2021年6月6日 (No.21067)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

6日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ イスラエル当局、アルジャジーラのブデイリー特派員を数時間拘束し、釈放後「同特派員がシェイク・ジャッラーハ地区に近づくことを15日間禁じる」と決定。国際諸団体は、イスラエルがジャーナリストを標的としていることを非難

■ 「ナクサ」の日にあたり、ハマースのガザ地区指導者は「抵抗運動の戦闘は、パレスチナ内部再編に真の機会を与え、米の中東地域への関心を引き戻した」と述べ、イスラエル領内の諸都市では抗議行動

■ イエメンをめぐり域内で集中的な外交活動。ホウシー派は「和平プロセスの促進と人道問題について協議する用意がある」と確認。イエメン外相はマスカットで会談

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―特になし

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―イエメンの和平プロセスを推進し、同国内の人道上の苦難を軽減しようとする外交努力が続いている。オマーン王宮府代表団がホウシー派代表団と共にサヌアに到着。アブドルサラーム同派広報担当は、「この訪問の目的は、人道状況の調整と和平プロセスの推進にある」と述べた。これと時を同じくして、ビン・ムバーラク・イエメン外相は、オマーンの首都マスカットを訪問、ブーサイーディ外相と会談する予定。イエメン外相は、「正統政府はオマーン政府高官らと意見交換し、イエメンの和平実現の推進に努める」と強調した。正統政府は、「ホウシー派が和平路線を拒否している」と非難している。こうした中、クウェート首長は、外相を通じて在リヤドのハーディ大統領に宛てて書簡を送った。

―イエメン・マアリブの地元当局者と医療関係者によると、ホウシー派が同市で弾道ミサイルと無人機爆弾による2重攻撃を実施し、子供1人を含む14人が死亡、5人が負傷した。同派はまずラウダ地区にある国防相の燃料補給所を狙って弾道ミサイルを撃ち込み、タンクの爆発・火災を引き起こし、複数の死傷者を出した。その後、負傷者らの救助活動が行われている現場を無人機爆弾で攻撃した。

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―イスラエル治安部隊は、東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区で抗議行動を取材していたアルジャジーラのジバーラ・ブデイリー特派員を拘束した。弁護人によると、イスラエル当局は拘束と警察署への連行の際に同特派員を殴打し暴行を加えた。同行のカメラマンも殴打された。また同当局は容疑について、当初は「イスラエル人女性徴収兵を殴打した」としていたが、その後「IDを示すようにという警察の命令に従わなかった」に変えた。この容疑が無効であることが確認されたため、同特派員は数時間後に釈放された。

―ブデイリー特派員は釈放後、「エルサレムのイスラエル警察は、自分がシェイク・ジャッラーハ地区に近づくことを15日間禁じると決定した」と明らかにした。

エルサレム支局長の話:放映された映像からもイスラエル当局が主張する容疑が「嘘」「誤り」であることは明らかだった。シェイク・ジャッラーハ地区の問題は非常に繊細であるため、これを取材する多くのパレスチナ人ジャーナリストが同様の扱いを受けているが、これがジャーナリストらを脅すことを目的としていることは明らかだ。アルジャジーラの取材クルーが標的になったのは、他のジャーナリストらに(警告の)メッセージ送るためと思われる。

―アルジャジーラ・ネットワークは、上記特派員・カメラマンへのあからさまな暴行を「非難されるべき振る舞いだ」とし、「これはジャーナリストに対するイスラエルの一連の組織的攻撃の新たなものであり、あらゆる国際法や協定に違反している」と指摘した。国際新聞編集者協会は、「イスラエルがここ数週間ジャーナリストを標的としているのは、独立したメディア報道を抑圧するための試みだ」と非難し、「イスラエルは暴力行為を行った兵士らを罰するべきだ」と強調した。「倫理的報道ネットワーク」の代表は、「イスラエルは、自身がジャーナリストを不当に扱っている犯罪者であるというビデオに映った事実を否定することはできない」と指摘。欧州地中海人権監視団、パレスチナ情報省、パレスチナ・ジャーナリスト組合も、今回の拘束と暴行を非難した。

―1967年の戦争で西岸・ガザ両地区などがイスラエルによって占領された「ナクサ(後退)」の日から54年にあたる5日、パレスチナ領内各地と1948年にイスラエルに占領された地域(アッコなど)で抗議行動が行われた。シヌワール・ハマース・ガザ地区政治局長は、「パレスチナ抵抗運動の(今回のイスラエルとの)戦闘は、パレスチナ内部再編に真の機会を与えた」「パレスチナ抵抗運動は、その抑止力を証明し、パレスチナと中東の問題への米の関心を引き戻した」「アラブ諸国がイスラエルとの国交正常化に走っていることが、ガザ地区に対する攻撃を助長した」と述べた。

―シュタイエ・パレスチナ首相は、6日にカタールを公式訪問し、タミーム首長らと会談する予定。同首相はこのほか、クウェートとオマーンを歴訪する。アラブ諸国との間の立場を調整し、ガザ地区復興計画への必要な支援を集めるための動き。

―ブリンケン米国務長官は、ツイッターで「米は、パレスチナ人民との関係の再構築に全力で取り組む」と述べた。元米国務省幹部のウィリアム・ローレンス氏は、「これは米の政策とイスラエルの国内政治の変化を直接反映したものだ。トランプ主義や(イスラエル・アラブ諸国間の)アブラハム合意を拒否するものと言えるかもしれない」と指摘した。バイデン政権がパレスチナ問題に対して前トランプ政権の政策とは異なる新たなビジョンを構築することへの期待が持たれている。

米・アラブ問題を専門とするパレスチナ人ジャーナリストのダーウード・クッターブ氏(フィラデルフィア)の話:米国内やイスラエルに変化が見られる中、パレスチナ人民にとって前向きな動きが期待できる。(ブリンケン国務長官が言う「パレスチナ人民」というのは全パレスチナ人を指すものか、という質問に対し)残念だがそうではない。米はまだ「パレスチナ人民を代表する者」(=パレスチナ暫定自治政府(PA))にのみ対応するという中東和平カルテットが示した「イスラエル側の条件」に縛られている。米は、ハマースを含むすべてのパレスチナ諸派が参加する挙国一致政府を樹立するよう求めるべきだ。それによって初めて、パレスチナ内部統一の合意とパレスチナ人民にとっての「真の正統性(正統な代表)」の確立が保証されるからだ。

○ 国際テロ・過激主義情勢

―特になし

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―ヨルダンのアンマン県南部にあるナーウールで、抗議行動に対処していた治安部隊の要員4人が負傷した。同地では、抗議行動とともにタイヤを燃やしたり、空中に発砲する行為が発生し、憲兵隊と治安部隊が対応している。「暴動扇動者」と治安部隊の間で衝突となっている模様。これより先に、内務省は「違法な集会への呼びかけを注視している。このような活動は認めない」とする声明を出していた。これは、議員辞職したウサーマ・アジャールマ氏が(ナーウールのアジャールマ)諸部族に「自分に連帯する集会」を呼びかけたことへの当局からの初の反応。同氏は、議会で「国内全土で停電が発生した真の原因」について質問し、議会議長との間で言い争いとなり、議員資格の1年間停止処分を受け、これに抗議して議員辞職した。

―ダガロ・スーダン暫定統治評議会副議長は、「国内の変革はまだ完了していない。これまでに行われたのは、バシール前大統領の拘束・投獄だけだ」と述べ、「国内の政治・治安・経済状況は混乱している」と評し、「和平合意と治安上の取り決めの実施に尽力する」と強調した。

エリコの目

―低廉な費用で「非対称戦争」を仕掛ける戦術をとる中東域内や域外の武装組織は、近年軍事用ドローンの調達に成功しており、もはやこの武器は「国家による独占」が不可能になった。この状況を受けて、米軍はドローン攻撃に対する防衛戦術開発に力を入れている。(アルアラブ紙)

https://alarab.co.uk/node/249618

中東の新型コロナ動向

―チュニジアが、人口比の累積死者数ではレバノンと並んで中東北アフリカ最大の感染国であることは1日の当レポートでお伝えしたが、そのチュニジアの感染が止まらない。4日、保健省は、新規感染者数が1,816人、新規死者は63人であったと発表した。同国では3月13日よりワクチン接種が実施されており、これまでの接種者数は約152万人(人口比12.7%)に上っている。うち2回接種者数は約32万人。(アルクドゥス・アルアラビー紙他)

Tunisia COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Tunisia Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, tren...
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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