アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
9日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イスラエルで極右集団が呼びかけたエルサレムでの行進をめぐり国内の意見が分かれる。首相は10日の実施に固執し、治安機関と軍は反対。治安担当閣僚会議は、パレスチナ諸派から警告を受けた翌日、同行進を15日に延期
■ イラン、「大統領選前のウィーン協議完了に尽力する」と確認。米は「新たな核合意に至ったとしても、数百の対イラン制裁を存続させる可能性がある」と語調を強める
■ タリバン、「アフガニスタンの北部・西部で前進」と発表。米は「力による権力奪取」を拒否し、EUは「タリバンが恒久的停戦を順守しなければ制裁解除を拒否する」と表明
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラン大統領選まであと10日となる中、核問題をめぐる論議がまだ続いている。EUは、「イランはIAEAの保障措置に従っている施設で濃縮度60%のウランを生産している。これは憂慮すべき展開だ」と非難。ブリンケン米国務長官は、「ウィーンで核合意復帰の合意に至ったとしても、イランがその振る舞いを変えるまで、同国に対する数百の制裁が有効であり続ける見込みだ」と述べた。一方、ラビエイ・イラン政府報道官は「大統領選の前にウィーン協議で合意に至ることに異議はない。現政府の任期中に協議を終えることに重点を置き、IAEAとの(査察継続に関する)暫定合意の期限を迎える前に協議を終えるべく尽力する」と述べた。
―米国連代表部は、「イランが核合意に規定された制限を超えてウランの濃縮度を60%に引き上げた」とし、イランに「米とイランが互いに同合意に復帰するために、制限を超えた更なる措置を控え、すべての義務事項の順守に戻るよう」促した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―伊外務省は、「UAEが伊空軍機の領空通過を拒否したことを受け、駐伊UAE大使を呼び出し、UAEの予想外で理解困難な振る舞いに対する驚きと憤りを表明した」と発表した。ANSA通信によると、同機は、伊人記者約40人を乗せてゲリーニ国防相が訪問するアフガニスタンに向かっていた。伊紙ラ・レプッブリカは、「今回のUAEの措置は、伊議会が今年1月に、イエメン民間人に対する侵害行為の継続を理由に、サウジとUAEに対する武器禁輸措置の延長(ママ)を承認したことへの反発だ」と報じた。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル政府は治安関連閣僚による縮小閣議を開き、極右諸集団が10日に予定していたエルサレムでの「旗の行進」を15日に延期すると決定した。ルートは追って決定するとしている。閣議では、同行進の予定通りの実施に固執するネタニヤフ首相・一部閣僚らと、「予定されるルートでは同市内などで衝突が起きる」として反対する治安機関や軍の幹部・外相・国防相との間で意見が対立し、紛糾したが、約3時間半後に前者が譲歩した。パレスチナ諸派は前日、「エルサレムを先月11日以前の状況に戻すことは許さない」と警告していた。
―ブリンケン米国務長官は、「米は、ガザ地区復興のために提供される支援が、イスラエル破壊に取り組んでいるハマースや他のパレスチナ諸派の手に入ることを防ぐべく取り組む」「正しい仕組みを構築することで、米国民の税金がこれらの組織に渡ることを防ぐことができると考えている」と述べた。
―英の調査会社「ユーガブ」の世論調査によると、先のガザ地区攻撃の後、欧州諸国におけるイスラエルへの好感度が下落した。調査の対象となった諸国全体で、今年2月から少なくとも14ポイントの下落。英では27ポイント下落し、2016年以降最低の-41となった。次に下落幅が大きかったのは仏で、23ポイント下落して2019年以降最低の-36となった。デンマークでは22ポイント下落で-39、スウェーデンでは17ポイント下落で-33、独では14ポイント下落で-24となった。調査の対象となった諸国の中では、独での好感度が最も高かった。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ハリルザド米アフガニスタン特使は、カブール訪問を終えた。この訪問中、同特使はガニ大統領のほか、アブドラ国家和解高等評議会議長や一部部族・政党の指導者らと会談した。同特使は、地元のTV局のインタビューで「各当事者は、(米とタリバンの間の)ドーハ合意こそがアフガン紛争解決の基礎となるものだと完全に確信している」「力による権力奪取は容認できない」と述べた。一方、ボレルEU上級代表は、「タリバンが恒久的停戦を順守し、政治プロセスに真剣に参加しない限り、同組織に対する制裁の解除はない」と強調。こうした中、タリバンは、アフガニスタン北部と西部で新たな拠点の制圧を進めている。地元消息筋によると、過去2日間に3州の4郡がタリバンの手に落ちた。こうした展開が、紛争解決に向けた外交路線に影を落としている。
ワシントンのニューラインズ戦略政策研究所・地政学的分析ディレクターのカムラーン・ブハーリー氏(バージニア州から)の話:タリバンは米のアフガン撤退を利用しようとしており、暴力行為の激化という事態は当然予測できたことだ。タリバンはこれにより他の紛争当事者であるアフガン政府とこれに繋がる諸勢力に圧力をかけ、強い立場で米やアフガン政府に対応できるようになりたいのだ。米の反応も予測されたものだ。米は、暴力の激化を容認することはできないが、軍を撤退させる中で多くを行うことはできない。ただし米は国際支援を必要としているアフガニスタンの資金をコントロールしており、これを用いて圧力を加えるという手段に出るものと思われる。米のアフガン撤退の決定が間違いだったとは言えない。米はもはや駐留を続けることはできなくなっていた。同国に20年間駐留し、多くの兵士を失い、多くの資金を費やしてきた。撤退すべき時期に来たのだ。米は別の方法でアフガニスタンの諸事への対処を続けるだろう。ISやアルカイダといった諸集団がいる限り、ある程度の暴力は当然のことだとして受け入れているのではないか。
○ マグレブ情勢
―リビア政府筋によると、マングーシュ外相が6日、イスタンブールでフィダン・トルコ国家情報機構長官と会談し、23日に予定されるリビア危機に関する第2回ベルリン会議における両国の立場の調整を始めとする様々な問題について話し合った。また同外相は8日、同市でチャブシオール・トルコ外相と会談し、リビアの移行段階の行程表実施に向けた両国の努力の統合について協議した。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―カナダ・アラブ反差別委員会は、「オンタリオ州ロンドンで起きた(下記の)イスラム教徒に対する攻撃事件の後、アラブ人とイスラム教徒は、ショック状態にあり、恐怖を感じている」とし、「これは単独の行為ではなく、最近カナダを席巻している反イスラム教徒・アラブ人・黒人・ユダヤ人・先住民という流行病を反映したものだ」と指摘した。
エリコの目
―7日、トロント郊外で在カナダ・パキスタン人の家族が路上で20歳の若者の運転する小型貨物車に跳ね飛ばされ、夫妻と母、娘の4人が死亡、9歳の男子が重傷を負った。当局は、被害者がイスラム教徒であることを理由にこの若者が計画的に殺人を犯したと断定、トルドー首相は事件を「テロ攻撃」と述べて強く非難した。欧米であまり報道されないのは遺憾だ。2017年1月にケベック市でモスク集団礼拝者が銃撃された事件がよみがえる。同事件は、クライストチャーチのモスク襲撃(2019年)が起きるまで、欧米のイスラム教施設に対する最悪の襲撃だった。「イスラム恐怖症」によるテロを厳罰に処する法制化が求められる。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―イランの感染状況が改善しない。保健省は8日、新規感染者数は8,846人、死者数は179人だったと発表した(前日はそれぞれ4,907人、120人)。一部の都市では、インド型、南アフリカ型の変異種の感染が拡大しており、保健省は、国民が感染防止措置を守らなければ、かつての困難な日々が必ず復活する、と警告している。
<特記事項・気付きの点>
―特になし