アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
30日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 米がイスラエルに対し情勢沈静化の重要性を強調する中で、イスラエル外相がカイロで停戦の定着について協議へ。エジプト情報長官はパレスチナとイスラエルへの訪問を開始
■ 米、イラクの民兵組織による無人機使用を懸念。ワシントン・ポスト紙によると、米当局者らはこれを「有志連合にとっての最大の脅威」と警告
■ イエメンのホウシー派、「サウジ南部ジーザーンの国境地帯で大規模攻撃作戦を実施」と発表。同盟軍はこれを「現場の実態を隠蔽するための情報の捏造だ」と指摘
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ワシントン・ポスト紙によると、イラクに駐留する米軍幹部らは、イランの支援を受けるイラクの民兵組織による無人機を利用した攻撃への懸念を強めている。幹部らは軍事的対応を真剣に検討するよう提唱したが、米政権は結局、軍事攻撃を行わないと決定した。アンバール県のアイン・アルアサド基地(イラク軍のほか米軍も駐留)は今月、爆弾を積んだ無人機によるものを含む4回の攻撃を受けている。
アブドルジャッバール・アフマド・バグダッド大学政治学教授の話:イラクの武装組織による無人機使用の危険が実際にある中で、このタイミングでこうしたニュースを流すことにより、これら組織の行動に全面的に反対する世論を形成するという利益が得られるものと思われる。もちろん米は、軍事攻撃によってこれら組織の無人機使用を阻止することができるが、この手段は社会的・心理的・経済的・政治的影響をもたらし、それらがすべてイラク政府にかかってくるため、他の選択肢に道を開こうとしているものと思われる。イラクの安定実現のためには、イランの核問題に関する対話などを通じた包括的・地域的解決が求められる。
マーク・キミット元米国務省政治・軍事担当次官補(ワシントン)の話:もちろん米には、民兵組織と対決してこれらを排除するだけの軍事・情報力があるが、これは我々が求めるところと反対の結果をもたらす可能性がある。例えばイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官の暗殺には戦略的・戦術的目的があったが、より多くの問題を引き起こす結果となった。こうした中で米には、イラク政府との協力を続けるという選択肢がある。イラクの政府と軍に必要な支援を提供し、イラクの政府と軍がこれらの組織と対峙していくというものだ。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―ホウシー派傘下のイエメン軍事メディアは、「同派の戦闘員部隊が、サウジ南部国境にあるジーザーンでサウジ軍の拠点を狙った大規模攻撃作戦を実施し、同軍のサウジ人兵士とスーダン人兵士複数を死亡させ、数十人を捕虜にした」と伝えた。これに対し、サウジ・UAE同盟軍報道官は「軍事作戦を実施したとの同派の主張は、同派メディアによる捏造だ。同派が偽りの勝利を伝える目的は、同派支配地域の住民の怒りを静め、現場の実態を隠蔽することにある」と指摘した。
―サウジのメディアは、「(サウジ・UAE同盟軍が)紅海南部で、差し迫っていた爆弾を積んだ舟艇2隻による(ホウシー派の)敵対攻撃を阻止した」と報道。また同盟軍は、「サウジ南部ハミース・ムシャイトにあるキング・ハーリド空軍基地に向かっていたとみられる爆弾を積んだ同派の無人機1機を撃墜した」と発表。
―サウジ人政治評論家のムニーフ・ハルビー氏は、アルジャジーラのニュース内のインタビューで「ホウシー派によるジーザーンの国境地帯に対する最近の攻撃は、域内の情勢が変化する中で、交渉における自派の立場を強めることを目的としている」との見方を示した。
―アーメル・ホウシー派「情報省」次官は、アルジャジーラのニュース内のインタビューで「サウジによるイエメンへの侵略攻撃が続く限り、同国に対する攻撃作戦を続ける」と述べた。
―イエメンの軍事関係筋によると、マアリブ県各地の戦線で、この3週間で最も激しい戦闘が繰り広げられた。ジャウフ県でも、サウジ・UAE同盟軍による集中空爆が行われる中で、戦闘が展開された。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル・パレスチナ間の停戦が2週目に入る中、オースティン米国防長官がガンツ・イスラエル国防相と電話会談し、イスラエルの安全保障への米の支援を再確認した上で、「米政権は、恒久的安全確立のために停戦を強化することを支援する」と確認した。来月には、コハビ・イスラエル軍参謀総長が対ガザ地区軍事行動の成果やイランの核開発計画の脅威などについて協議するため訪米する予定。
―アシュケナジー・イスラエル外相は30日、カイロを訪問する。イスラエル外相のエジプト訪問は2008年以来のこと。これと時を同じくして、カーメル・エジプト総合情報局長官は、ラーマッラーとガザとイスラエルを訪問する予定。どちらもガザ地区停戦の定着と同地区復興計画の準備を目的とした動き。
―カタール外務省報道官は、「カタールは、パレスチナ問題の公正な解決のために、いかなる役割でも果たす用意がある」と表明し、「イスラエルは、解決に向けて自国の義務を履行し、国連決議を実施すべきだ。現在の状況が続くことはあり得ない」と指摘した。
―ナハーラ・イスラム聖戦書記長は、ガザで開かれた人民集会で「イスラエルがパレスチナ抵抗運動の戦闘員や指導者らを標的とした暗殺作戦を行えば、それがいつどこで行われようとも、厳しい報復を行い、同時にテルアビブ攻撃を実施する」「抵抗運動は、イスラエルによる停戦順守と、エルサレムと同市シェイク・ジャッラーハ地区での同国の振る舞いを注視している」と強調した。
―イスラエル治安部隊は、封鎖下にあるエルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区の入り口で抗議行動を行っていたパレスチナ人や外国人・イスラエル人の活動家らを解散させた。活動家らは、同地区封鎖の解除と同地区住民立ち退きの決定撤回を求めていた。同部隊は活動家らに対してガス弾を使用し、取材していた記者らを一時拘束した。
―ラーマッラー西方のナアリーン北部で、イスラエル人入植者によるパレスチナ人の土地奪取に抗議していたパレスチナ人の一団がイスラエル軍から実弾やガス弾の発砲による弾圧を受け、パレスチナ人の若者が実弾を受けて足を負傷した。ナアリーンでは前日も入植地拡大に反対するデモが行われ、軍との衝突となり、首長を含む複数が負傷していた。
―イスラエル右派指導者のナフタリ・ベネット氏は、ユーチューブで公開した動画の中で、先のガザ地区との戦闘で米がパレスチナ側と連帯したことを非難し、「ハマースはガザのシファー病院のような民間の場所を武器の保管に利用している」と指摘した。ただし、同氏が「ガザのシファー病院のもの」として使用した画像はパキスタンのシファー病院のものだった。
―ハアレツ紙は、先のイスラエル軍のガザ地区攻撃で死亡したパレスチナ人の子供67人の写真を1面に掲載した。この前代未聞の行動について同紙は、「イスラエルの世論を揺るがして、空軍が無辜の子供たちに対して行った犯罪の事実に向き合わせたかった」とし、先にこれらの子供たちの写真を掲載したNYタイムズ紙のレポートを引用し、一部の子供が抱いていた夢などを伝えた。
―ワシントンでガザ地区を支持しイスラエルによる同地区攻撃を非難するデモが行われ、5千人超が参加した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―リビアのハフタル元少将派部隊は、「尊厳作戦」の開始から7年にあたり、ベンガジ郊外のベニーナ空軍基地で軍事パレードを実施した。ハフタル氏は、この中での演説で「合意された平和的(政治的)解決が妨害されれば、我が部隊は、平和を力で実現するために新たな戦闘に突入することも躊躇しない」とし、「議会選挙と大統領選挙を国民による直接選挙の形で遅滞なく実施すべきだ」と強調した。
―リビア国家最高評議会は、大統領評議会(議長)に「軍最高司令官として、『尊厳(作戦の)テロ集団』による(停戦合意)違反や攻撃的行動に歯止めをかけるよう」求めた。また、国際社会に対しては「二重基準の政策を止めて、ハフタル氏(支援)から完全に手を引き、リビアの国家主権を尊重して正当な公的機関とのみ協力するよう」呼びかけた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―オーストリア政府が「政治的イスラムの地図」と称して全国623カ所全ての大小モスクの位置と詳細情報を公開したことが物議を醸している。在墺のイスラム教徒を組織する責任者は、「地図」の発行は、全てのイスラム教徒を危険人物に見立てるものであり、受け入れられないと怒っている。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビアは、条件付きで娯楽的行事の再開を決定した。催事の会場に入場できるのはワクチン接種済者のみで、その証明は「タワッカルナ」アプリによる。入場者はマスク着用、社会的距離の確保、入場時の検温と問診などが義務付けられる他、屋外であれば定員の40%を最大許容人数とする。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし