト国民に対する姿勢は、非常に前向きだ。彼らに敵対的であることはできない」と述べた。これに先立ち両国の外務次官がカイロで協議を行っていた。

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―エジプト政府が先月28日に発表した第2期経済改革プログラムが、低所得者、中間層を更に疲弊させるのではないか、との懸念が広まっている。マドブーリ首相は、今後3年間政府の各種補助金は維持されると述べて不安払拭に努めているが、「政府の約束が守られた試しはない」との声が強い。「第1期の政策によって物価が高騰し、数千万人の国民の比較収入が減少、数百万人が貧困ライン以下の生活をしている。」(ヌーン・ポスト)

المصريون يخشون من الإصلاحات الاقتصادية الأخيرة للسيسي • نون بوست
ترجمة: حفصة جودة

中東の新型コロナ動向

―イラクでは、人々が政府を信用しておらず、ウイルスにも無頓着であるため新型コロナ対策が守られていない。そのことが、アラブ世界最大の感染を起こしている原因。ワクチン接種についても、デマが流布し人々は恐れを感じていることから、政府の接種計画が大きな制約を受けている。そのような中で、シーア派指導者のムクタダ・サドルが率先して接種を受けたことで接種希望者が急増する、という現象が起きた。人口約4000万人のイラクで、接種が完了しているのは38万人に留まっている。(アルアラブ紙)

https://alarab.co.uk/node/247301
<特記事項・気付きの点>

―イスラエルによるアルアクサー・モスク敷地への押し入り事件について、現場からの中継映像、特派員、イスラムの宗教者、パレスチナ各派、現場に居合わせた市民の話を交えて重点的に報道。

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