2021年6月5日 (No.21066)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

5日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■エルサレムと西岸地区でパレスチナ人とイスラエル軍が衝突する中、イスラエル新内閣で首相に就任予定のベネット氏は「必要があればガザ地区に対する軍事行動も辞さない」と語る

■米、イエメン紛争について「停戦を拒むホウシー派は、最大の責任を負うことになる」と声明。ホウシー派幹部は、「封鎖の解除」を条件に対話に応じる姿勢を示す

■イラン核合意の再建に向けて「共通の土台」が形成される一方、ウィーンでの交渉参加者は「遠心分離機の扱い、制裁解除に関して対立がある」と指摘

■カタール首長、「2026年までに天然ガス生産を40%増やす」と述べる。「2022年サッカーW杯の準備はできている」と強調

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―米ニュースサイト「ポリティコ」は、イラン核合意の再建を目指すウィーンでの交渉の複数の参加者の話として、「米とイランは近く、双方の合意復帰に向けた『共通の土台』に到達するだろう」と報道。「20頁の合意案が作成され、遠心分離機の取扱いやイランの核施設への査察官の十分なアクセスについて、残る障害を解決するために複数の選択肢が提示されている」という。また「米と欧州は合意案に『イランのミサイル開発、地域での行動をめぐる次の協議』の項目を盛りこむよう主張している」「イランと米は依然、どの制裁を解除するかで対立している」由。

―トーマスグリーンフィールド米国連大使は、「米は、イランが核合意を完全に順守することを条件に、合意に復帰する用意がある」と述べた。また、ウィーンでのイランとの(間接)交渉について「実りある協議となっている」と語った。

―ハメネイ・イラン最高指導者は、「今月の大統領選挙への立候補を認められなかった立候補届け出者の一部は、彼らについての(ネット上の)誤情報が原因とされる」「管轄機関(立候補資格の審査を行う護憲評議会)は、誤情報による不正に遭った彼らについて、考慮し直す必要がある」と述べた。その後、護憲評議会は「立候補届け出者に関する誤情報は、評議会の決定には一切影響していない」「立候補資格の審査は非公開の場で、正確さが確認されたデータや文書に基づいて行われた」との声明を出した。

関連レポート要旨:最高指導者がたとえ穏やかな物言いであれ、護憲評議会の立候補資格審査を批判したことは、驚きをもって受け止められた。これを受けて一時は、「ラリジャニ前国会議長やジャハンギリ第1副大統領の立候補資格が認められる」との観測も出た。しかし、今回の最高指導者の発言は、立候補を拒まれた彼らへの「象徴的な対応」の域を出ないようだ。護憲評議会は、7人の候補者リストを変更せず、保守派が勝利する可能性が高い状況は動いていない。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―米国務省は、「ホウシー派は停戦を拒み、イエメン紛争の解決に資する行動をとっていない」「彼らはその最大の責任を負うことになる」とした。これに対してホウシー派のブヘイティ政治局委員は「対話の用意はある」としつつ、「それには外国部隊がイエメンから撤退し、空爆と封鎖を止める必要がある」と述べた。

―ブーサイーディ・オマーン外相は、ブリンケン米国務長官から電話を受け、イエメン危機とパレスチナ問題について協議。両者は「イエメンの平和的解決の余地をつくる停戦成立の重要性」や「人道・生活支援物資搬入が優先事項であること」を確認した。

―イエメン外相率いる政府代表団は、サウジの対イエメン大使と会合し、「リヤド合意の治安・軍事面の実施を完遂する方策」について協議。「(UAEが支援する南部移行評議会=STCとイエメン政府の間の)エスカレーションを止め、政府側が妨害されずにアデンに戻る環境を整える必要がある」ことを確認した。STC代表団もこの問題を協議するためにサウジに滞在している。

―タミーム・カタール首長は、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで、「2026年までに天然ガス生産を40%増やす」と述べた。同時に環境保護を重視する姿勢も示した。また、対露関係について「経済協力に限らず、その協力を支える(ガス輸出国フォーラム=GECFといった)国際的枠組みでの連携に至っている」と語った。2022年サッカーW杯については「インフラの準備はできている。新型コロナ感染拡大の準備への影響はわずかだった」と述べた。

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―イスラエル新内閣で最初に首相を務める予定の右派「ヤミナ」のベネット党首は「チャンネル12」に、「新政府は、必要があればガザ地区やレバノンに対する攻撃を控えはしない」と述べた。そうした戦争がアラブ系政党の連立離脱、政権崩壊につながると認めつつも「(軍事行動の選択に)政治的な縛りはない」と語った。占領するパレスチナの土地での入植地建設については「米政権から(停止を求める)圧力があるだろう」と予想。さらに「新内閣では(連立する他党から)パレスチナ人との政治的解決の問題が提起されるだろう。我々は共存せねばならない」としつつ、「解決はパレスチナ人の状況を改善することだ。彼らに独立国家を与えることではない」と語った。

―西岸地区の各地でパレスチナ人とイスラエル軍が衝突し、前者の多数が負傷。ナブルス南方バイターでの衝突が最も激しく、4日の金曜礼拝後にパレスチナ人数百人がデモを行って、「スベーハ山」での新たな入植活動に抗議した。一方、パレスチナ住民が退去を迫られているエルサレムのシルワーン地区では、「シルワーンを救え」をスローガンに「エルサレム・マラソン」が実施され、一部参加者がイスラエル兵に殴られ、拘束されるなどした。

―ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」は、イスラエルの空爆が停止して以降初めて、ガザ地区の地下トンネル内部の取材をアルジャジーラに認めた。イスラエルは「地下トンネル網の広い範囲を破壊した」としているが、これに対してカッサーム部隊の戦闘員は「被害は限定的だ」「破壊された場所は、空爆停止直後に修復した」と、トンネル内部の現場を案内しつつ説明した。(コンクリート壁の長い通路、通信危機などを備えた作戦指揮所、ロケット弾や発射装置のある武器庫などの独占映像とともに報道)

―イスラエルのガザ地区空爆で破壊された家屋等の解体や瓦礫除去を支援するため、エジプトからラファハ検問所経由で建設機械が地区内に入った。5日から作業に加わる。

―米国連大使は、アルジャジーラの番組「今日のインタビュー」で、「米は、ガザ地区復興のための更なる国際的支援の獲得に取り組んでいる」「安保理として、ガザの状況を緊密にフォローする。停戦が持続し、安堵している」と述べた。

―オマーン外務省によると、ブーサイーディ外相は米国務長官との電話会談で、パレスチナでの停戦恒常化、ガザ地区再建について協議。外相は「パレスチナ問題へのオマーンの立場は不変だ。2国家解決の原則に基づき、東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家の樹立を支援する」と述べた。

○ 国際テロ・過激主義情勢

―特になし

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―ワシントンポスト紙は、「イスラエルで発足が予定されている新連立内閣の下で、バイデン政権は、イスラエルと新たな関係を始めることができる」と論じた。(首相になることが予定されている極右ヤミナの)ベネット党首は、米国がイランとの核協議に復帰することに反対で、新政権もその立場を維持するだろうが、ネタニヤフ氏のようにそれを破壊することはないだろう。(アルクドゥス・アルアラビー紙)

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中東の新型コロナ動向

―イラク南部ナシリア(ジカール県)で、ムコール症(黒い真菌)による同国初の死者が記録された(51歳男性)。同県では他に4人が同じ症状で治療を受けており、全員が新型コロナに罹患歴のある男性。ムコール症はインドで新型コロナから回復後の患者に発症がみられ、多数が死亡している。(アルクドゥス・アルアラビー紙)

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<特記事項・気付きの点>

―特になし

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