アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
25日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■マリで内閣改造が発表された直後、軍が大統領と首相を拘束し、バマコ近郊の基地に連行
■パレスチナ西岸地区とエルサレムが緊迫。イスラエル当局、警官ら数千人を動員して、「アルアクサー・モスクやガザを支援するデモ」に参加した国内のパレスチナ人を一斉拘束
■国務長官が中東歴訪へ。国務省高官は「ガザ地区のハマースと協議しないことは困難をもたらす」と指摘。米大統領は「域内の主要なパートナーを協議に取り込む」と述べる
■米の対イエメン特使、アルジャジーラに「妥当で公正なイエメンの停戦案があり、サウジやイエメン政府の支持を得ている」「ホウシー派の立場表明が待たれる」と述べる
■EU、イランとの核問題の交渉を25日にウィーンで再開すると発表。IAEAとイラン、核施設査察の期限延長で合意
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―EUは、イランの核問題をめぐる交渉の第5ラウンドを25日にウィーンで再開すると発表した。一方、マレー米イラン特使は「直近のウィーンでの協議は建設的で、具体的な進展があったが、やるべき仕事はまだ多い」「協議の第5ラウンドで、核合意順守への(米・イラン)双方の復帰に向けた前進が続くよう願う」とツイート。
―グロッシIAEA事務局長は、イランと核施設査察の期限を1か月延長することで合意したと発表した。これについて、イランのガリブアバディIAEA担当特使は「イランの善意に基づく決定だ」と述べた。また、イラン外務省報道官は「査察期限の延長は(核合意再生の)合意に至る機会だ」としつつ、「この機会は永遠には続かない。米はこの機会を生かすべきだ」と語った。
―イラン外務省報道官は、「サウジアラビアは、その破綻した政策に固執するのか、地域に協力的であるかを選ばねばならない」「イランはサウジの実際の行動を待っている」と述べた。
―ネタニヤフ・イスラエル首相は、「イランによる『ユダヤ人の存在を止める』行動を防ぐため、勇敢で独立した決定を下す必要があるだろう」とツイート。「米国の何年にもわたるイスラエルへの支持」を称えつつ、「いかなる場合でもイスラエルはイランの核兵器保有を許さない」「合意が成立するか否かに拘わらず、イランの核兵器保有を防ぐために全てのことをする。生存に関わる話だからだ」とした。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―レンダーキング米イエメン特使はアルジャジーラのインタビューに、「国連に支持された妥当かつ公正なイエメン紛争の停戦案が示され、サウジやイエメン政府はこれに支持を表明した」「ホウシー派にも同様のアプローチが求められている」と述べた。また特使は「今、イエメンの紛争解決への強い国際的合意がある。解決の実現は可能だ」「解決に向けて(GCCやEU諸国など)世界の諸方面の役割が高まっている」と語った。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル当局は、アルアクサー・モスク侵害やエルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区の住民への攻撃、対ガザ地区空爆に抗議する最近のデモに参加した国内のアラブ系市民数百人を逮捕した。容疑は「警官への暴行、公の秩序びん乱、武器所持、公共財の破壊」等。この一斉拘束は警察、国境警備隊、予備役の数千人を動員して23日夜に始まり、現在も続いている。(0615JST)
―イスラエル警察は24日、「暴動に加わった」容疑でアラブ系市民74人を逮捕したと発表した。過去2週間の「暴動」関連の拘束者は1,550人にのぼり、うち155人が起訴された。イディオト・アハロノト紙によれば、警察は国内のアラブ系市民約500人を拘束対称の「犯罪分子」としてリスト化。ハイファの人権団体「アダーラ(公正)」は、「政治的立場を理由とした、アラブ系のデモ参加者や活動家への報復だ。アラブ系市民を脅迫して政府の人種差別的政策に従わせるのが目的だ」と批判した。
―上記の一斉拘束では、乱暴な家宅捜索、拘束時の暴行が各地で行われた。SNSに出回ったアラブ系市民の負傷者の写真が、暴力的な捜査を表している。一方、エルサレムのベイト・ハニーナ地区で10歳のパレスチナ人男児がイスラエル警察に逮捕され、妹が泣いて連行しないよう訴える映像も、SNSで広くシェアされた。この男児は後に釈放された。イスラエルでは、対ガザ空爆時に国内で行われたアラブ系の抗議デモ参加を「戦時の国家反逆罪」として扱うべきだとの、右派による扇動的運動が行われている。
―ハマースは、上記一斉拘束について、「エルサレムやアルアクサー・モスクの『ユダヤ化』、アラブ人の町から住民を追い出す占領者の政策に対する、イスラエル内のパレスチナ民衆の革命を消し去ることはできない」「各国と諸国民にパレスチナ問題への支援継続を呼びかける」と声明。ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」報道官は、空爆の「殉教者」を称えるガザ地区の催しで「イスラエルの新たな行動激化には報復の用意がある」と述べた。
―ガザ地区の保健省は24日、この間のイスラエルの空爆による死者が253人(うち子供66人、女性39人)、負傷者が1,948人に上ったと発表。この日も、空爆で破壊されたガザ地区南部ハーン・ユー二ス東方の抵抗運動組織の地下トンネルから、4人の遺体が見つかった。空爆によりトンネル内で死亡した「カッサーム部隊」隊員は18人とされる。
関連レポート要旨:イスラエルのメディアでは、「今回の軍事行動でネタニヤフ政権が失ったもの」について、議論がなされている。「イスラエルは何年も(アラブ諸国との関係正常化等で)文明的で平和を愛する国だとのアピールに努めてきたが、今回の対ガザ戦争でその印象は損なわれた」と同国の分析者は指摘。「特にアルジャジーラやAP通信が入居するガザ地区の高層アパートを空爆・倒壊させたことが、評判悪化に大きく影響した」「各国メディアがイスラエルの公式説明と異なるガザの現場の様子を間近で伝え、パレスチナ問題に再び世論の関心を向けた」という。ハイファ大学のガブリエル・ヴァイマン教授(情報コミュニケーション)は、イディオト・アハロノト紙に「イスラエルは広報戦に敗れた。我が国はSNSを無視し、敵は巧みに利用した」と書いた。
一方、イスラエルのTVでは「戦争の根拠」を主張する報道も連日盛んだ。そこでは「イスラエル兵の捕虜を取り戻す必要」が語られ、ゲスト出演した宗教的に敬虔なジャーナリストが「(アルアクサー・モスクがある)神殿の丘で宗教儀式を行う権利」を訴えるなど、戦争の正当化を試みている。
―バイデン米大統領は声明で、ブリンケン国務長官が25日からエルサレム、ラーマッラー、カイロ、アンマンを歴訪すると発表。「国務長官は、中東地域の他のパートナーをガザの状況をめぐる協議に参加させるべく努める」「パレスチナの人々や政権との関係再構築の努力を続ける」とした。米国務省高官は「ガザ地区のハマースと話さないことは、困難をもたらす」と述べた。
―イスラエル公共放送によれば、イスラエル政府は、カタールからガザ地区への支援物資の搬入メカニズムの変更や、今週ガザ地区に帰任予定だったカタールのアマーディ「ガザ復興委員長」のガザ入りを延期させることを検討している。
―シュクリー・エジプト外相は、ラーマッラーでアッバース・パレスチナ大統領と会談。「パレスチナ問題の公正・恒常的な解決に向けた政治的な道筋を取り戻すため、国際的な動きが具現化される必要がある」と指摘。パレスチナ当局と連携を続けると強調した。
―アブドラ・ヨルダン国王は、エジプト外相とエルサレムやガザ地区の情勢について協議。「イスラエルはアルアクサー・モスクへの押し入り、東エルサレムでの挑発的行動を止めるべきだ」と述べた。
―ネタニヤフ・イスラエル首相は、モサド新長官にデイビッド・バルネア氏を(6月1日付で)任命すると発表。同氏は56歳。テロ対策や偵察等を行う軍参謀本部の特殊部隊を経て1996年にモサド入り。スパイ勧誘部門の長、モサド副長官を歴任した。任命式でネタニヤフ首相は、モサド隊員に「第一の任務はイランの核兵器保有を阻止することだ」と述べた。退任するコーヘン長官は、アラブ諸国との関係正常化に大きな役割を果たした、とされる。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―マリ軍は、暫定政府のンダウ大統領、ウアンヌ首相らを拘束、バマコ近郊の兵営に連行し、これを包囲した。大統領と首相は、現国防相と治安相を排除する内閣改造を発表したばかり。軍や政府の声明は出ていないが、首相は「自宅に軍人がおり、兵営に連行される」とジャーナリストに伝えていた。在マリ米大使館は、「バマコで軍事活動が活発化している」と自国民に警告を発した。(0602JST)
―マリ現地筋によれば、上記展開は、軍事評議会が改造内閣の発表に反発したもの。大統領と首相は、新内閣で国防相、治安相の両ポストを軍事評議会指導部に与えないとして、軍事評議会と対立していた。軍事評議会は、昨年8月の当時のケイタ大統領へのクーデター後、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の制裁解除条件に応じ、文民のウアンヌ氏が率いる暫定内閣を形成していた。現状、バマコでは衝突などは起きていない模様。
エリコの目
―英テレグラフ紙は、「バイデンはイスラエルでの流血を見た今でも対イラン制裁を解除できるだろうか?」と題する論説記事を掲載した。イラン制裁を解除し、同国との核合意を復活させたいバイデン大統領の前には、ハマスを支援するイランの懲罰を緩めてはならないとの共和党主導の強い反対がある。(ラアイ・アルヨウム紙)
中東の新型コロナ動向
―エジプトでは、21日、22日の新規感染者数と死者数がそれぞれ1,148人→1,151人、52人→59人を記録、政府による強力な感染予防措置にも拘らず感染が拡大している。内務当局は、違反(社会的距離、マスク着用等)の摘発に力を入れており、マスク非着用でこれまで約15000人が検挙された他、閉鎖命令に応じなかった飲食店が2000件以上も摘発された。また、331軒のシーシャ(水たばこ)取り扱い店が取り締まりの対象となり、7,563点のシーシャが押収された。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし