アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
2日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イスラエル首相、「生存の脅威の除去か、対米関係かの選択を強いられれば、前者を選ぶ」と発言。これに対して国防相は「米国との相違は挑戦的な演説ではなく対話で解決する」と述べる
■ イスラエルの新内閣樹立に向けた協議が難航。組閣期限を前に「反ネタニヤフ」各党指導者が会合、新しい同盟構築を目指す
■ 国連と米の対イエメン特使、アンマンでの協議で、支援物資搬入のための即時停戦を求める。ホウシー派は「人道支援との交換取引」を一切拒否
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イスラエル諜報特務庁(モサド)のバルネア新長官は、就任式で、イランを「国際的な保護や合意の下、虚偽により、大量破壊兵器保有に向けた進展の実態を隠している」と非難。「イスラエルは国際社会の多数派が望む通りには動かない。この多数派がイランの脅威評価の誤りの代償を払うことはないからだ」と述べた。
―ラビエイ・イラン政府報道官は記者会見で、核合意再生を目指すウィーンでの交渉について、「行き詰まってはいない。現在、主要な問題が議論されている」「それらの問題は、必要な政治的意思があれば解決できる」と述べた。
―イラン核合意をめぐるウィーンでの交渉が続いている。交渉の関係筋は、「協議は進展したが、依然、本質的かつ重要な相違を解決すべく議論している」と説明した。
―ウリヤノフ露IAEA大使は、「イラン核合意について米代表団と有益な会合を持った」「核合意の実施再開を妨げている懸案について、マレー米イラン特使と率直に話し合った」と述べた。
―イランのファルス通信は、イラン軍の情報として、オマーン湾のジャースク港の近くで海軍の訓練船の積み荷に火災が発生したが、乗組員は全員、無事に退避したと報じた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―米国務省によれば、レンダーキング対イエメン特使は、アラーダ・マアリブ県知事とビデオ会談を行い、フーシ派のマアリブ県での攻撃による深刻な人道状況に懸念を示した上で、人道面などの支援拡充が必要だと述べた。
―ホウシー派のアブドッサラーム報道官は、「イエメン封鎖」について、「数々の合意違反を犯す一方で、恩着せがましく石油タンカーを時々イエメンに入港させ、それを『成果』だと主張している」と非難。「イエメン国民はいかなる状況下でも、食料、医薬品、石油製品を無条件で得る権利がある」「人道支援と(停戦受け入れ等との)交換取引は拒否する」とした。
―ホウシー派は、(老朽化し、原油を積んだままホデイダ沖に放置されて)爆発の懸念もある石油タンカー「サーフィル」について、「国連との合意が行き詰まった」とし、「国連はタンカーの状態を評価するのみで、修復を行わない」と非難した。
―ホウシー派のメディアは、サウジアラビア・UAE同盟軍がジャウフ県とマアリブ県で計22回の空爆を行ったと報じた。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―ネタニヤフ・イスラエル首相は、モサド新長官の就任式で「友人・米国との摩擦と、生存の脅威のどちらを取り除くかの選択を迫られたなら、後者の除去を優先する」「イスラエル政府は、米とイランの合意が成立しても、イランの核兵器保有を阻止するためのあらゆる行動を続ける」と述べた。イスラエルは、米国がイラン核合意に復帰することに反対してきた。最近ウィーンでは、核合意を再生させるための当時国の交渉が行われている。
―ガンツ・イスラエル国防相は、「米国はこれまでも今後も、地域におけるイスラエルの安全保障上の優位を維持する上で、最重要の同盟国だ」「米国よりも良いパートナーはない」とツイートし、米国との摩擦を仄めかしたネタニヤフ首相の発言を拒否。さらに「米国との対立があっても、イスラエルの安全を損ない得る挑戦的な演説によってではなく、直接対話で解決する」とした。
―イスラエルのニュースサイト「ワッラ」は、「ネタニヤフ首相が自身の退任回避のために対イラン攻撃に出るとの懸念が米国である中、米政府がガンツ国防相に訪米を要請した」「国防相は今週、短期の訪米を行い、イラン問題、直近の対ガザ作戦、イスラエル軍の調達等について米国防総省と協議する」と報道。これに関してイスラエル政府はコメントしていないが、「ワッラ」とイスラエル軍の「Army Radio」は続いて、「国防相の訪米は、防空システム『アイアンドーム』の改良を協議するため」と報じた。
―米国防総省は、3日にオースティン国防長官がガンツ・イスラエル国防相を迎え、会談を行うと発表。「安全保障や地域の諸問題、域内でのイランの悪意ある振る舞いについて協議する」(カービー報道官)という。
―イスラエルを訪問中のグラム米上院議員(共和)はFOXニュースに、「イスラエルは防空システム『アイアンドーム』改良のため、米に10億ドルの支援を要請する意向だ」と明かした。また、上院議員は「イスラエルを破壊しようとする試みに対して、米は常に、更なる支援の提供で応えるだろう」と語った。
―イスラエルの次期連立内閣に加わる右派や中道の各党は、3日の組閣期限を前に、内閣の構成について詰めの協議を行った。出席したのは、ネタニヤフ政権の打倒を目指す右派の「ヤミナ」「新しい希望」「イスラエル我が家」と、組閣を委任されている中道「イェシュ・アティド(未来がある)」の各党首。新内閣の首相は、まずベネット「ヤミナ」党首、次いでラピド「イェシュ・アティド」党首が務める見込み。
―新連立内閣の成立を妨害すべく、ネタニヤフ首相率いる「リクード」党は、大統領やその司法顧問らに書簡を送り、組閣を委任された最大野党「イェシュ・アティド」党首ではなく、「ヤミナ」党首の首相就任を認めることの合法性を質した。大統領は「法的障害はない」との見解を示し、「リクード」の主張を退けた。
「イスラエル研究のためのエルサレム・センター」のイマード・ブーアッワード所長の話:組閣を妨げる多数の要因がある。参加7政党の政策面の相違は大きく、一致点は「ネタニヤフ打倒」だけだ。組閣しても、多くの問題に直面して短命に終わるのではないか。現地時間の2日朝にも「組閣成功」が発表される可能性があるが、それと同時に各党の連立への署名を大統領に提出するのは困難だろう。それが適っても、国会の採決にかかる1週間で、土壇場で組閣合意が覆ることはあり得る。90年代にもペレス氏の組閣案が採決で過半数を得られなかった例がある。このためリクード党は、右派議員への連立不参加の働きかけに集中している。
―イスラエル軍は、「ゴラン高原のイスラエルの領域に設置されたシリア軍の監視拠点に侵入、爆破した」と発表。「イスラエル主権への侵害は一切容認しない」としている。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イスラエル国防軍の将軍(予備役)の研究発表:今次のガザ戦争は「イスラエルが多方面から同時攻撃を受けた場合に脆弱である」ことを示した。今次の紛争では、ガザ方面だけでなく、エルサレムでの衝突や、国内各地でイスラエル・アラブによる騒擾が起きた。これは今後も繰り返される可能性があり、軍の西岸からの撤退等は進めるべきでない。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―エジプト政府は、「感染状況を示す指標が下がっている」ことに合わせて、約1か月続いているモール・飲食店等の閉鎖措置を1日より緩和すると発表した。営業時間は通常の夏営業時間(午後11時まで)となる。(アッシャルク・アルアウサト紙)
(注:政府は指標に改善がみられると判断したようだが、感染者数が少ないのは検査数が少ないためで、5月31日の死者数は49人と、年初以来平均50人/日の水準は変化していない。)
(参考)人口百万人当たり累積PCR検査数:UAE 505.6万回、ヨルダン 70.8万回、イラン 23.5万回、日本 11.5万回、エジプト 2.7万回。
<特記事項・気付きの点>
―特になし