アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
22日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
パレスチナ・イスラエル情勢を特別体制で報道したため、ヘッドラインはなし
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―ガザ地区が停戦に入った21日の金曜礼拝後、パレスチナ人の若者とイスラエル軍が、西岸地区やエルサレムの各地で衝突。パレスチナ赤新月社によると、パレスチナ人97人が負傷した。複数が実弾、数十人がゴム弾で負傷していた。催涙ガスで窒息状態に陥った人もいた。負傷者のうち23人は、イスラエル軍がアルアクサー・モスクに押し入った事に伴うもの。
主な衝突発生場所は、ビーラ北方のベイト・イール、ナブルス南方のフワーラ検問所、ベツレヘムの北入口、カルキリヤのカフル・カッドゥーム村。ただ、イスラエル軍は過去数日と比べ、パレスチナの若者に対して激しい対応を抑制した模様。
―イスラエル軍は21日、エルサレム旧市街の獅子門、ナージル門付近でそれぞれ約20人のパレスチナの若者を拘束した。また、元収監者のヌハード・ズガイヤル氏をエルサレムの自宅で、ムハンマド・ファッルーフをシルワーンでそれぞれ拘束した。
―パレスチナ西岸エリコの南入口でイスラエル軍とパレスチナ人が衝突し、後者の12人が負傷した。(0620JST)
―ハニーヤ・ハマース政治局長は、イスラエルとのこの間の戦闘と停戦について、停戦後最初の演説で「神による勝利を実現した」「痛撃を与えた。これはイスラエルとその民衆、将来に甚だしい影響を残すだろう」と述べた。以下、演説要旨:
戦略的な勝利だ。この勝利の後の段階は、それ以前とは異なる。今回の戦闘「エルサレムの剣」によって、過去の多くの段階は終わり、新段階が始まった。今後、多くの勝利、成功、全レベルでの戦略的建設が見られるだろう。我々は今回の戦闘を、敵との闘争史上の著しい躍進、大転換点だとみなす。
次の段階で求められるのは、いくつもの戦略と優先事の推進だ。第1に、解放と帰還への最短の道である抵抗という選択だ。今回の戦いは、交渉という幻想、世紀の取引、敗北の文化、占領者との共存や正常化計画を打倒した。この戦いには、愛国的な団結の確立という続きがあり、それには多大な努力を要する。
―ネタニヤフ・イスラエル首相は、「ハマースに大きな損失を与え、そのトンネル網の大きな部分を破壊した」と述べた。また「イスラエルはメディアでは国際的な圧力と批判に直面する一方、各国から大きな支援を得た」とし、「米大統領による支援、イスラエルの自衛権への支持」に感謝した。以下、演説要旨:
ハマースのトンネル網と、彼らが地下に設けた町の大きな部分を破壊した。これらをイスラエルの攻撃に再利用するのは、不可能となった。これに伴うハマースの資金面の負担は大きく(再建に)何年もかかる。イスラエルの損害を最小限に留め、ハマースには甚大な損害を与えた。
例によって国際メディアの圧力や批判は受けたものの、多くの国々が我々の側に立ったという変化を指摘したい。過去6日間を通じて我々とやり取りし、イスラエルの自衛権を支持した米大統領に感謝する。彼に私は「目的を達すれば軍事行動を停止する」と伝え、実際にそうした。我が国は、ロケット弾攻撃に晒されて手をこまねいていることはない。戦闘によるイスラエル人行方不明者の問題、ロケット弾攻撃で損害を被ったガザに近い地域や国内南部地域への対応、経済的支援を続ける。(国内等のパレスチナ人の)暴動や違法行為には全力で対処し、代償を払わせる。
―米CNNは、今月19日のバイデン米大統領とイスラエル首相の電話会談について、「荒っぽい」やり取りがあったとし、内容の一部を詳報。「米大統領のイスラエル首相への忍耐は尽き始めた」「電話会話は、米大統領の就任以来、最も直接的で率直なものだった」「大統領は、自身の警告をイスラエル首相が真剣に捉えるよう望んだ」という。
―ブリンケン米国務長官はアッバース・パレスチナ大統領と電話会談し、イスラエルの対ガザ攻撃停止後の情勢について協議。アッバース大統領は、「イスラエルはエルサレムや西岸地区でも敵対行為を停止し、入植者の攻撃を止める必要がある」と述べた。また「ガザ地区の再建が必要だ。占領を終わらせる包括的政治プロセスを直ちに始めるべきだ」とした。
―米国務長官は、イスラエルと西岸地区を訪問する。これについて国務省報道官は「過去11日間(の戦闘)に関してだけでなく、イスラエル人とパレスチナ人のより良い生活をいかに築くかを協議するため」と述べた。また報道官は米メディアに、エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区について「エルサレムの現状保持は非常に重要だ」「イスラエルは同地区の住民に敬意をもって対応すべきだ。米はこの方向で引き続き圧力を加える」「エルサレムの最終的地位をめぐる交渉は、当事者双方により外交の場で行われる」と語った。
―ドゥジャリク国連事務総長報道官は、「国連は、東エルサレムやその旧市街と周辺での緊張継続を非常に懸念している」と述べた。また「皆がエルサレムの聖地の重要性、現状維持を尊重し、緊張激化を起こし得る挑発を避けることが重要だ」とし、政治・宗教指導者に対して「和平を台無しにする者への公然とした批判、扇動への反対」を呼びかけた。
―エジプトの治安当局の代表団が、ガザ地区とイスラエルの停戦を定着させるため、パレスチナとイスラエルと訪問した。エジプト側は交戦当事者双方に、「カイロ停戦合意」の順守を求めた。エジプトはガザ地区の武装勢力と、停戦確立に向けた協議を開始。
ガザ地区の政治アナリスト、ハサン・ラーフィ氏の話:停戦継続は、戦闘で新たなイスラエルとの相互抑止状態をつくり出したガザ地区の抵抗運動諸勢力の戦備継続、ロケット弾の被害を受けて停戦を求めたイスラエル国内世論、ネタニヤフ首相と6度にわたり電話協議した米大統領の圧力に、依存する。エジプト代表団は、できる限り長期の平穏維持に向け、ガザ地区とイスラエルの双方に停戦継続の条件提示を行った。しかし今回の問題の核心は、ガザ地区だけでなくエルサレム問題だ。これをめぐりパレスチナ側は、ガザ、西岸、イスラエル国内が結束するようになっており、停戦維持は、容易ではない。
今回の戦闘の発端は、常時繰り返されるユダヤ人入植者個々人のアルアクサー・モスク侵入とは異なる。ラマダン月28日にあたるイスラエル側の「エルサレム(統一の)日」の彼らの行動は、パレスチナ人の意志を挫き、エルサレムの係争問題を決定づけて最終的に自分たちのものにするための、戦略的行動に見えた。これがパレスチナ側に、結束と緊急動員を促した。
(停戦後の21日もイスラエル軍がアルアクサー・モスクに突入したのは)報復を求める国内右派へのネタニヤフ首相のメッセージだろう。ガザ地区に対する力の均衡を、更なる優位に変えることに失敗した首相が、「エルサレムは停戦合意の枠外だ」と支持者を安心させようとしたのだろう。ただ、これはあくまで局所的な挑発行為であり、状況を大きく変えるものではない。むしろイスラエルの裁判所はこの間、シェイク・ジャッラーハ地区の住民の住宅強制収容を延期し、拘束したパレスチナ住民の釈放を命じるなど、譲歩がみられる。
「世紀の取引」や、米(前大統領)がイスラエルのエルサレムへの主権を認めたことや、「アブラハム合意」を経て、イスラエルはエルサレム問題を自国優位に決着させることができるかに見えたが、今回の一連の出来事を通じ、パレスチナ側は「エルサレムはまだ係争地である」という状況へと押し戻し、この問題が喫緊の協議対象だと国際社会に認識させた。
そもそもイスラエルがシェイク・ジャッラーハ地区の住民退去措置に踏み切ったのは、「パレスチナが内部対立し、世界はコロナ禍で忙殺されている」とみて、その絶好の機会を見たからだ。しかし今回、「エルサレムに手を付ければ、パレスチナ側が暴発する」ことが示され、力の均衡は変わった。今後、再びシェイク・ジャッラーハ地区やエルサレムの「人口構成の変更」にイスラエルが踏み込む機会を得るまでには、長い時間を要するだろう。
―アルアクサー・モスクで21日、金曜説教を行ったエルサレムのムフティ、ムハンマド・フセイン師に対し、一部の礼拝者が抗議。師を説教壇から降りさせた上、「モスクから追い出すべきだ」と繰り返した。「説教でガザ地区の抵抗運動を称えず、イスラエルの攻撃に対抗した抵抗運動の成果へのあるべき形の言及をしない一方、アッバース大統領を称賛したため」という。
―フセイン師は、モスク内での(上記の)自身への攻撃について「モスクを混乱させることが目的だ」と批判。「こうした一部の者の行動によって、自分が、イスラエル当局からアルアクサー・モスクを守るという主目的から逸れることはない」と述べた。
―イラン外務省は、「パレスチナ抵抗運動は、一部アラブ諸国よる対イスラエル(関係)正常化の失敗を露わにした」「正常化した国々は、政策を見直してパレスチナ抵抗運動を尊重することが期待される」と声明。また「イスラエルの戦争犯罪を裁き、罰すること」を求め、パレスチナへの人道支援提供の用意を表明。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―米民主党は、イスラエル・パレスチナ紛争への対応を巡って割れている。「イスラエルには防衛の権利がある」というイスラエル一辺倒の政策に疑問を持つ者が現れ、活発に発言している。変化を起こすには時間がかかるが、イスラエルへの武器売却の見直しを求めるオカシオ・カルテス議員等の動きが注目される。「米国におけるイスラエルへの態度の変化は、本物だ。特に、民主党員、若者、マイノリティ、そしてハリウッドのスターたち。」(アルアラビー・アルジャディード紙)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビアでは、ラマダン明けの休日後の新規感染者数が大きく増えている。20日、保健省は新規感染者数が1330人に上った、と発表した。同国では、昨年7月の第一波の際に一日の新規感染者数が5000人に近い水準にまで増加したが、その後は毎日100人前後の新規感染に留まっていた。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―パレスチナ・イスラエル情勢を重点的に報道。