アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
16日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
(パレスチナ・イスラエル情勢に関する特別報道体制で「ミッドナイト・ニュース」がなかったため、ヘッドラインはなし)
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―ハマース軍事部門カッサーム部隊のアブー・オベイダ広報担当は現地時間の16日午前零時(0600JST)過ぎ、「ガザの『ジャラーア・タワー』を始めとする複数のタワーに対するイスラエル軍の空爆への報復として、ガザ地区からテルアビブに向けてのロケット弾発射を再開した」と発表。同部隊は、現地時間の15日午後10時から16日午前零時までの2時間にわたる対テルアビブ「停戦」(ロケット弾攻撃の停止)を表明していた。その後、イスラエルの消息筋は「16日午前零時過ぎに2度にわたるロケット弾発射が行われ、テルアビブとイスラエル中部に42発が着弾した」と伝えた。ロケット弾は、イスラエル南部や沿岸部に向けても発射された。
―上記ロケット弾発射を受けて、イスラエル軍はガザ地区に対する空爆を再開した。同軍はガザ市内の各地を激しく空爆。また、同地区北部のジャバリヤ東方では、パレスチナ人の一団が空爆を受け、医療関係者によると、1人が死亡、3人が負傷した。
―パレスチナ保健省は、「西岸地区北部のトルカレムでイスラエル軍の発砲によりパレスチナ人2人が死亡した」と発表。
(以下は、上記以前の報道)
―イスラエル軍は15日、ガザ市中心部のリマール地区にあるイスラム・ナショナル銀行を空爆した。また同軍の戦闘機が同市西部の「アンダルス・タワー」(住宅建物)をミサイルで攻撃した。東エルサレムのイーサーウィーヤでは、パレスチナ人とイスラエルの部隊の間で衝突が発生した。パレスチナ保健省は、「西岸地区各地とエルサレムでの衝突で、イスラエルの部隊の発砲により545人が負傷した」と発表。また、イスラエル領内のウンム・ファハムでは、ガザ地区攻撃を非難するパレスチナ人のデモが再び行われ、治安部隊との衝突が再発した。
ガザ特派員のレポート:イスラエル軍は15日、ガザ地区各地で住宅建物を狙った空爆を再開した。同軍は空爆と並行して、同地区中部のマガージー難民キャンプやブレージュ難民キャンプの東部に対する砲撃も継続し、音響弾多数が撃ち込まれた。同地区南部のスーダーニーヤ地区やハーンユーニスの沿岸部に対する軍艦からの砲撃も行われた。ガザ市西方のシャーティウ難民キャンプの住宅や同地区中部のヌセイラート難民キャンプにあるパレスチナ諸派の拠点も標的となった。
エルサレム特派員のレポート:イーサーウィーヤを始めとするエルサレムの多くの地区や町で衝突が発生している。イーサーウィーヤの東の入り口では激しい衝突となっており、イスラエルの部隊が抗議するパレスチナ人の一団に音響弾や催涙ガス弾を発射して弾圧している。ゴムでくるまれた金属弾も用いられている。シュウファート難民キャンプやシルワーンでも激しい衝突が起きている。また、トゥール地区にあるマカーシド病院がイスラエルの部隊から侵害行為を受け、建物の入り口に廃水が放水された。同病院は、最近の衝突での負傷者の多数を受け入れている。同病院には以前にも、負傷したパレスチナ人の若者を拘束するためにイスラエルの部隊が何度も押し入っている。今回はまだ部隊が病院内に入るのかどうかは不明。
―イスラエルのメディアは15日、「ガザ地区から新たに発射されたロケット弾が南部のアシュケロンとテルアビブ中心部に着弾した」と伝えた。一部は「アイアンドーム」によって迎撃された。
アシュケロン南部からの特派員レポート:15日、アシュケロン、アシュドッドなどイスラエルの複数の都市にロケット弾数十発が着弾し、建物に被害が出たほか、一部で停電が起きた。標的の中心となったのはテルアビブと同市郊外で、同市東郊のラマトガンでは民家にロケット弾が着弾し、イスラエル人1人が死亡、数十人が負傷した。
―ネタニヤフ・イスラエル首相は、TV演説で「自国民を守る権利はすべての国にある」とし、イスラエルの自衛権を支持した米に感謝した。また、「ガザ地区に対するイスラエルの軍事行動は必要なものであり、強烈な行動が続くだろう」「イスラエルはテロ組織に対する強い攻撃を続け、これら組織のトンネルなどインフラを破壊する」「我々はテロ組織の事務所のあるタワーを破壊する」と強調。また、イスラエル国内各地で起きている(暴力)事件については、「非常に危険なものだ」とし、「これらの事件は暴徒集団によるもので、ユダヤ人を襲撃している。我々が活動を停止させるべき集団がいる。彼らを支持する者はすべて高い代償を支払うことになるだろう」とし、「現在起きている出来事は『テロ』とのみ定義されるものだ」との見方を示した。更に、「今後も楽でない日々が続くだろうが、我々が勝利するだろう」と述べた。
アフマド・ハーフェズ・エジプト外務省報道官(カイロ)の話:まず、現在起きていることは、より大きな問題、つまり2国家解決による和平や安定・安全の実現への政治的展望が開けないことにより引き起こされた症状だと言える。現状ではもちろん、事態の激化の停止と完全な鎮静化に向けて取り組むことが優先であり、我々もすぐに対応して現在も活動を続けている。しかし、より大きな問題の根本に対処しなければ、現在の事態を制御して将来(の安定)を期待することはできないだろう。そのためエジプトはずっと、和平を実現しパレスチナ国家の樹立に繋がる政治的解決路線を進め、あらゆる問題を扱う和平プロセス・交渉に重点を置くよう呼びかけてきている。現在の事態について、エジプトはその鎮静化に向けて、パレスチナ・イスラエル双方のほか米や関係諸国・国際機関との協議を続けている。今回の一連の出来事に対する域内外の各国政府や市民の反応は、包括的な政治的解決に至ることの重要性を証明し、パレスチナ問題がまだアラブにとっての第1の問題であり、地域の安定の主要な柱であることを証明している。
―国連安保理現議長国の中国の国連大使は、「16日に開かれる中東情勢に関する安保理会合で、各国は(パレスチナ・イスラエル間の)即時停戦に向けて声を1つにすべきだ」と述べた。
国連問題専門家のアブドルハミード・シヤーム氏(NY)の話:(上記の)安保理会合には、パレスチナ、チュニジア、エジプト、アルジェリアの4か国外相が出席する予定で、閣僚級の会合となる見通しだ。この会合で安保理が立場を1つにすることを望むが、個人的には、米国連大使が「停戦と交渉に戻る」ことを求め、他の理事国に連携するようはっきりと「指示」しない限り、こうした立場には至らないものと思っている。ただし、米を除く安保理理事国は、「即時停戦が必要」との点でほぼ一致している。
今回の出来事は、バイデン政権にとって対イスラエル関係での初めての試練となるものだ。政権はもちろんイスラエルの歴史的な立場を支持している。また、イスラエルを明確に支持する米議会からの圧力もあり、議会に配慮している。イスラエルに対する国際的非難の声が高まって面倒な問題となり、すぐに勝利できない中でネタニヤフ首相が攻撃続行に何の政治的利益もないと判断し、この問題から脱却することを望めば、米も他の理事国と歩調を合わせることになるだろう。しかし攻撃を続行するつもりなら、16日の安保理会合で理事国の立場が一致することはないだろう。
(イスラエル軍の空爆を受けた)「ジャラーア・タワー」は、15年前から通信社やTV局が入っていることで知られており、政治的組織とは一切関係がない。イスラエルがこのビルを破壊したのは、ここから配信・放映される「ガザ地区でのイスラエルの犯罪行為」に関する映像やレポートを止めるのが目的だったのだろう。米もその目的を知っており、こうした攻撃や民間人に対する攻撃に呆れ始めて(下記のような発言に出て)いるものと思われる。
―米国連大使は、「安保理は、米大統領が述べたように、報道関係者を尊重し、彼らを暴力から保護すべきだ」と述べた。(アルジャジーラを含む)各国の報道機関の支局が入ったガザの高層ビル「ジャラーア・タワー」に対するイスラエル軍の攻撃を受けての発言。
―アンマン、ワシントン、ロンドン、オタワ、サンパウロなど世界各地で、イスラエル軍によるガザ地区攻撃を非難し、パレスチナに連帯するデモが行われた(これらの映像を放映)。他に、独・仏・イラク・レバノンでも同様のデモが行われた。カタールの首都ドーハでは大規模集会が開かれ、ハニーヤ・ハマース政治局長がスピーチした。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―12日夜、イスラエル各地で入植者とイスラエル・アラブ人の間で衝突が起きたことを受け、リブリン・イスラエル大統領は「内戦勃発の危険」を警告した。TVのインタビューに「イスラエルの街中で戦争が起きている。人々が沈黙する中、信じられない光景だ」、「狂気に囚われてはならない。私達は一つの国、社会だ」と述べた。主な事件:入植者数十人が若者を襲撃、アラブ人商店を破壊(バトヤム)、ユダヤ人の若者が狙撃され重体。その前々日にはアラブ人の若者が入植者に射殺された(ロッド)、アラブ人住民がユダヤ人運転手を殴打(アッカ)、ユダヤ人経営のレストランに放火(同)、抗議デモのアラブ人を警察が音響弾で規制(ヤッフォ)。(BBCアラビア語)
中東の新型コロナ動向
―新型コロナ感染を早期に発見し適切な隔離を実施するとの基本方針に基づき、アラブ首長国連邦ではPCR検査の拡充に努めているところ、14日、UAE保健省は過去24時間の検査件数が186,370件に上った、と発表した。(アルイッティハード紙)
UAEにおける累積PCR検査件数は約4680万回、人口百万人当たりの検査数は4,684,501回、すなわち一人当たり約4.7回実施されている。この値、日本は103,181回であるので、約45倍の開きがある。
<特記事項・気付きの点>
―パレスチナ・イスラエル情勢を重点的に扱う特別連続報道体制を続けた。