アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
16日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ エルサレムで入植者が「旗の行進」を実施。イスラエル軍、西岸地区でパレスチナ人のデモを弾圧。ベングリオン空港の発着便は飛行ルートを変更
■ ドーハで緊急会合のアラブ諸国、ルネッサンス・ダムについて「拘束力ある合意が重要だ」として安保理の会合を呼びかけ。エチオピアは反発
■ 米・スイスの大統領が会談。スイス外相、「米は、イランに人道物資を送るためのチャンネル活用を早める意向だ」と述べる
■ タリバン、「NATOがカブール空港の警備のために部隊を残留させることは、アフガン占領の継続だ」と声明
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―バイデン米大統領は、ギー・パルムラン・スイス大統領とジュネーブで会談した。カシス・スイス外相によれば、米大統領は、「スイス経由の(送金メカニズムを使った)イランへの人道物資引き渡しの迅速な実施を支援する意向を示した」という。このメカニズムは、米の対イラン制裁が人道支援や医療物資等の提供に及ぶのを避けるために設けられたもの。
―イラン大統領選挙で、SNSが主要な役割を演じている。当局による監視のない「クラブハウス」が政治的対話の場となる一方、同アプリ利用者は「エリート層」に限られ、国民全般への波及には時間を要する。このため各陣営は競って「インスタグラム」で政策を訴えており、その利用は既存・公式メディアを凌ぐ。SNSが選挙で重要な位置を占める傾向は2009年から続き、国民のネット利用者は7千万人を超えている。
―(イラクの軍や治安機関で構成する)バグダッド作戦司令部の広報によると、作戦司令部は、バグダッド南方で爆発物を搭載した無人機を2機、撃ち落とした。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―タミーム・カタール首長は、シーシー・エジプト大統領からの親書を受け取った。両国関係の強化と発展、地域・国際の最新情勢に関する内容で、シュクリー・エジプト外相が手渡した。エジプト外務省によれば、シーシー大統領はタミーム首長に「できるだけ早い機会のエジプト訪問」を呼びかけた。
―ドーハでアラブ外相会議が開かれ、パレスチナ情勢と直近のイスラエルによる対ガザ戦争について協議。「東エルサレムでのイスラエルによる人権侵害を止め、2国家解決を成立させるための真剣な交渉開始に向けて行動を具体化させる必要がある」ことを確認した。
○ エジプト情勢
―エジプトとスーダンの求めで、ルネッサンス・ダム問題を協議する緊急アラブ外相会議もドーハで開かれた。会議は「ナイル川の全流域国の権利を保障する、公正で拘束力ある合意を早急に成立させるため、実質的な交渉開始に必要な手続きを話し合う会合を開く」よう国連安保理に呼びかけた。アブルゲイト・アラブ連盟事務総長は「エジプトとスーダンへの明確かつ強力な支持がみられた」と述べた。
―ムハンマド・カタール外相は、ルネッサンス・ダムをめぐる交渉当時国(エチオピア、スーダン、エジプト)に対し、「早急な合意成立のため、善意をもって交渉する」よう求めた。また「AU主導の直近の交渉が躓いたことをアラブ諸国は懸念している」と述べた。
―エチオピア外務省は、ルネッサンス・ダム問題で安保理の会合を呼びかけたアラブ外相会議に憤りを表明。「外相会議の声明を全面的に拒否する。相違を国際化・政治問題化するものであり、ナイル川の水資源管理における地域諸国の恒常的な協力にはつながらない」と主張。また、アラブ外相会議が示した「ダム貯水にかかる条件」について、「中流・下流域の国々の水の安全保障を優先して、水源諸国の利益を何ら顧みていない」と非難した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―過激なユダヤ入植者団体が15日、エルサレムで「旗の行進」を行った。イスラエル当局は厳戒態勢を敷き、行進に反発する多数のパレスチナ人を暴力的に抑え込み、拘束。パレスチナ赤新月社によると、パレスチナ人33人がエルサレム旧市街でのイスラエル部隊との衝突で負傷した。エルサレムのパレスチナ人の憤りは、各地に波及。ガザ地区、ラーマッラー、ベツレヘム、ヘブロンなどで集会やデモが行われたが、イスラエル当局が弾圧した。
関連レポート要旨:イスラエルベネット新内閣は、東エルサレムの占領と支配を祝う「旗の行進」がパレスチナ人との緊張を高めるとの指摘にも拘わらず、躊躇なく「行進」実施を許可した。このことは、新内閣が前内閣と同様に反パレスチナ人的政策をとることを示している。イスラエルは、警官数千人を行進の警備に動員。ダマスカス門から旧市街の中は通らないルートでヤッフォ門に誘導した。行進に近づくパレスチナ人は徹底的に排除した。
―イスラエル当局は、エルサレムの「旗の行進」実施に伴う(ガザ地区からのロケット弾発射などを警戒しての)措置で、ベングリオン空港発着便の飛行ルートを数時間変更した。
―イスラエル軍は、ガザ市南方とハーン・ユー二スの抵抗運動の拠点を空爆した。「ガザ地区からイスラエルに向けて発火物をつけた風船が飛ばされたため」としている。ハマースによると、軍事訓練所が攻撃された。イスラエルによるガザ地区空爆は先月21日の停戦入り以来。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンは、「カブール国際空港の警備のために部隊を残留させるとのNATOの決定は、アフガン占領の継続であり、米と結んだドーハ合意への明白な違反だ」と声明。また、「NATOはアフガンを地域勢力の争いの場にしようとしており、容認できない」「トルコのようなイスラム国家がカブール空港の警備を担うべきではない。それはトルコの将来やアフガン国民に悪影響を及ぼすだろう」「タリバンはアフガンを他国攻撃のために使わせない。一方で、どの国の部隊の駐留も許さない」とした。
―上記に先立ちストルテンベルグNATO事務総長は、「米とNATO部隊のアフガン撤退後のカブール空港の管理について、NATOはまだ結論を出していない」と述べた。また、トルコによるカブール空港警備について問われた際、「トルコはこの問題で主要な役割を担う」としたが、詳細は語らず。NATOは「移行期にカブール空港にかかる資金を提供すると約束した」とされる。
○ マグレブ情勢
―アルジェリア議会選挙(定数407)の暫定結果が発表された。「民族解放戦線(FLN)」が105議席を得て第一党を維持したが、改選前の204議席から半減。イスラム主義の「平和な社会運動」(MSP)は64議席、無所属候補は78議席を占めた。この他、「民主国民連合(RND)」が57議席、「未来戦線」は48議席、「国民建設運動」は40議席など。ショルフィ選管委員長は「(有権者が各勢力の名簿から特定候補を選んで投票する)新方式を採用したことで議員の構成が変わった。若者や女性の議員たちが増えるだろう」と述べた。広範な投票ボイコットで、投票率は30.2%。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―18日に投票が行われるイラン大統領選挙では、日常生活に苦しんでいる市民を中心に、政府への反旗の印として投票忌避行動が広がるのではないか、と見られている。世論調査結果は記録的な「選挙離れ」を示している。低所得で宗教心の篤い層は反欧米強硬派のライシ候補に投票すると見られるが、教育を受けた若者達は棄権に回るだろう。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―イスラエル政府は、室内でのマスクの着用を義務付けていた命令を15日付で廃止した。屋外では4月からマスク着用が不要となっていたため、ほとんどの生活制限が撤廃されたことになる。イスラエルでは既に人口の55%がワクチン接種を済ませており、現在は12-15歳グループへの接種が進められている。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし