アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
9日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
(エルサレム情勢を連続報道する特別体制のため、「ミッドナイト・ニュース」はなし)
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ロウハニ・イラン大統領は、「イランに対する主要かつ根本的な制裁の解除で合意に至った」とし、「ウィーンでの協議は、この路線の完了に向けて続いている」と述べた。
―アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「イランの核施設への査察活動に関するIAEAとの合意の期限(今月24日)を延長する必要がなくなるよう、ウィーン協議が進展することを期待する」と述べた。
―欧州外交筋は、「ウィーンでのイラン核合意参加諸国(代表団)の任務は、多くの様々な詳細事項があるために困難なものとなっている」とし、「今回の協議は、これまでのものよりも長くなるだろう」との見方を示した。モラEU代表は、「合意に至る期限は設定されていないが、時間は全当事者にとって有利なものではない」と述べた。ウリヤノフ露代表は、「協議は続いている」とし、米に「核合意に復帰するために国連安保理決議2231を完全に順守するよう」求めた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―エチオピアは、「下流の2か国(エジプト、スーダン)との合意に至らなくとも、ルネサンス・ダムの第2段階の貯水プロセスを予定通りに完了させる」と発表した。ブルハーン・スーダン統治評議会議長は、ハルツームでフェルトマン米「アフリカの角」地域担当特使と会談した際に、(同ダムをめぐる)合意に至る必要性を強調し、「スーダンは交渉による解決を支持する」と述べた。また、ブルハーン議長は、コンゴ民主共和国大統領とも同ダムをめぐる対立について協議した。同大統領は、AU現議長として対立解消に向けた提案を提示した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル治安部隊は、ライラ・アルカドル(ラマダーン月下旬の預言者ムハンマドに最初の啓示が下された夜)にあたって非常に多数のパレスチナ人がアルアクサー・モスクに集まることを予想して、エルサレムと同市旧市街に更なる部隊を配置した。同モスクには、9万人超のパレスチナ人が礼拝のために集まっているとされる。
―上記の後、エルサレムとパレスチナ領内の各地で8日夜、イスラエル治安部隊とパレスチナ人の間の衝突が再発した。パレスチナ赤新月社によると、エルサレム地域での激しい衝突でパレスチナ人64人(0653JST時点)が負傷した。イスラエル当局は、同市のダマスカス門付近で負傷した数十人の搬送・治療に向かおうとした救急車が現場に入ることを禁じた。アルアクサー・モスクへの治安部隊の突入には至っていない。
―イスラエル治安部隊は、エルサレムのダマスカス門付近で抗議行動を行っていたパレスチナ人を解散させようとした際に、数人を拘束した。同部隊は旧市街の商店を閉鎖させ、西岸各地で抗議行動を実施したパレスチナ人の若者らを弾圧した。
エルサレムのダマスカス門から、ジャーナリストのムナー・オマリー氏の電話レポート(0500JST台、治安部隊要員が巡回する様子や放水車から放水される様子などの映像と共に報道):緊張はダマスカス門からスルターン・スレイマーン通りやヘロデ門まで1キロ以上にわたり広がっており、ヘロデ門付近ではタイヤが燃やされるなどしている。ダマスカス門広場からは人が排除され、付近の商店は閉じている。イスラエルの特殊部隊や国境警備隊など様々な部隊が重点的に配備されて巡回しており、5分か10分おきに、この地区に残っている人に対し音響弾やガス弾が発射されている。数人が拘束されたほか、数人の負傷者が出ているが、イスラエルの部隊の妨害により、赤新月社の救急車の到着が遅れている。
アルアクサー・モスク内の医療センターのパレスチナ人医師・救急医療士のアミーン・アブー・ガザーラ氏の話:(ラマダーン月中の夜に行われる)タラーウィーフの礼拝の後、モスク内のパレスチナ人の若者と糞門や獅子門から同モスクを包囲しているイスラエル軍・警察との間の緊張が非常に高まり、小競り合いに至った。自分たちの医療センターでは負傷者3人を受け入れた。頭にゴム弾を受けており、現場で治療したものの、病院に搬送せざるを得なかった。ゴム弾と言っても、鉄の弾丸をゴムでくるんだものであり、頭蓋骨の骨折に至る場合もある。他の多くの同僚や医療団体も治療にあたっていた。ガス弾による負傷者も複数いた。現在(0605JST)は、モスク内の状況は落ち着いている。
ガザ特派員のレポート(ガザ地区の夜間抗議行動の様子を撮影した映像と共に報道):ガザ地区はエルサレムでの抗議行動が始まってすぐにこれに反応し、(2週間ほど前には)同地区北部・東部に隣接するイスラエルの標的に向けてロケット弾が発射された。同地区のパレスチナ諸派がエルサレムでの出来事にこのように明確かつ大胆に反応することは、かつてない珍しいことだ。
これは同地区のパレスチナ抵抗運動の新たな戦略かもしれない。同地区のパレスチナ諸派は、イスラエル軍に対し「自分たちはエルサレムやアルアクサー・モスクで起きていることに対し、もはや手をこまねいてはいない」という立場を示そうとしている。(ハマース軍事部門の)カッサーム部隊の総司令官は、「ガザ地区の同部隊や他の諸派はエルサレム市民に対する暴力行為に対する反撃の用意をする」と表明。イスラム聖戦書記長は、「イスラエルは、いついかなる時にもパレスチナからの反撃があると予想すべきだ」と発言している。
また、ガザ地区東部のイスラエルとの境界にあるフェンス沿いで夜間の抗議行動が行われ、パレスチナ人の若者数百人がタイヤを燃やし、フェンスや境界沿いのイスラエル軍の拠点に向けて音響弾を投げ込んだ。これに対し同軍は照明弾数十発とガス弾多数を撃ち込んだほか、実弾も発射した。そのために、若者多数が窒息状態に陥ったほか、実弾による負傷者が出たとの情報もある。
このように、エルサレムの状況が長引くほどに、ガザ地区の緊張も徐々に高まり、情勢が悪化する可能性も指摘されている。(ガザ地区の諸派による反撃のための今後の行動としては)エルサレムと連帯した形での境界フェンス付近での「ガザ地区封鎖打破と(難民)帰還のためのデモ行進」を再開させることが考えられる。あるいは、諸派が西岸やエルサレムでの(対イスラエル攻撃)作戦やイスラエルに向けたロケット弾発射に出る可能性も排除できない。こうした中、(ハマースとイスラエルの間の)仲介役のエジプトが、これまでの成果を台無しにするような緊張の緩和に尽力している。
―パレスチナは、ヨルダン・カタールとの協議の後、アラブ連盟に常駐代表会合ではなく閣僚級臨時会合の開催を要請した。カタールは、この要請を支持すると表明。
―上記に先立ち、マーリキー・パレスチナ外相は「国連の安保理と人権理事会にイスラエルによるエルサレムでの暴力行為の激化について協議するための会合を開くよう要請する取り組みが続いている」とし、「カタールが議長を務めるアラブ連盟の緊急会合が10日に、OICの緊急会合が11日にそれぞれ開かれる予定だ」と明らかにした。
―米ニュース・サイト「アクシオス」は、米とイスラエルの当局者の話として「米国務省の当局者らが7日夜、パレスチナとイスラエルの外務省当局者らと話し、エルサレムと西岸地区の情勢を落ち着かせるよう求めた」と伝えた。同サイトによると、プライス国務省報道官は「国務省の当局者らがパレスチナとイスラエルの高官と連絡を取り、緊張を緩和し暴力行為を終わらせるために協力的に行動するよう促した」と確認した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンの治安関係筋によると、首都カブール西部にある学校を狙った爆発により、50人が死亡、約100人が負傷した。ガニ大統領は、「この攻撃の背後にはタリバンがいる」と非難した。しかし、タリバン政治事務所の広報担当はこの攻撃について、「ISの名を借りて、アフガン政府・情報機関の保護の下に活動している邪悪なサークルによるものだ」と非難した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―アフガニスタンのタリバンがここ数日国内各地で攻勢を強めている。タリバンは、政府と和平交渉を行いつつ、同時に、1日から始まった米軍撤退の機に乗じてアフガニスタン全土の完全支配を目論んでいるのだ。アルカーイダ、イスラム国等の組織は現在も存続しているため、今後同国が再びイスラム聖戦主義組織の庇護地となる恐れがある。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―チュニジア政府は、ラマダン明け休日を含む期間(5/9-19)、全国を「完全封鎖」状態とすると発表した。新型コロナ感染の再拡大に対抗するためで、ムシーシ首相は「医療が崩壊する懸念」があると述べた。封鎖措置とは、可能な限り不要不急の外出をしないこと、学校・商業施設・モスクの閉鎖、県境をまたぐ移動の禁止、等。同国では夜間外出禁止令が発動中であるが、感染拡大に歯止めがかかっていない。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―エルサレム各地からの生映像を流しながら、現地からのレポートや関係者・識者のインタビューを交えて、エルサレム情勢を重点的に連続報道。その中で、イスラエルが一部パレスチナ人住民の立ち退きを決定した東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区を特派員が歩き、同決定やイスラエルによる民家への嫌がらせ攻撃に怒る住民の声を聞いた。