アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
12日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
イスラエルとパレスチナ・ガザ地区の攻撃の応酬や、双方の緊迫する状況を特別体制で報道したため、ヘッドラインはなし
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―11日、エルサレム、ガザ地区、テルアビブとその周辺などで、攻撃の応酬に伴い情勢が激化した。ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」は、「ロケット弾130発を発射し、テルアビブとその郊外、ベングリオン空港、アシュドッド、アシュケロンを攻撃した」と発表。イスラエルによるガザ地区の住居に対する空爆への報復だとし、「抵抗運動による過去最大の対イスラエル作戦だ」と主張している。イスラエルの防空システム「アイアン・ドーム」は、多数のロケット弾の迎撃に失敗した。
―イスラエル救急当局によると、テルアビブ近郊ホロン市で、ガザ地区から発射されたロケット弾がバスを直撃するなどし、2人が死亡、26人が負傷。また、ホロン市郊外のビルがロケット弾で損傷。さらに、リション市で女性1人が死亡、テルアビブで1人が重症を負った。テルアビブ中心部では、通常は深夜営業している商店やカフェなどが、ガザ地区からの攻撃を受けて軒並み閉店。
―ベングリオン空港の近くにガザ地区からのロケット弾1発が着弾。空港当局は便の運航を停止し、利用客を空港外に避難させた。また、全ての到着便をギリシャ、キプロス行きに変更した。
―イスラエルは、中部ロード市に非常事態を宣言し、同市に国境警備隊の16部隊を派遣すうよう命じた。ロード、ラムラ、アッカ、ハイファ、ウンム・ファフムなど、パレスチナ人とユダヤ人が混住する都市や村で両者の衝突が起きている。
テルアビブ特派員:ロード市では11日、前日の「エルサレム支援デモ」に参加した際に入植者に撃たれ死亡したパレスチナ男性の葬列に多数が参加。市内でアラブ住民とユダヤ住民の衝突が激化して統制不能となり、市長が政府に部隊派遣を要請した。一方、テルアビブにもロケット弾攻撃が及び、アラブ住民とユダヤ住民の間で緊張が高まり、複数の地区が閉鎖状態となっている。アラブ住民からは、「アラビア語を話していると身の危険を感じる」との声も聞かれるほどだ。
―イスラエル軍は11日、ガザ市北方のジャバリヤなどを空爆し、女性1人が死亡、子供を含む複数が負傷した。空爆で住居棟が倒壊した。前日からのガザ地区での犠牲者は、死者30人(うち子供と女性が10人)、負傷者203人となった。イスラエルは「ロケット弾発射を準備していたハマースの細胞を標的とした」としている。また、イスラエルの戦闘艇が、ガザ地区の海岸やスーダニーヤ地区を砲撃した。ガザ地区への空爆は11日深夜も行われた。
―イスラエル軍参謀総長は、「ガザ地区の500の標的を攻撃し、破壊活動を行う者数十人を死亡させ、インフラ多数を破壊した」と述べた。また、イスラエルのメディアは「80機がガザに対する空爆実施に備えている」と報道。イスラエル軍は、ガザ地区との境界近くに戦車部隊を追加派遣、重量級の砲台を配備した由。
―イスラム聖戦の軍事部門「エルサレム旅団」は、短い声明で、ガザ地区の集合住宅に対するイスラエルの空爆で現場指揮官3人が死亡したと発表。ハマースの「カッサーム部隊」も短い声明で「イスラエルの空爆対象に、敵に対抗する備えをしている隊員がいる場所が含まれ、死者・行方不明者が出た」と発表。
ガザ特派員:11日深夜も、ガザ市の北東などへのイスラエル軍の空爆が続いた。空爆の標的の多くはパレスチナ抵抗運動の拠点とみられる。ただ、ガザ市内で13階建てのマンション「ハナーディ・ビル」が空爆されて倒壊。こうした民間の住居に対する攻撃は、2014年ガザ侵攻の終盤を思わせる。今回、建物の多くは空爆を警戒して予め退避が行われていた。一方、ガザ地区からのロケット弾の発射も続いている。アシュケロン南方ジキム(ガザ地区に隣接)で大規模な火災が1時間半以上続いているのが、ガザ側からも確認できる。これはロケット弾攻撃によるもののようだ。ジキムには発電所や大規模燃料タンクがある。
ガザ・アズハル大学のムハイマル・アブ・サアダ教授(政治学)の話:ガザ地区の「抵抗運動」組織は、ラマダン中でイード・アルフィトル(ラマダン明けの祝祭)を控えたこの時期、事態を激化させる意図はなかったとみている。しかし、エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区のパレスチナ住民に対する退去措置、イスラム教徒の尊厳を傷つけるアルアクサー・モスク敷地への度重なる押し入りなどを受け、反撃を余儀なくされた。イスラエル首相、国防相、軍トップの発言や、イスラエルが11日夜にガザ地区の民間住居を激しく攻撃したこと、また、これに抵抗運動側が直ちにテルアビブへの砲撃で応じたことから、今後の更なるセスカレーションを予想している。短時間での収束は見通せないだろう。
イスラエル政府首脳が意図的に戦闘にパレスチナ側を引き込んだとまでは言えないが、次のことを指摘したい。ヨルダン政府がシェイク・ジャッラーハ地区のパレスチナ住民の土地・建物の所有権を示す文書を提示したにも拘わらず、退去措置が強行されている状況は、イスラエルの政治指導者が主導しているものだ。またアルアクサー・モスクへの立ち入りも、イスラエル政府の後押しがあってこそ起きている。
ガザ地区の抵抗運動は、イスラエル側のこうした挑発的行為により、また「エルサレムからの救援の呼びかけ」もあって、具体的な行動をとらざるを得なくなった面がある。組閣に失敗したネタニヤフ首相は、軍事衝突の継続を、首相続投のために政治利用しようとしているように見える。
―ネタニヤフ・イスラエル首相は11日、ガザ地区の抵抗運動が反撃を宣言したのに対し、「昨日からハマースとイスラム聖戦に対して数百回の攻撃を実施した」「この攻撃の力を強める。ハマースは予想もしない攻撃に晒されるだろう」と述べた。
―ハニーヤ・ハマース政治局長は、「パレスチナ人の全ての勢力がエルサレムを防衛する戦いで結束している」「パレスチナ抵抗運動は、占領者の過激派にアルアクサー・モスクからの撤収を強いた」と演説した。
―イスラエルの部隊は11日夜、エルサレムのアルアクサー・モスクの敷地に突入、モスクに泊まり込んで礼拝などを行っている人々を包囲。モスク内にゴム弾、催涙弾を打ち込んだ。エルサレムのイスラム寄進財当局によると、イスラエルの部隊はその後、モスク敷地から撤収。情勢は落ち着きを取り戻した。
―エルサレムの旧市街や周辺(ダマスカス門前、トゥール地区、ラアス・アームード地区など)でパレスチナ人とイスラエルの部隊が衝突し、イスラエル側の発砲などでパレスチナ人15人が負傷した。
―国連安保理の議長(中国の国連大使)は、「12日に東エルサレムやガザ地区の状況に関する2度目の緊急会合を開く」「沈静化と敵対行為停止に向けた行動での、全ての理事国との協力を期待する」とツイート。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―様々な政治的危機に直面しているネタニヤフ首相は、戦争を起こすことで保身を図るのではないか。戦争ともなれば、挙国一致内閣の樹立が可能だろう。イスラエルはこれまで、国内問題からの出口を確保するために戦争に訴えた過去がある。しかし、「抵抗枢軸」(イランとその影響下の勢力)が優勢に立ち回り、国際社会もイスラエルの占領政策への批判を強めている中で、イスラエルが次の戦争に勝利できる保障はない。(アルマヤディーン・ネット)
中東の新型コロナ動向
―8日、モロッコ政府は高齢者から順次実施している新型コロナ・ワクチン接種について、50-55歳の人を対象とする接種を開始すると発表した。モロッコでは今年1月から「シノファーム」と「アストラゼネカ」製ワクチンの接種を開始、既に950万回が実施されている。モロッコの人口は約3600万人だが、現在までに約543万人が一回以上の接種を受けている。(アナドール通信)
―モロッコの11日の新規感染者数は242人、死者は6人で、引き続き感染は抑えられている。
<特記事項・気付きの点>
―パレスチナ、イスラエル各地の状況を、現場からの中継映像、特派員らの話を交えて重点報道。