アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
11日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
(エルサレム、ガザ地区、西岸地区等のパレスチナ各地の情勢を特別体制で報道したため、ヘッドラインはなし)
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―10日、イスラエル軍参謀本部は、ガザ地区のハマースを含むパレスチナ抵抗勢力幹部らを標的として激しい空爆を行うと警告し、これを開始した。この空爆により、パレスチナ人の少なくとも20人が死亡、数十人が負傷した。死者のうち9人が子供だった。パレスチナ諸派軍事部門の合同作戦室は、「エルサレムのアルアクサー・モスクとシェイク・ジャッラーハ地区での攻撃に対する報復として、イスラエルに向けてロケット弾を100発以上発射した」と発表した。
―イスラエル軍は、「ガザ地区からイスラエルに向けて、ロケット弾約150発が発射され、そのうち数十発を迎撃した」と発表した。
―イスラエルのネタニヤフ首相は、「ガザのパレスチナ人らは、イスラエルの強い反撃を目にすることになるだろう」と警告した。
―10日、エルサレムのアルアクサー・モスクの敷地で、イスラエルの治安部隊とパレスチナ人らが新たに衝突。治安部隊が発射したゴム弾によって失明する人が続出した。衝突による負傷者は約400人に達した。その中には救急要員らも含まれる。情勢が激化しているのはエルサレムやガザ地区のみではなく、西岸地区の諸都市でも衝突がみられ、実弾や催涙ガス弾等により約60人が負傷したとの報告が ある。
―エルサレム特派員(ダマスカス門前):イスラエルの治安部隊は、夜間の礼拝の後にアルアクサー・モスクから平和的に退出してダマスカス門前の階段に座って休憩しようとした人々やその場にいたジャーナリストらに対し、理由もなく音響爆弾を多数発射し、汚水を浴びせた(その後、獅子門でも同様の攻撃を行った)。10日の夜は、エルサレムでのここ数日のイスラエルによるパレスチナ人弾圧が最も激しい夜となった。パレスチナ赤新月社の発表によると、本日のエルサレムでの衝突で395人が負傷し、一部は重傷を負って手術室に運ばれた。パレスチナ人が旧市街から退出し続ける中、さらなる負傷者が出ることが予測され、赤新月社の救急車がダマスカス門周辺に集まってきている。
(イスラエルがガザ地区の周辺80キロの範囲で緊急事態を宣言したのは何を意味するのかとの質問に対し)イスラエルには、ガザの抵抗勢力がテルアビブやそれ以上に遠い地域までロケット弾の射程を広げるとの情報があるのかもしれない。あるいは、イスラエル側がガザに対して今後広範な軍事作戦を実行するにあたり、また今後数日に情勢が激化することを想定して、これらの地域の治安上の準備や、消防や救急関連等のあらゆる情勢に対応するための準備を行おうとしているのかもしれない。ガザから80キロということは、テルアビブと同市南郊、その他のイスラエル中部の大都市が含まれる。テルアビブ市当局は、避難所を開放した。ベエルシェバ、アシュケロンなどの他の多くの都市でも避難所が開放され、学校が閉鎖された。
―カランディア検問所特派員:西岸地区ラーマッラーとエルサレムの境界にあるカランディア検問所で、衝突が発生した。イスラエルの治安部隊がパレスチナ人のデモ隊に銃弾を発射。また、カランディア難民キャンプに突入して、催涙ガス弾を発射した。赤新月社によると、ジャーナリストらも標的となった。衝突は西岸地区全体に広がり、カルキリヤ、ナブルス、ベツレヘム、フワーラ、ジェニン等の各地で負傷者が数十人出ている。エルサレム、西岸地区、イスラエル領(グリーンライン内)のパレスチナ人多数居住地域、ガザ地区といったパレスチナ全域で情勢が激化しているといえる。
―ガザ特派員:(0618JSTの)少し前にガザ市東部周辺からイスラエルにロケット弾が集中的に発射され、防空システム「アイアンドーム」が作動したようだ。ガザ地区の境界フェンスから約20キロの範囲内に向けて発射されたものだ。パレスチナ抵抗勢力は、これまでもガザの各地からイスラエルの各方面にロケット弾を何度も発射している。まずエルサレム中心部を狙い、その次に少なくともロケット弾1発でテルアビブを攻撃し、さらにガザに隣接する地域にあるほぼ全ての街・入植地に向けてロケット弾を多数打ち込んだ。抵抗勢力は、イスラエルによる攻撃・空爆に反撃している模様。イスラエル軍は、空爆で最大限の犠牲者を出すため偵察用無人機を使用。先ほど、ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」のアブ・オベイダ広報担当は、「イスラエルの部隊が2時間以内にアルアクサー・モスクの敷地内の礼拝者らに対する封鎖を解かなければ、抵抗勢力は相応の反撃を行う」とツイッターで発表した。つまり、イスラエル側に対し、新たに2時間の猶予を与えたことになる。
―イスラム聖戦政治局のムハンマド・ヒンディー局長(イスタンブール):今エルサレムを率いているのは若者たちだ。これは前向きで重要な進展であり、我々はこの方向性を支持する。我々は、現在のエルサレムでの動きが、民衆全体の「インティファーダ」(蜂起)になることを望んでいる。パレスチナ抵抗勢力はアルアクサー・モスクの礼拝者からの反撃を求める声に応じ、イスラエルにメッセージを送った。イスラエルはエルサレムの礼拝者やシェイク・ジャッラーハ地区への攻撃を止めるべきだと。しかし、同国は「ガザ地区側には何の手段もなく、エルサレムの住民の状況を眺めているだけだろう」と予測して、攻撃を続けた。しかし、この状況に沈黙すれば、我々には何の価値もないことになる。エルサレムの人々が反撃を求めれば、我々は反撃するのだ。しかし、全体としては、これが「パレスチナの民衆全体のインティファーダ」になることを望んでいる。
―ラブロフ露外相とチャブシオール・トルコ外相、電話会談で(エルサレムでの)情勢激化に対する懸念を表し、イスラエルによるシェイク・ジャッラーハ地区の住民の強制退去措置を非難。
―アッバース・パレスチナ大統領、イード・アル・フィトル(ラマダーン月の断食明けの祝祭)の祝賀行事を中止して、宗教儀式のみを行うと決定。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イランのザリーフ外相は仏TV・Arteとのインタビューの中で、「米国がイラク戦争を始める前と後に、同国と『直接協議』した」と述べた。当時ザリーフ外相は国連大使を務めていた。同外相は「すべて故スレイマーニ革命防衛隊司令官と調整の上、米側と情報交換をした。もちろん、米国がイラクを攻撃することに反対して、現在イラクで起きているような事態が起きる、と警告した」とのこと。(アルアラビー・アルジャディード紙)
中東の新型コロナ動向
―エジプトは、6月末までに中国・シノバック社の新型コロナワクチン2百万回分の現地生産を完了する。同国政府の発表。また、ザーイド保健相は、現地生産のための「ワクチン原料」が今月18日からエジプトに到着すると述べた。エジプト・ヴァクセラ社はシノバック社の協力を得て今年中にワクチン4千万回分を生産予定。(アッシャルク・アルアウサト紙)
―エジプト大統領の医療顧問は、「既に百万人以上が新型コロナ・ワクチン接種を受けた。危険・重篤な副反応は報告されていない」と述べた。(上記と同じ記事)
<特記事項・気付きの点>
―エルサレム、ラーマッラー、ナブルス、ガザ地区等のパレスチナ各地の映像を背景に特派員報告や専門家の話を聞くなど、関連情勢のみを取り上げて連続報道。