アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
10日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
エルサレム各地の緊迫した情勢、パレスチナ人とイスラエル当局の衝突の様子を特別体制で報道したため、ヘッドラインはなし
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―アラグチ・イラン外務次官は、ウィーンでEU代表団のモラ代表および欧州の核合意当事国の代表と会合した。ウィーンでは「作業グループ」レベルの協議が行われる一方、核合意当事国の次官級の代表が会合に備えて滞在を続けている。
―ウリヤノフ露IAEA大使は、「核合意に関する対イラン交渉の終了日は未定」とした上で、「目標は今月21日までの合意成立だ。それ以降も協議が続いた場合のリスクや疑念を回避するためだ」と述べた。
―バエジ・イラン大統領長官は、ウィーンでの交渉について「困難はあるが、適切に進んでいる」「過去数日の協議に鑑みて、結果を楽観できる」「イランは高位当局がウィーンでの協議を監督している。協議参加の目的は、制裁を解除してイラン国民の権利を保障することだ」とツイート。
―シリア国営通信は、シリア石油輸送社(SCOT)筋の話として、地中海のバニヤス沖で停泊中の石油タンカーで、技術的不具合のために小規模な火災が発生し、黒煙が上がったと報道。「乗組員が直ちに消し止め、損害はなかった」という。これより先、露のスプートニク通信は「バニヤス沖に停泊する石油タンカーでメンテナンス作業が原因の爆発が起きた。原油は既に陸揚げされていた」と報じた。
―SANAは、トアマ石油・鉱物資源相の話として、ホムスの主要な製油所で火災があったと報道。「蒸留塔から別塔に原油を移す際に350度の高温物質(石油蒸気)が漏れ出たのが原因」「火災発生か所とは別に3つの蒸留ユニットがあり、安定した操業を続けている」という。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―サウジ巡礼省は今年(7月)の大巡礼について、新型コロナ感染対策を徹底した上で実施する方針を示した。「引き続き状況を評価し、健康確保に必要な全ての措置をとる」「巡礼実施のための具体的な規則や計画は追って発表する」という。昨年の大巡礼は、サウジ国内の約1万人に限定、厳格な規則を課して行った。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区、旧市街ダマスカス門前で9日、イスラエル軍がパレスチナ市民を攻撃し、計14人を拘束。赤新月社によると、各地の衝突で14人が負傷、うち4人を病院に搬送した。ヘロデ門付近でも衝突があった。シェイク・ジャッラーハ地区では、イスラエル軍は、地区のパレスチナ人家屋の扱い(強制収容)に関する判決言い渡しが延期されたことを祝う活動家たちを放水等で解散させる一方、ユダヤ人入植者の集会継続は認めた。
―ヘブライ大学の門周辺で、パレスチナ人とユダヤ人の学生が衝突。イスラエル部隊が催涙ガス等を用いて解散させ、パレスチナ学生複数を拘束した。一方、ハイファで「エルサレムを支援するため」のデモを行ったパレスチナ人のうち、15人が拘束された。
―イスラエル警察は、エルサレムのアルアクサー・モスク周辺の部隊を強化し、約3千人を配置した。また、3つの大隊を西岸地区のパレスチナ人との接触地点に派遣した。警察は、10日に予定されている「エルサレム統一の日」を祝う行進(入植者約3万人が参加見込み)のルート(旧市街のマアミ二ッラー(マミーラ)墓地を出発、ダマスカス門に向かう)変更を検討している。アルアクサー・モスク敷地に入植者が入るのを認めるかを含め、イスラエル政府の方針を踏まえ、10日朝に決定する。
―各地の特派員の話
ダマスカス門前:10日午後4時頃から入植者の(上記)「旗の行進」があり、ダマスカス門を通過する予定。このルート変更を余儀なくさせれば、抗議するパレスチナ人にとって「小さな勝利」ながら、エルサレムをめぐる争いという文脈では大きな意味を持つ。9日は、ダマスカス門、ヘロデ門にイスラエル軍部隊が集中的に配され、パレスチナ人を一帯から排除しようと試みている。一方、アルアクサー・モスクで礼拝を行った人々は、9日夜、多くがモスクを出たが、一部は政治指導者の呼びかけに応じて「モスクをイスラエル軍の突入から守るため」に内部に留まる模様。
ラーマッラー:パレスチナ諸派は、選挙延期をめぐり対立していたが、「エルサレムはレッドライン(譲れない一線)」という点で結束したようだ。「インティファーダ世代」を支持する人もしない人も、各組織がこぞって、若者主導のデモ行進に加わった。
一方、ラーマッラー近辺で発生した火災は、パレスチナの若者によるもの。これに先立ちイスラエル当局は、西岸地区の行政施設周辺の街灯を消しており、若者たちは「夜闇にまぎれてアラブ人を装ったイスラエル当局要員が介入・拘束を行う」ことを懸念。視界を確保して事態を見通せるようにと、タイヤを燃やし、草叢に火を放った。
ラーマッラーでもエルサレム各地でも、衝突現場にいるのは(動画投稿アプリ)「TikTok」世代と呼ばれる子供や若者だ。彼らは恐れを知らずにイスラエル兵に相対している。(これについて、スタジオのキャスターは「この世代は、あらゆる場面を撮影してSNSに投稿する。これがイスラエル軍の、過去と比較しての『自制』につながっている可能性がある」「イスラエル兵に拘束される時でさえ若者がほほ笑む様子が、イスラエル側でも大きく報じられ、当局を刺激すると共に、懸念させている」とコメント)。
シェイク・ジャッラーハ:イスラエル当局は、抗議する若者の意志を挫こうと、暴力的な対応、拘束・連行、取り調べの際の暴行に訴えているが、その「効果」はみられない。衝突の現場では、パレスチナの若者が拘束されそうになるたび、周囲の仲間たちが「微笑もう」と声をかけている。
(イスラエルの部隊は、パレスチナ側に死者を出さないよう注意を払っているか、との問いに対して)一般にイスラエル政府は、エルサレムの状況激化や、その他地域への波及を望んでいない。ただし、2日前のアルアクサー・モスク突入と礼拝者への攻撃時は上半身に狙いを定めて(ゴム弾等を)発射していた。頭蓋損傷や、失明した人も出た。殺害に至るのは避けつつ、意図的に負傷させようとしている可能性がある。
―イスラエル軍は9日夜、ガザ地区からロケット弾2発が発射されたと発表。うち1発は「アイアン・ドーム」がアシュケロン上空で迎撃し、もう1発は空き地に落下した由。また(上記と別に)ガザ地区からロケット砲2発が発射されたが地区内に落下したという。さらに発火物を括りつけた風船もガザ地区から放たれ、イスラエルの入植地近くの農地を焼いた由。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンは、「イード・アルフィトル(ラマダン明けの祝祭)の3日間、国内全土で敵への攻撃を停止する」として、同期間の停戦を表明した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―イスタンブールのイスラエル領事館前で、イスラエル当局のアルアクサー・モスク突入などに抗議し、数百人がデモを行った。
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―パレスチナの駆け出し女性記者モナ・アルクルドさん(23歳)の活躍でシェイク・ジャッラーハの真相が世界に拡散:モナはベイルート大学でジャーナリズムを学んだ後、シェイク・ジャッラーハで入植者による「家屋強奪」の現状をインスタグラムで伝え始めた。1万3千人に過ぎなかったフォロワー数は、30万人に急増した。モナは、「地元の人々の期待が大きいので大事な仕事だが、自分ひとりの業績ではない。多くの活動家の貢献がある」と述べた。(アルアラビー・アルジャディード紙)
中東の新型コロナ動向
―シリア北東部ハサカ県のアルホウル難民キャンプ(約6万人収容)では、今月に入り39人の新型コロナ感染が確認されている他、6人が死亡、国連関係者は、感染の拡大を懸念している。ドジャリク国連事務総長報道官は「シリア全体の心配をしているが、その中にはアルホウル・キャンプも含まれる」と述べた。同キャンプはシリア国内で最大の難民キャンプで、元イスラム国戦闘員の家族(婦女子)が多く収容されている。(アッシャルク・アルアウサト紙)
―UAE保健省は9日、過去24時間で約1万9千回の新型コロナワクチン接種が実施され、累積では1,114万5,934回の接種が完了したと発表した。これは、同国の人口100人当たり、112.69回の割合である。(アルバヤーン紙)
<特記事項・気付きの点>
―エルサレム各地等のパレスチナ人とイスラエル当局の衝突について、現場からの中継映像、特派員の話を交えて重点的に報道。