アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
7日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ アルジャジーラの検証番組、ガザ地区で捕囚されているイスラエル兵の録音音声をカッサーム部隊から独占入手して公開。その中で兵士は、抵抗勢力の手にある捕虜の帰還に向けて取り組むよう政府に懇願
■ カッサーム部隊の副参謀総長、メディアに初めて姿を現す形でアルジャジーラのインタビューに応じ、「抵抗勢力はイスラエルと『名誉ある』捕虜交換取引をするための切り札を持っている」と語る
■ネタニヤフ首相、発足が目指されている新内閣を批判し、イスラエルの国益を守る能力を疑問視。ベネット氏は挑発を止めるよう同首相に呼びかけ、新内閣への信任投票のため会合を開くよう議会に要請
■イスラエルの治安部隊、エルサレムのサラーハッディーン通りでパレスチナ人らの集まりを弾圧。ジャーナリスト4人を含む10人負傷
■米アフガン特使のカブール訪問中、同国の複数州で一連の攻撃が発生して死傷者が出る。アフガン政府は「攻撃激化はドーハ合意違反」とタリバンを非難
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―アルジャジーラは、検証番組「The Hidden is More Immense」の最新回「抵抗勢力の手中に」(7日0405JST放送)の中で、ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」から独占入手したイスラエル兵の録音音声を流した。同部隊の捕虜となって現在ガザにいる兵士のものだという。この兵士(氏名は明らかにされず)は録音の中で、捕虜の帰還に向けて取り組むようイスラエル政府に懇願している。カッサーム部隊が捕虜のイスラエル兵のこの種の録音音声を公表するのは今回が初めて。
―カッサーム部隊のマルワーン・イーサー副参謀総長は上記の番組の中で、「抵抗勢力はイスラエルと『名誉ある』捕虜交換取引を行うための切り札を持っている」「捕虜(パレスチナ人収監者)の問題は現在、カッサーム部隊指導部にとって最も重要な案件だ」と述べた。イーサー氏がメディアに姿を見せるのは今回が初めて。同氏はまた、「最新のイスラエルとの戦い『エルサレムの剣』は画期的なものとなった。これには続きがあるだろう」とも述べた。
―イスラエルのオルメルト元首相は、上記の番組の中で、「イスラエルは、ギラド・シャリート兵士の捕虜交換で多大な対価を払った。いかなる政府にも、今それを繰り返すことは出来ない。あれはイスラエルにとって敗北のようなものだった」との見方を示した。
―上記の番組で、捕虜交換に関するハマースとイスラエルの間の様々な仲介者(エジプト・独・アイルランド等)を通じた5年にわたる間接協議の記録のアーカイブが初めて公開された。
―イスラエル内閣府は、上記の番組への最初の反応として、「イスラエルは粘り強く責任感を持って、兵士と民間人を取り戻すべく懸命に取り組む」と述べつつ、「ハマースが公表した録音音声は安っぽい情報操作だ。イスラエルは兵士2人の状況をよく知っている」と主張した。
―ラーマッラー支局長:イスラエル内閣府の捕虜交換取引の交渉担当者とされるヤロン・ブルーム氏は、(上記の)イスラエル兵2人(2014年のガザ侵攻以降消息不明のオロン・シャウル、ハダル・ゴールディン両兵士)は死んだと確信しており、遺体またはその一部がハマースの手にあるとみなしている。また、録音音声はガザ地区に侵入して拘束されたイスラエルの2人の民間人、ネゲブのアラブ系ベドウィンのヒシャーム・サイードかエチオピア系のアヴェラ・メンゲストゥのどちらかのものかもしれないとしている。但し、「ハマースは民間人2人を含む4人を『捕虜の兵士』とみなしている」とみている。一方、イスラエルメディアでは、「ハマースはアルジャジーラを利用して心理戦を仕掛けている」「録音音声は、ガザ地区に侵入して拘束された(上記の)エチオピア系イスラエル人のものだ」等の見方が出ている。
―イスラエルのネタニヤフ首相は、発足が目指されている右派政党「ヤミナ」のベネット党首と中道政党「イェシュアティド」のラピド党首率いる新政府を攻撃し、「次期政府にはイスラエルの国益を保証することは出来ず、イランの核兵器所持を阻止できないだろう」「イランの心臓部での作戦も、ガザ地区に対する軍事作戦も実行する勇気がないだろう」と主張した。
―新政権樹立の際に首相に就任する予定のベネット氏はネタニヤフ首相に対し、挑発を止めて「自分の背後に焦土を残さない」よう呼びかけ、「ネタニヤフ氏の主張は嘘であり、事実無根だ。アラブ統一リストを率いるマンスール・アッバース氏とは協議を行っておらず、何の譲歩も提示していない」と述べた。また、「『変革ブロック』の政府樹立を失敗させるために右派の2政党『ヤミナ』と『新たな希望』のメンバーを切り崩すそうとする組織的なキャンペーンが存在する」と指摘。また、ネタニヤフ首相に忠実な(「リクード」所属の)レビン国会議長に対し、9日に新内閣の信任投票を行うと発表するよう求めた。
―パレスチナ赤新月社は、「エルサレムのサラーハッディーン通りにある警察署付近に集まっていたパレスチナ人らをイスラエルの部隊が催涙ガス弾やゴム弾で弾圧し、ジャーナリスト4人を含む10人が負傷した」と発表した。アルジャジーラのナジュワーン・シムリー特派員も、イスラエルの部隊が発射した音響爆弾の破片で膝を負傷した。同特派員はその場で赤新月社のスタッフから治療を受けた後、病院に運ばれた。重症ではない由。
―イスラエル当局は、シェイク・ジャッラーハ地区の住民で女性活動家のムナー・クルド氏と兄弟(双子)のムハンマド・クルド氏を数時間拘束した後に釈放した。2人は同地区でのパレスチナ人住民の強制退去問題を世に知らしめて住民の権利を保護することを目指す、最も著名な活動家とみなされている。ムナー氏は釈放後、イスラエル当局による拘束を「シェイク・ジャッラーハ地区の住民を威嚇して強制退去に沈黙させるための試み」と評し、「住民はイスラエルによる威嚇に抵抗し続ける」と表明した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ハリルザード米アフガン特使のカブール訪問と時を同じくして、アフガニスタン各地で最近激しい攻撃がみられる。米特使の訪問は、紛争当事者らの和平協議を促すことが目的。タリバン広報担当は、北部バルフ州での警察本部への攻撃の犯行声明を出した。政府高官は攻撃を非難し、主要都市での治安・軍事施設への攻撃を「ドーハ合意への違反だ」と強調した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―東エルサレム郊外シェイク・ジャッラーハ地区で取材中のブデイリ特派員がイスラエル軍に連行されたときの映像を、アルジャジーラ同僚のワシントン特派員がリツイートした。
今次のエルサレムとガザを巡る紛争では、イスラエルの「広報戦略上の敗北」が国内でも問題視されている。しかし、アルジャジーラのようなマスメディアを力で押さえつけることが仮にできたとしても、この映像をばら撒いた地元の「スマホ・メディア」の跳躍を防ぐことはできないだろ
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビア情報相代理は6日、同国の大巡礼受け入れに関する今年の枠組みに関する発表が遅れているのは、新型コロナウイルスの変異による影響が不透明であること、及び世界的にワクチンが不足していることが原因である、と会見発表した。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―パレスチナ・イスラエル情勢を重点的に報道。