アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
24日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ パレスチナ全土における停戦定着のため、地域的な外交活動が活発に行われる。米国務長官は「停戦によってより前向きな事態へと向うだろう」「パレスチナとイスラエルの安全保障における平等な状態の実現を支援する」と述べる
■ アルアクサー・モスクに入植者が治安部隊の警護を受けつつ再び侵入したことを受け、パレスチナ大統領府はその影響を警告し、「イスラエルの挑発行為の阻止に介入するよう」米に要請
■ 世界の各都市でパレスチナに連帯するデモが続く。デモ参加者らは欧米諸国に「イスラエルの政策を非難し、同国との国交を停止するよう」求める
■ イラン、「米は一部の制裁の解除と地域問題を結び付けた」と述べる。米国務長官は「イランとサウジの良好な関係は、地域における『代理』による紛争を終わらせるだろう」との見方を示す
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―アマウィー・イラン議会・国家安全保障外交政策委員会報道官は、「アラグチ外務次官(核問題交渉責任者)は『米側が制裁の大部分を解除することに合意したが、今後数日間に議論すべき懸案事項も複数残っている』と確認した」「外務次官は『米側は一部の制裁解除と地域の諸問題・人権問題とを結び付けた』と委員会の委員らに伝えた」「外務次官は、書面上だけではなく実際的な全制裁の解除というイランの要求を確認した」と述べた。
―ブリンケン米国務長官はABCニュースのインタビューの中で、「米の核合意に関するいかなる措置も、イランがどの程度、合意を再び順守するかによる。この(イランの合意への)復帰が、地域でのイランの活動を制限するための、その他の問題に関するイランとの交渉開始の拠り所となる」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―ブリンケン米国務長官は上記のインタビューの中で、イエメンにおける和平合意の成立の必要性を強く主張し、「サウジはこれに向けた措置を講じた」とし、「これに対して、戦争を終結させるためにホウシー派も同様の措置を講じるよう」求めた。また、「サウジとイランが良好な関係になれば、地域における『代理』間の紛争の終結に資するだろう」との見方を示した。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―ブリンケン米国務長官は26日から中東地域の訪問を開始する。これに先立ち、同長官は上記のインタビューの中で、ガザ地区における人道状況を「危険だ」として、これに対処する必要性を強調。また、「平等な環境の中で生活できるよう、市民生活の改善にパレスチナとイスラエル双方が参加するよう」求めた。更に、「ハマースはパレスチナの人々に破壊のみをもたらし、ガザを上手く統率できず、イスラエルの民間人に対して無差別にミサイル攻撃を行ったことにより、我々が目撃したような(イスラエルによる)反撃をもたらした。イスラエルには自衛の権利がある。真の課題は、パレスチナ人民にとってより良い成果を実現するために、穏健派のパレスチナ人やパレスチナ政府を支援することである。これに関して、イスラエルには、当然、果たす役割がある」と述べた。
―アブドラ・ヨルダン国王は上院議員らと会談し、その中で「パレスチナの領土における停戦を、パレスチナ人の合法的な権利(の行使)を実現する政治的解決に向かわせる長期的な停戦に転換させるため、アラブ諸国や国際的な取り組みを集中して行うことが重要だ」「公平で包括的な和平を実現するためには、2国家解決以外にはない」「今回のイスラエルのガザ地区に対する戦争の後、パレスチナ人の苦難を軽減するために、エルサレムの人々の抵抗を強化して彼らを支援し、同地区のパレスチナ人を支援する必要がある」と述べた。
―シュクリ・エジプト外相はサファディ・ヨルダン外相とパレスチナにおける最新情勢を協議するため、23日夜にアンマンを訪問する。両者は、ガザ地区における停戦発表に基づく(今後の)方策や東エルサレムを含むパレスチナ全土における暴力激化の阻止を強化する方策、包括的な政治解決に至る和平プロセスを早急に再生する方策などについて協議すると見られる。
―シュクリ・エジプト外相は、「和平プロセスの真のビジョンがないことによって、パレスチナ・イスラエル間の紛争が再発する可能性がある」「可能な限り早い機会に交渉プロセスを再開し、これに関する国際的取り組みを集中させる必要がある」「エジプトは停戦定着のために全力を尽くす」と述べた。
―エジプト治安代表団は23日にハマースやその他のパレスチナ抵抗諸派の指導者らと会談後、ガザ地区を発った。カーヌーウ・ハマース広報担当は、「同代表団は会談中に、ガザ再建の仕組み、同地区の封鎖解除、鎮静化の定着と同地区での停戦に関する諸問題などについて話し合った」と述べた。
―ガザ地区とエジプトの境界のラファハに、同地区の住民へのエジプトの支援物資を積載した車列が到着。「タヒヤ・ミスル(エジプト万歳)」基金が提供した3千トン以上の食料・衣服・消毒液・マスク等のコンテナ120個が含まれる。これらはエジプト国内の様々な企業が提供した物。同基金はガザ地区の住民に支援物資を届けるために国内外からの援助を受け付ける専用の口座を開設していた。
―アルアクサー・モスクの敷地内に入植者が侵入し、イスラエル軍がパレスチナ人数人とモスクの職員らに敵対行為を働き、職員4人と若者3人(後にこのうちの2人を解放)を拘束した。イスラエル軍は入植者の集団に対して、朝の数時間、モスクへの侵入を許可し、入植者らは治安部隊によって厳重に警護されながら糞門から入って周辺を散策した。イスラエルは約20日間、入植者に対してモスクへの入場を禁じていた。
―パレスチナ大統領府は、「アルアクサー・モスクへの侵入やシェイク・ジャッラーハ地区の封鎖が続けば、振出しに戻り、暴力激化と緊張状態に戻る」と警告し、米政府に「イスラエルの挑発的な政策とエスカレートを阻止すべく、早急に介入するよう」求めた。また、パレスチナ外務省は、「同モスクへの侵入が続いていることは、最近のイスラエルのエスカレートをめぐる国際的状況を軽視している」「イスラエルのエルサレムに対する引き続く敵対行為を無視しようとする試みは、停戦定着や和平プロセスの再生に向けた国際的立場や取り組みを空洞化させる」と述べた。ディーク・パレスチナ外相政治顧問は、「イスラエルは、ブリンケン米国務長官の中東地域訪問を前に、同モスクやエルサレムに対する敵対行為の激化、同モスクへの侵入、シェイク・ジャッラーハ地区の再包囲を意図的に行っている」「エルサレムにおけるユダヤ化の措置を強化し、同長官との議論の余地をなくすためにこれを既成事実とする目的を持った、先制的な措置として行っている」と述べた。
―コハビ・イスラエル軍参謀総長は、24・27日にガザ地区に対する軍事作戦を停止した後の治安・軍事状況を評価するために会合を開く予定。イスラル放送局によると、会合では停戦の影響と11日間に亘る戦争の成果について取り上げられる。軍事指導部は政治指導部に、「ハアレツ紙の軍事・治安アナリストによる分析では、ハマース等のパレスチナ諸派のロケット弾システムに与えた損害が期待よりかなり少なかった」と明らかにし、「ガザ地区におけるいかなる停戦違反やロケット弾発射に対しても、強く反撃するよう」勧告している。
―タミーム・カタール首長はドーハでハニーヤ・ハマース政治局長と随行団を迎えた。同局長は首長に対して、「パレスチナ人に対するイスラエルの敵対行為の停止やガザ地区における鎮静化・停戦」に貢献したカタールの外交的取り組みに謝意を表明した。
―サーレハ・イラク大統領はバグダッドでマーリキー・パレスチナ外相を迎え、パレスチナ人の苦難を終わらせ、その権利を保護し、彼らが晒されている暴力行為を阻止するために、あらゆるレベルでの有効な取り組みを調整するよう」呼びかけた。
―世界各地でエルサレムとガザ地区に連帯するデモが続く。モロッコのカサブランカなどその他の都市(ラバトでは予定されていたデモが禁止される)、パキスタンのカラチ、パリ、伊のベルガモ、ヘルシンキ、米のデトロイトやNY、チャドのンジャメナなど。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―マングーシュ・リビア外相はトリポリで、ムハンマド・カタール副首相兼外相と共同会見を開き、リビアの革命当時におけるカタールの役割を賞賛し、「カタール当局に、両国関係を強化するためにトリポリにカタールの外交団を復帰させるよう求めた」と述べた。一方、カタール外相は「様々な分野における協力に関して、トリポリで実りある協議を行った。合同作業チームを結成することで合意した」と述べ、リビアとその国民、政治移行プロセスへのカタールの支援を改めて表明した。
―ブリタ・モロッコ外相は仏放送局のインタビューの中で、「スペインがポリサリオ戦線の指導者を受け入れた時と同じように、同指導者をスペインから立ち去らせた場合、事態はスペインとの外交断絶に至る可能性がある」と述べ、「スペインは真の問題から目を逸らすために、EUを巻き込もうとして移民問題を利用している」「スペインは同指導者の偽造したIDでの入国の受け入れを決定する前に、欧州のパートナーやモロッコと協議しなかった」「モロッコとスペイン間の現在の危機は、パートナー間の政治的危機であり、この危機を引き起こした責任はスペインにある」と述べた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イスラエルと南アフリカに特派員として勤務したことのあるクリス・マグリール記者は、英オブザーバー紙に「ボイコットと制裁が南アフリカのアパルトヘイト政策を放棄させることに役立った。今、イスラエルの番が回ってきたのではないか?」との記事を投稿した。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―イスラエルにおける新型コロナの感染状況は、パレスチナをめぐる治安情勢にも拘らず落ち着いている。5月17-23日の1日あたり新規感染者数平均は28.6人、同期間の1日あたり死者数平均は3.1人であった(イスラエル保健省発表数値から弊社算出。ピーク時に感染者数は一日1万人、死者数は100人を超えていた。)
<特記事項・気付きの点>
―特になし