アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
1日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イスラエルの反ネタニヤフ政治連合、新内閣組閣に向けた協議を継続。期限を2日後に控え、「連合参加政党間に対立」との報道
■ ハマース、ガザ地区の停戦定着と復興をめぐる協議が行われる中で、復興問題と捕虜交換取引とを結びつけることを拒否
■ イラン、「核合意をめぐるウィーン協議で、主な争点に関する議論が始まった」と明らかにする。IAEAは「イランが一部義務に違反」と非難し、「未申告の核施設がある」と指摘
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラン核合意をめぐる第5回ジュネーブ協議が2週目に入り、アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は「協議はまだ込み入った状況だが、主な争点となる諸課題に至った」と明らかにし、「これは一種の進展とみなされる」「合意草案の大部分の準備ができた」と述べた。これに対し、米は楽観的見方を示すことにより慎重となっており、イランは「前トランプ政権と現バイデン政権の間で、核合意への米の対応に目立った変化は感じられない」としている。
―IAEAは、「イランは核合意に基づいて課された多くの規制への違反を続けている」と非難した。IAEAは、報告書で「(イランが協力の度合いを引き下げたため)貯蔵する濃縮ウランの量を完全に確認できていない」とした上で、「イランが貯蔵する濃縮ウランの量は核合意で認められた量の16倍を超えている」と推計。そして「(未申告の複数の施設でウランの痕跡が見つかったことについてイランが説明しないため)イランとの技術協議が望まれる成果に至らない懸念がある」と指摘した。
―ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「4月のナタンズ核施設への攻撃後、イランの核燃料生産が減少した」と伝えた。イランはこの攻撃を「イスラエルの仕業だ」としている。同紙は、「IAEAの極秘報告書は生産低下について詳細を記述しているが、これが電力供給の停止や遠心分離機数百基の破壊に至った同攻撃の影響があるとするに十分な初の見解を示すものとなっている」「同報告書によると、イランは濃縮度60%のウランを2.4キログラムしか生産していない」とした。また同紙は、イスラエルと欧米の専門家の話として「この攻撃が実際にイランの中期的な生産に穴を開けたかもしれない。これにより年間を通じたウラン濃縮能力が低下する可能性がある」と報道。同紙によると、専門家らは、イランが被害を受けた遠心分離機の埋め合わせに設置した機器の有効性に疑問を呈した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―グリフィス国連イエメン特使は、サヌアでホウシー派幹部らと会談した後の会見で、「アブドルマリク・ホウシー氏(同派指導者)から停戦提案に関する同派の考えを示された。これを他の当事者らに提示する」と述べた。また同特使は、「マアリブなどでの軍事行動の継続は、イエメンの和平の見通しを妨げ、数百万人の生命を危険に晒す」と警告した。
―ハーディ・イエメン大統領は、「ホウシー派は、イランの域内での計画に資するために、イランの試みをイエメンに強要しようとしているが、これを容認することはできない」と述べた。また「同派との交渉や外交的接触は無駄だ」とし、「彼ら民兵は常に、政府側の譲歩に対して頑固な態度を示し拒否してきた」と指摘した。
○ エジプト情勢
―エジプトは、「エチオピア各地に多くのダムを建設するとしたアビー同国首相の発言を拒絶する」と発表した。エジプト外務省は、「この発言は、エチオピアの悪意を示し、同国が国際河川を自国の主権下にある国内河川のように扱っていることを明らかにするものだ」と指摘した。アビー首相は先に、「国内の多くの州に100を超える小・中規模のダムを建設することを計画している」と述べていた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―パレスチナ抵抗運動諸派とイスラエルの間の停戦定着に向けた取り組みが続いている。カーメル・エジプト総合情報局長官は、テルアビブとラーマッラーに続きガザを訪問し、ハマースのシヌワール・ガザ地区指導者(政治局長)を始めとする同組織やパレスチナ諸派の幹部らと会合した。同長官はその後、ガザを離れた。シヌワール氏は、「エジプト代表団との協議では、停戦定着化の詳細やイスラエルによるパレスチナ人に対する(暴力行為)激化の抑制に焦点が当てられた」と明らかにし、「ハマースは、捕虜問題を(ガザ地区の)封鎖軽減や復興問題と結びつけることを拒否する」と強調した。
―アブー・アムルー・パレスチナ副首相率いるパレスチナ自治政府(PA)代表団は、ガザでカーメル・エジプト総合情報局長官と会合し、ガザ地区復興問題のほか、パレスチナ内部和解の実現と国民合意政府の樹立に向けた対話の継続について協議した。PA代表団はエジプト側に、「ガザ地区での停戦を定着させ、これをエルサレムや西岸地区にまで拡大すべく尽力するよう」求めた。
―エジプト外務省報道官は、「シュクリー外相がサファディ・ヨルダン外相と電話会談し、ガザ地区停戦定着に向けたエジプトの外交活動について話し合った」「会談では、同地区の復興問題も取り上げたほか、国連決議に基づく交渉路線の再開を可能にする政治的展望を持つことの重要性にも触れた」と発表。
―ハーティル・カタール外務省報道官は、スプートニク通信に対し「カタールは、ハマースであれイランであれサウジであれ、地域の勢力と米の間の仲介者の役割を果たす用意がある」と述べ、ドーハでハマースと米の会合を主催する可能性を示唆した。また、「イスラエルとの国交正常化には、現在のところ和平プロセスに与える付加価値は何もない」とし、主要諸国に対し「財政的であれ政治的であれ、イスラエルへの無条件での支援を見直すよう」呼びかけた。
―イスラエル警察は、エルサレムのダマスカス門地区で、パレスチナ人の若者2人(男女)を拘束した。目撃者によると、このうちの女性は、同地区の様々な写真を撮影していたところを拘束された。31日朝には、イスラエル警察がこの2週間閉鎖されていた糞門を開き、イスラエル人入植者数十人が同警察の警護を受けながら、エルサレムの聖域に侵入した。
―イスラエルのネタニヤフ首相に反対する「変革陣営」の諸政党は、新たな内閣の組閣に関する合意に向けた協議を続けている。イスラエルのメディアでは、閣僚ポストの配分をめぐり意見の対立があると報じられている。また、協議に近い筋は「組閣に向けた右派政党『ヤミナ』と中道政党『イェシュ・アティド(未来がある)』の連立が、ラピド『イェシュ・アティド』党党首に与えられた組閣期限の2日までに崩壊する懸念がある」と述べた。ネタニヤフ首相は、この「変革陣営」の取り組みを「世紀の欺瞞」と評し、「イスラエルの安全保障を脅かすものだ」と指摘した。イスラエル公共放送は、「ネタニヤフ首相とリクード党内の同首相支持者らと宗教諸政党は、『ヤミナ』『新たな希望』両党のメンバーに圧力をかけ、離党して新たな連立を拒否するよう説得しようとしている」と伝えた。
―ラピド「イェシュ・アティド」党党首は、「新内閣の閣僚名簿を来週議会に提出したいと思っている」とし、「新内閣は、右派・左派・中道派の諸政党を含み、皆のために活動する皆の内閣となる」と述べた。同党首は「7政党の間で交渉が行われている。意見が対立する簡単ではない諸問題があるが、そのうちの8割で合意に至っている」と明らかにした。また同党首は、ネタニヤフ首相が「自分を追い落とそうとする動きは、イスラエルの安全保障を脅かす」と述べたことについて、「危険で無責任な発言であり、度を越えている」と指摘した。
―カッツ・イスラエル財務相は、ツイッターで「イスラエルは、UAEとの国交正常化後の両国間のビジネスを発展させるために、同国との間で租税条約に署名した。この条約は、来年1月1日に発効する見通しだ」と明らかにした。アシュケナジー外相は、「この条約は投資や通商の大幅な増大を可能にし、両国の経済に貢献するものとなるだろう」と述べた。
―パレスチナや他のアラブ諸国の活動家らは、イスラエル政府のアラビア語版公式アカウントの閲覧やこれらへの反応を止めるよう呼びかけるSNS上のキャンペーン「#敵を削除せよ」を展開している。イスラエルの主張や見解の拡大を食い止めることが目的。活動家らは、「これらのアカウントはSNSを通じてアラブの世論に影響を及ぼそうとするものだ」としている。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イスラエルのガンツ国防相は「イスラエルは外敵との戦争には強いが内に弱い。人々はバラバラで、傷つけあっている。外敵に対するように、今は国内を固めなければならない」と述べた。「現在懸念が広がっているが、政局は国の安全保障には影響しない」とも。(アルマヤディーン・ネット)
中東の新型コロナ動向
―中東各国の感染状況を数値で比較することは、各国当局の検知能力と透明性に大差があるため、あまり参考にならないかもしれないが、人口百万人当たりの累積死者数を比較してみよう。Top5は次の通り。
①レバノン 1,137人、②チュニジア 1,061人、③イラン 943人、④イスラエル 688人、⑤パレスチナ 671人 (参考:日本 103人)
また、主要国の数値は次のとおりである。サウジアラビア 209人、トルコ 558人、イラク 399人。本日現在の下記引用の統計(各国政府発表の集計)による。
<特記事項・気付きの点>
―特になし